苦痛を大事に

書き続ける筆は乾く、

インクを零すような

何か思いを黒文字に

僕は頭を過る全てを、

この美しくない手で、

物事を文字にしてく。


乾いている。僕の心の奥にある水源が。

錆びている。体である感受性の道具が。

痛んでいる。心が世を知る度に感じる。


もはや、僕には書きたい物はない。

知りたい物もなかった。

この世の全てをまるで知っている

この口ぶりなんだが。


理性なんざ、

人に知られるためだけに生まれる

文章はちゃんとした形でないとの

理由はそれだ。


感性なんざ、

柔らかい物と美しい物を心で読み取る、

文章は好かれないと生きられないって

世間は厳しいんだ。


頭が熱く、心は欲してく。

耳が痒く、欲は恐ろしく。


昔ながら、

2000年前からも伝わった。

世には何も変わりはしないんだって。

昔ながら、

2000年前からも伝わった。

やるべき事は相変わらず人を愛するって。


単に愛するんじゃなく、

優しい人を愛するのって簡単じゃんか。

単に愛するんだ。

悪人に愛してみるってどうなんだ?


頭が熱く、心は欲してく。

耳が痒く、欲は恐ろしく。


世間は自分の好きな物だけいただく。

苦痛という物を忘れている。


だが、

そのままにしちゃ、

もったいないんじゃないのか。

苦痛という物をチャンスにする

考えができないのは、

人生の無駄遣いじゃないのか。


ただ

微笑んでいる人だけを助けるのみの

人生には、楽しいのか。


僕にはとても思えない。

痛いよ、苦痛にいる人を見捨てることが。

特に、自分がその人である時に。


例えば体の不自由な妻が

不倫をした歴史があって、

夫に捨てられるとか。

例えばある時一つの文字を

編集部に辞めさせられ、

結局ニートになりやがったとか。


許す気はないか、

他人のことを。

自分の間違った時も

「完璧な人間は存在しない」

と知る君は、自分と変わらない

手足を持つ人間を、

許されたくないのか、

助けてみたくないのか。


そんな世間にとってのゴミに

手を伸ばしてみたくないのか。


僕は泣くよ。

自分がそのゴミだったから。

そのゴミである身になれたから。


そのために、

また僕は書き続ける。

ゴミのためと君のため。


読者よ、

苦痛をお大事に、

抱いて。

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