第8話 帝国最強の竜騎士

「ソフィア殿に、来て頂けるとは、心強い」

 バーナード団長は、まっすぐとワイバーンを見つめていた。

 これは、どうしたものかと、彼に、状況を確認していく。


 もぐもぐ?


「あれは、帝国の竜騎士団だろう」


 もぐもぐ、もぐ?


「竜騎士は、一騎当千じゃ。わしでも、あの数は、相手には勝てん……、ソフィア殿、力を貸して頂けないか?」


 もぐもぐ。


「そうか、残念じゃ」

 食事しながらだと声が出ない、多分行儀が悪いからだろう。それでも、バーナード団長は察しが良く、会話が成立した。


 流石、元最強の騎士だ。


 そして、俺も、視線を前に向ける。


 そこには、少し距離を置いて三十体程のワイバーンが、規律正しく整列していた。

 しばらくすると、その群れの中から一人の男が出て来た。

 意外な事に、その男は、長身で品の良さそうな顔立ちだった。その上、光を反射した歯がキラーンと輝いて見えた。


「武器を捨て、我々から奪ったクリスタルを返せ、そして降伏しろ!」

 長身の男は、良く通る声で此方に要求してきた。


「私には、女子供を殺す趣味はない。特に、貴女のような女性は」

 そして、奴は、片目をつぶり、俺にウインクしてきた。なにコイツ、きもい……。


「花は愛でるものだ。そうだろ?」

 奴の熱い視線を感じた俺は、顔を耳まで紅潮させ、慌てて、パンを握った手でスカートの裾を引っ張り白い美脚を隠す努力をした。


 やだ、きもい、見ないでっ……。


「可愛いな君は……。さて、私は手加減しない、最初から、全力でいく、よく考えろ!」

 男がクリスタルを掲げると、空がバンとなって、ピカッと緑のドラゴンか出てきた。


 どうやら、彼は、先の戦いでは赤ドラさんが、召喚されてないと思っているようだ。


「君達に、選択肢は無い、さぁ、クリスタルと、そこの可憐なエルフを私に返せ!」

 え? 返せって言われても、クリスタルは、赤ドラさんを殺っちゃったから無いし、そもそも俺は、俺のものだ。


「ちょっと、これを、持ってて下さい」

 食べ掛けのパンと、空になった木椀をバーナード団長に手渡す。


「あなた達の相手は、私のユニコーンがするわ!」

「あははは、ユニコーン? あの角を生やした馬の事か?」

「そうよ! さぁ、ユニコーン達、こっちに来なさい!」

 俺の呼びかけにユニ子達が応じる気配がない。不審に思い、後ろに振り返る。


 ユニ子達は、俺と目が合うと、全馬一斉に横に向き、地面にペッと唾を吐いた。


 お、ま、え、らぁ〜〜!


「あははは、君はどうも、あの馬達に嫌われているようだな」

 男は、愉快そうに腹を抱えている。


 くそ〜、こうなれば、仕方ない。


「セシリア、ちょっと耳を貸して!」

「え〜、ホントに、大丈夫なんですか?」

「ええ、きっと上手くいくはずよ」

 俺の耳打ちに、セシリアは疑心暗鬼だ。


「早く、お願い!」

 俺は、彼女を急かした。


「ユニコーンさん、こっちに来て、私のために戦って」

 セシリアの呼び掛けに、ユニ子達、三百頭が一糸乱れず行動した。


 俺達の眼前に、五十頭づつ六列の四角い陣形がユニコーンによって完成した。


 完成後、ユニ子達は、振り返り、まずセシリアにとろ〜んと甘えた表情を見せ、次に、俺と目を合わせると、又、地に唾を吐いた。


 ぐぬぬぬ、俺は、一応、お前らのご主人だぞ!


 統率のとれたユニコーン達の動きには、流石の竜騎士達も驚いたようで、感嘆の声が聞こえてきた。


「君には、自らの意思で、私の元に来て欲しかった……」

 男は残念そうに囁いた。


「でも過程は違っても、結果は同じだ! 帝国の誇り高き竜騎士達よ! 騎乗せよ!」

 男の呼び掛けに、ザッザッという音と共に、帝国の騎士達が、ワイバーンに跨っていく。


 そして、草食獣ユニコーンと、肉食獣ワイバーンの睨み合いに、空気はピーンと張り詰めていった。


「最後の警告だ! 君達に勝ち目はない! 降伏しろ!」

「い〜や〜よ!」

 あっかんべー、俺は、きっぱりと返事した。


「残念だ……、抜刀せよ! 突撃!」

「ユニコーンさん、がんばって!」

 男の命令に、竜騎士達は「おう!」と叫び、セシリアの激励に、ユニコーン達は「ヒヒーン」と応じた。


 竜騎士とユニコーンの戦いの幕開けだ!


 竜騎士の跨るワイバーンは、空に飛翔する為、その大きな翼を広げた。

 その姿は、大空の覇者に相応しい雄大な姿だ。


 大空の覇者ワイバーンは、一匹、二匹と後ろに飛んでいく、いや、吹っ飛んでいく。


 なんと!  ワイバーンが飛ぶ前に、ユニコーンの体当たりが先に当たったのだ。


 ユニコーンの一列目の体当たりで、ワイバーンは瀕死の状態になり、三列目の攻撃を待たずに、全滅した。


 つまり、帝国の竜騎士は敗れたのだ。


「そんな、そんな、帝国の竜騎士が、あんなのに敗れる訳がない」

 運良く生き残った男の視線は定まらず、空中をさまよっている。


 ふふふ、思った通りだ!


 帝国は、魔獣の育て方が下手くそだ。

 対人するならカンストさせるのが常識だろ?

 さらに、ワイバーンも、ユニコーンも、どちらも同レア、同コストのSRコスト6の魔獣だ!

 カンストしてる俺のユニコーンが負ける理由がない。


 さて、プレボにいたユニコーンがなぜカンストしてるのかって?

 なぜなら、新魔獣、登場時の有料ガチャの外れは、その魔獣を育てる時に必要なエサである事が多いのだ。


 それは、相性の良いスキルが付与できる魔獣だったり、そのスキルレベル上げの餌だとかが多い。


 そして、その中でも、ユニコーンは外れだ。


 それは、ただ新魔獣に食わせてカンストさせる為だけの餌、だから、ステの伸びが良いように、最初からカンストしてるのだ。


「あなた達に勝ち目は無いわ!」

 俺は、男を見下し、死刑宣告をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る