1-10

 午前四時三十七分。

 時はピックスレー基地での少年テロリスト、グレイの脱走から、少し遡る。


 EoE南西部に位置するアクロン空軍基地にあるのは、各基地への補給物資や要請された兵器を積み込むための輸送機である。

 GOWやその部品を生産する工業地帯から比較的近いエリアに位置する基地なので、テロリストの標的となる事件も第二次モントレー戦争以降の二十年ほどで何件か起きている。そのため量産型では最新鋭となる第六世代機の【アルバカーキ】、【リオグランデ】が、テロリストへのけん制もかねてこの場所を護衛する任務に就いているが、ここ数年はテロリストの目立った事件はやや遠方のピックスレー基地付近で起きているためこの配備に現実的な危機への対処という意味合いは薄れ始めていた。

 その基地に今、強風が、吹き荒れた。

 地上降下用ブースターパックの装着に適応したのは【サイラス】規格のGOWだけなので、降下地点の至近距離にあるGOW輸送機用巨大飛行場に配備された兵士たちが、降下を確認した瞬間【サイラス】の最新鋭機の偵察だと思い込んだとしても不思議ではない。

 味方識別信号IFFが確認されなかったことに違和感を抱いた兵士たちも数人いたが、陸戦主体のGOWを駆ることが多いテロリストがブースターパックを利用した前例は存在しないし、【サイラス】相手にあえて識別信号を出さないことで敵に察知されずに移動することは【アーロン・トラスク】も過去に何度か行ってきた戦術である。

大方【サイラス】と契約した傭兵が、思い切りのよいカスタマイズでもして、潜伏するテロリストを倒しに来たのだろうと踏んだ管制官は、渋々ながら半ば事務的に警備用のGOWを出動させた。傭兵と分かった時点で、協力してテロリストを倒しに行かせる算段だ。

出動したGOW中隊は白兵戦特化の第六世代機【アルバカーキ】と、同じく第六世代機で重火器武装が特徴の【リオグランデ】だ。彼らは【サイラス】の正規兵であり、最新鋭機のパイロット試験を勝ち抜いたエリートたちでもある。

彼らが確認したのは、たくましく生い茂った巨木を彷彿とさせる、暗い青緑を地色とした、二十二・三メートルほどの機体だった。【アルバカーキ】などの【サイラス】規格のGOW(体高約十五メートル)よりも一回り大きく、当然傭兵専用の【サン・ミゲル】などよりも大きいその機体に、何機かの【アルバカーキ】が子供のように真上を見上げていた。

 機体内のモニター上に表示されたそれら二機種、五機の機体スペックが、操縦桿を握る赤髪の少女の網膜に映りこんだ。

「第四世代以前のGOWが見当たらない……正規兵で間違いないようね」

 薄暗く、ただディスプレイの光だけに照らされたコックピットの中で瞳を閉じた巨大なGOWのうら若きパイロット―――エンマは、どこか安心したような口調を口にしながらも、その後重大な決心をするかのように息を吸い込んだ。

 『我々は【サイラス】の正規兵だ、貴官が傭兵なら契約ナンバーを言え』

 リーダー格らしき一体の【アルバカーキ】がグローバル通信回線を開き、暗緑のGOWに返答を求めた。正体不明のGOWが返した返答は、機械での行動を通じて行われた。

 背面に装備されたガトリングガンを上部に二百七十度回転し、【ミルトン】の肩に背負うようにガトリングを構える。

 右手で握る操縦桿に設置された複数のトリガーのうち、青いスイッチを中指で押した。

 爆竹のような音が、アクロン空軍基地に舞った。

 その直後、残る四機の【アルバカーキ】、【リオグランデ】がモニター越しに確認したのは、迎撃をする暇もなく上半身が消し飛んだ【アルバカーキ】の姿だった。

 四機が即座に、近接格闘武器のビームサーベル、バトルライフルを展開し、謎の暗緑のGOWに対して攻撃を行った。目の前のGOWが【サイラス】機でも傭兵の機体でもないテロリストの機体であること、量産型では最新鋭のスペックを誇る【アルバカーキ】の上半身が一瞬で塵と化したこと、同胞を目の前で無残な形で殺されたことなどが相まってパイロットから冷静さを失わせているのか、緑のGOWに対する攻撃もライフルによる直接の連射やサーベルをそのまま叩きつけたりなど冷静さに欠けた。

 青緑のGOWはそれらの攻撃にも、機体表面に展開された光子バリアによって無傷で耐えて見せた。積載されてる武器を考慮すれば、この機体の表面は生半可な装甲で覆われるわけにはいかない。

 光子バリアに武器が接触した際の振動音が、コックピット内にもむなしくこだまする。沈黙してしばらくその音を聞いていたエンマは、その音が響くたびに余計な考えが脳内から遮断され、一つの思考へと収束していくような感覚を覚えていた。

「そんなに焦らなくてもいいでしょう……」

 エンマの脳内にある思考が、ゆっくりと一点に集中していく。

 防御。反撃。討伐。殲滅。

 防御。反撃。殲滅。

 反撃。殲滅。

 ―――殲滅。

「私一人では……地獄には行かない」

 そうつぶやいた後、エンマは自分自身も機械のシステムの一部であるかのように、沈黙の中で兵装展開トリガーにスイッチを入れた。


 四機のGOWによる攻撃が始まってから二分が経過しただろうか。

 巨木のように鎮座するGOWの姿が、突然姿を変えた。

 同じ座標に現れたのは、両手両足のミサイルポッド、両肩側部に構えるロケットランチャー、背部のバックパックに据えられた榴弾砲、腰の両側に据えられたグレネードランチャー、両肩に装備されたガトリングガン、そして両手に携えたショットガン、対陸上母艦ライフルを、機内システムによって自動展開された巨大な殺し屋の姿だった。

 武器が展開された緑のGOW―――【スタイン・ミルトン】の装備を確認した【サイラス】のGOW四機は、機体の桁外れの脅威と、この後の地獄の災厄を予期し、一気に攻撃を中断して逃走していった。各機連携をとらずとも、現状の兵力では目の前のGOWを殲滅ということ、これから恐ろしい攻撃が放たれるということだけはそれぞれのパイロットが即座に理解できたのだ。


「……【レニー・ザ・ファントム】」

 小声の音声認証によってセーフティ機能が解除されたことを確認すると、少女は目を閉じて赤のトリガーを引いた。


 一瞬の後、飛行場に花が咲いた。

 【ミルトン】によって放たれたミサイル、砲弾、銃弾が咲かせる周囲の輸送機、GOW、そして人間、すべてを容赦なく無差別に焼き尽くす火花だった。

  飛行場、建物、門など、あらゆる建造物が、爆炎によって焦土と化していく。

 ミサイルの数発は管制塔に命中し、数秒前まで建物だったものを焼け爛れる廃墟へと変える。飛行場に阿鼻叫喚を起こす【サイラス】兵士たちの姿があった。モニター越しにそれを確認した【ミルトン】のエンマは、両手のショットガンの照準を彼らに合わせ、トリガーを引いた。一瞬の後、その場に生きた人々の姿は消失し、屍の血すらも蒸発して消え失せた。存在するのは、元の肉体の何分の一かもわからない小さな肉片だけだった。

 辛うじて消し飛ばされずに済んだ【アルバカーキ】や自動砲台が、【ミルトン】の背後を狙う。しかし、アラートによって背後に敵機が接近していることは彼女には察知できたし、【ミルトン】は振り向くこともなく肩のガトリングを後部に展開して射撃し、【アルバカーキ】を穴だらけの鉄の塊に変えた。

 ソドムとゴモラ。

 この場を何かに掲揚するならば、ユダヤ教とキリスト教の聖典で描かれる、神の怒りによって火の海と化した街がふさわしかった。

 

 管制塔やオフィスが業火の中に包まれている頃。

 同じように焦土と化していく飛行場に、一見偶発的に残った安全地帯から、管制塔の指示すら受けずに独りでに助走を始める、漆黒の輸送機の姿があった。【サイラス】のマークこそ印字されているが、とても飛行機を送れる状態にない基地の状況を無視するその常軌を逸した行動で、【サイラス】所属の兵卒が動かしている機体ではないと一目でわかる。

「【オペレーション・グレイプオブラース】……私の任務は、ひとまず成功ね」

 空軍基地が地獄と化した後でも、砲撃前と何ら変わらずに【ミルトン】の無骨なコックピットの中に座しているエンマは、機体頭部のカメラアイを輸送機の方に傾けた。

「待っててね、雪。貴方に恥じない死に方をして見せるわ」

 中に座す赤髪の少女は、輸送機が飛び立つのを、物憂げな表情で見送っていた。

 離陸した謎の輸送機の向かう先は北東―――ピックスレー基地のある場所だった。


 午前七時十一分


 ラグーナ・セカ駐屯地付近・エリアD5


 【トーガス・ヴァレー】を含む中規模のテロリスト集団のなかには、空路を利用して物資を同志たちの場所に送り届ける組織も存在している。この駐屯地には、そのような相手を砲撃特化の機体によって撃ち落とすための【サイラス】の部隊が配備されている。

 その大隊を構成する中隊、小隊に所属しているのは、第四世代の【ソリーダ】、【サン・ミゲル】を操縦する兵士たち。彼らは皆、【アルバカーキ】のような最新鋭機のパイロットを志願している若い士官たちだ。

 その時刻に駐屯地内のレーダーは、一時間半ほど前に飛行場を飛び立った輸送機が、偵察領域内を飛行しているのを確認した。

 ここにいる旧式GOWのパイロットたちは、シンプルな操縦スキルではアクロン基地の兵士たちに劣る。

 正義感に燃える澄んだ瞳の若者たち、あるいは手柄を稼ごうとする血気盛んな若者たちは、最新鋭機の操縦を担う【サイラス】のエリート兵士を目指して、このような違法にEoE領空を飛行する飛行機への対処に当たっている。


 輸送機がラグーナ・セカ駐屯地からの通信に取り合わないことを確認した将校たちは、直ちに輸送機の通過ポイントに重火器特化の兵装を持つ【ソリーダ】、狙撃特化の兵装を持つ【サン・ミゲル】の出動命令を出した。手っ取り早く高射砲で撃墜しないのは、この出動が若いパイロットたちの実技演習を兼ねているからだ。

 三個中隊、六個小隊によって合計二十四機のGOWを駆る彼らは、全体の戦力なら【アーロン】のような第七世代特機でも有利に勝利しうるという自負を持ち合わせている。若くて士気が高揚しているという意味では、アクロン空軍基地の【アルバカーキ】で編成された隊よりも強力な集団だった。

 中隊が輸送機との至近距離内にいたり、今まさにGOW頭部の光学センサーが輸送機の機影を捉えようとしていた、正にその時だった。

 夏の空を思わせる青に彩られた一体のGOWが、【ソリーダ】【サン・ミゲル】部隊の前方に待ち構えていた。

 【サイラス】で採用されているような、直線的なラインを特徴とするGOWとはまるで設計思想が異なる、曲線的なラインを描く外装が印象的な機体。戦場経験の少ない若年兵士たちでも、目の前のGOWが【サイラス】のものではないことは理解できた。かといって、【サイラス】が雇っている傭兵が合流したという考えもできなかった。ラグーナ・セカ駐屯地は傭兵たちに用意された駐留キャンプから比較的遠方に立地しているし、傭兵であれば事前に駐屯地に合流情報と登録ナンバーが送られているはずだ。


「味方識別信号無し! テロリストと思われます!」

「テロリスト!? たった一機でか!!」

 索敵担当の報告を聞いたリーダー機が、信じがたいといったような語調で答える。

 烏丸ケイイチ特尉の【アーロン】がたった一機でGOWの掃討作戦を幾度となく成功させた功績は、テロリスト側にも知れ渡っているはずだ。そのような時期にたった一機でこちら側に侵攻を行おうなどとは、よほどの命知らずか。あるいはこれは試作型GOWの実力を試す抜き打ちの演習なのか。

 いや、それとも。

あの機体が、テロリストの駆る規格外のスペックを持つ機体だとでもいうのか。


 全体が日本刀のように鋭利な曲線を描く、空色のGOW。どこか得体のしれない妖艶さを備えたその機体は、第六世代以降なら標準的に装備しているはずの長距離武器を一切ボディに装備していなかった。

近年高周波ソードやアーミーナイフのような近距離武器がある程度の評価を受けてはいるものの、基本的にGOW同士の戦闘における武器の主流は、第二次モントレー戦争以来アサルトライフルやマシンガンのような長距離武器である。

 銃器を持たないGOWが、たった一機で大量のgowが配備された駐屯地に侵入。誰もがその光景を、ある種自殺行為の現場として見ていた。

そのGOWの中で、コックピットに座するパイロットが不釣り合いに口角を釣り上げていたことなど、誰も知る由もなかった。


 無骨なコックピットの中で、その女は周囲を囲むGOWの一つ一つに目を配りながらにやついていた。

「【C】が教えたタイミングはちょっと前だけど…それ通りだと向こうの準備が始まる前にこっちが勝っちゃうんだよねぇ」

 空色と銀のGOW一機の前に、続々と若い兵士の駆るGOWが集結した。標的との距離を保ったまま、白兵戦用の【ソリーダ】は連射式アサルトライフルを、【サン・ミゲル】はスナイパーライフルを構える。

 リーダーのものらしきGOWが、片手で意味深なサインを描いた。おそらくは、何か妙な動きをすれば一斉射撃を行う、というニュアンスの合図だ。

輸送機ひこーきをかばう形でってのが癪ではあるけど……楽しませてもららおっか!」|

 警備兵の【ソリーダ】が持つ機銃の照準は、しかし一瞬乱れた。

 サブマシンガンを構えたGOWの隊列に対して、空色のGOWは突進という回答を繰り出してきたからだ。

 その時点では攻撃というより威嚇の意味合いしか持っていなかった照準は、すぐに駆逐へと目的を変更させてトリガーを引くには決断力がなさすぎた。

 右切り上げ。

 四角形の対角線を描くように、敵機を真っ二つに切り裂き、二等分した。

 下半身から離れた上半身を、空色のGOWのデュアルアイ、そして何機もの【ソリーダ】と【サン・ミゲル】のモノアイが捉えていた。

 鋼の塊と化した上半身に交じってモニターに映る赤いものは、パイロットの―――

 仲間たちが恐怖に慄いているのを、若手パイロットたちはお互いのGOWの動きで理解した。

 もはや彼らにとって輸送機の破壊などという目的は優先事項ではなかった。今撃たなければ殺される。

 しかし彼らには士気はあっても経験がない。自分たちが戦場にいるという認識が遅れ、指揮官を殺したGOWへと照準を合わすのに一定の時間を要した。

 慌てて射撃しようとするGOWのカメラアイが、暗い砂漠を映していた視界に煌びやかな光を映し出していた。

 光源は白銀色に輝く、GOWの刃だ。

「ムダムダ…いくよ、【ダニー・ザ・パイサーノ】!!」

 所詮相手は近接格闘と白兵兵装のみで、遠距離武器を持っているこちらの部隊相手には敵うことはない。その楽観的な予測は標的の圧倒的すぎる戦力への反応としては、あまりに生々しく、そして痛々しい考えだった。

 事実、一機の【ソリーダ】が他にさきがけてアサルトライフルを撃ったのとほぼ同時に、その予測は打ち砕かれた。

 空色のGOWが、【ソリーダ】がアサルトライフルの照準を合わせる前に、同機体が照準を向けた地点を回避して突撃していたからだ。敵のパイロットがこちらの心を読んだとしか思えない動作に、兵士たちは同様と焦り、そして何より恐怖を感じた。

 優秀な照準アラート機能でも備わっているのか、【ソリーダ】のパイロットがと疑い出したころには、肩部分からわきの下にかけての刃による唐竹割の一閃を放っていた。

 前の機体と全く同じ形で、GOWの上半身が崩れ落ちる。

 掃討すべき輸送機が、知らぬ間にGOW部隊の真上を通り過ぎていることなど、もはや誰も気にかけることはなかった。司令塔となる指揮官の操縦する【ソリーダ】を駆逐する脅威が現れた今、若い兵士たちの命を左右する機体への対処が、彼らにとっての最優先事項となった。

 血気にあふれつつも冷静さを欠いた銃撃が、次々と空色のGOWに仕掛けられた。


 ―――その動きの全てを、空色のGOWは見切った。

 女パイロットはこの時点で、全機殲滅の戦略を脳内に鮮明に描き出していたのだ。


 鉄屑としたGOWがうずたかく積もった、即席の墓場に、その空色のGOWはたたずんでいた。この機体の木槌のごとき蹴りによって、操縦席ごと押し潰された機体もある。潰されたパイロットは痛みも覚えぬままの即死という、ある意味楽な死に方を遂げたことだろう。

 鉄くずの山の麓に、逃げていく人間の姿があった。GOWの損壊から奇跡的に逃れられた兵士たちだ。ある兵士は、片足が見るも無残にひしゃげた別の兵士を担いで逃走している。

 この鉄くずの山を作り上げた修羅のごときGOW―――【ダニー・ザ・パイサーノ】の中にいたのが、二十代前半ほどの若い女性―――トルネィヤ・ピラータであったことを、駐屯地の職員たちも、彼女と戦った兵士も誰一人知らない。彼女が【ダニー】を利用したGOWでの戦闘にしか興味がなく、操縦する人間が死のうと助かろうと戦意喪失した時点で興味がないことも、誰一人知らない。

 エンマが操縦する、火器制御のためのスイッチがいくつも存在する【ミルトン】のコックピットと違い、【ダニー】のコックピットは二本の簡単な操縦桿以外には数基のスイッチしか設けられていない。アサルトライフルやマシンガンといった第六世代以降の標準的な遠距離兵装も持っていないという点では、兵装の質は【アルバカーキ】などにも劣っていると言える。

 若さゆえに本来好戦的な性質を持つ【ソリーダ】【サン・ミゲル】の部隊を、この【ダニー】が一機で殲滅できたという結果はもはや奇跡に近い。だがその奇跡には、パイロットの化け物じみた状況察知能力と頭の回転の速さ、そして機体の怪物的ともいえる反応速度という、偶然とは異なるれっきとした要因が存在していた。

 そのパイロットは今、戦場を切り抜けたとは思えない山頂から夕焼けを見るような調子で、遥か彼方へと飛び立っていく漆黒の輸送機を眺めていた。

 その飛行機から何らかの暗示を見出したかのように、ふとパイロットの女、トルネィヤ・ピラータはつぶやいた。

「これから何百何千と……殺し殺される瞬間に向き合うことになっちゃう…か」

 つぶやいた後、ゆっくりと。

「……くくくっ」

ゆっくりと、彼女の口角がつり上がっていった。

「フフッ!! 最高じゃん……!! この『家』が燃える瞬間に付き合えるなんてねぇ……ハハッ……クハハハハ!!!」

 トルネィヤの呟きは、やがて猛獣の遠吠えにも似た高笑いに変わった。その笑い声はコックピットの外にある駐屯地に届くことはない、周囲の環境のごとく乾ききった笑いだった。

 ラグーナ・セカ駐屯地付近の、GOWの死体が群がる砂漠の中で、【スタイン・ダニー・ザ・パイサーノ】は群れから離れた狼のようにたたずんでいた。

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