第4話 <10> エピローグ
この後、最後の夜をどう過ごすか議論になったけど、女子は温泉にゆっくり浸かりたいという事で一旦解散して「温泉、温泉♪」と2階の大浴場に行ってみんなで1時間近く浸かっていた。
ここでまさか音田先生が我慢比べと小説家しりとりを組み合わせるという遊びをやってくれた。よくそんな事思いつくなあというのがしのぶちゃんの本領。
「ルールどうするんですが。ドジっ子を最後まで入っててもらうとなるとしりとりじゃあんまり合わないじゃあないですか、先生」
秋葉先輩、ルンルンで条件を詰めている。
「逆の方がいいんじゃない。ドジっ子から先に上がってもらう。最後まで残った人が勝ち。ぬる湯の浴槽でやりましょうか。あとファミリーネーム縛りね」
「いいですねえ」
この勝負、海外の小説家だと「ん」で終わる人が多いので不利に働いた。私やアガクミ先輩が早々に上がる羽目に。勝負師としては遺憾。広乃ちゃんと雅楽川先輩、音田先生がしぶとく斬り合う。
音田先生「遠藤周作のウ」
雅楽川先輩「海野十三のノ」
広乃ちゃん「乃南アサのミ」
音田先生「三浦しをんのラ」
雅楽川先輩「ラ?ラって……うーん、ランボー」
音田先生、大人げなく舌打ち。
「もうちょっとでウタちゃん轟沈だったのに。濁音はなしでもOKよ、広乃ちゃん」
広乃ちゃん「じゃあ、堀辰雄のリ」
音田先生「リン・ミンメイの……あ」
広乃ちゃんと雅楽川先輩が大クレーム。
「先生失格です。リン・ミンメイって誰ですか?」
音田先生はシレっと言った。
「アニメのキャラクター。昔よく見ていたアニメの中の劇中歌手の名前。カラオケでも歌ったけどねえ。うっかりしてたわ」
「先生、どちらにしたって『ん』終わりでもアウトですよ」
雅楽川先輩「隆慶一郎のウ」
広乃ちゃん「じゃあ、上田早夕里のタ」
雅楽川先輩「高村薫のラ」
広乃ちゃん「え、ラですか。ラ……。思いつかない。負けました」
(その時アガクミ先輩が小声で「ラヴクラフト」とつぶやいているのが聞こえた)
女子小説家しりとり大会は雅楽川先輩がウィナー。
「買ったのはうれしいけど、冬の方がいいね。のぼせちゃう」
と雅楽川先輩も湯船から飛び出していた。
湯上がりにまたカラオケルームに寄ってみたら死屍累々。男子は餅多先輩が「アニソン歌ってから温泉にする!」と宣言。温泉は朝10時までOKだったので和賀山先輩とユウスケが巻き込まれて1時間ほどで20曲近く歌ったけど「三人じゃすぐ回ってくるし。持ち歌が尽きた」とユウスケは憔悴しきっていた。そこへ風呂上がりの女子軍団が来襲。
「同じ歌はダメだから」という無慈悲な音田先生の縛りでまたマイクが回り始めた。餅多先輩はやけくそで受けて立ったけど、その間に和賀山先輩とユウスケは逃走して温泉に行って消えたという展開。
翌日早朝、またもや私はアガクミ先輩と広乃ちゃんを叩き起こして最後の温泉を堪能。音田先生や秋葉先輩、雅楽川先輩もやってきて女子は勢揃い。やっぱり温泉は最後まで入る逃したらダメって感じ。
朝食会場で男子勢と合流。彼らも最後の温泉を堪能したらしい。朝食をしっかり頂くとチェックアウトして東京への旅路についた。
帰りは男子も巻き込んで小説家しりとり大会になった。帰りは餅多先輩が昨夜の廃線調査の負けを取り戻すべく3勝もの勝ちをもぎ取っていた。
そして餅多先輩からは簡単で良いからレポート書いてくれと言われた。
「ああいう情報はちゃんとインターネット上で残しておいた方が良いんだよ。正しい情報はシグナル/ノイズ比の戦いでは大事だからね。図書委員は情報発信すべきだしね」という事で夏休みの私の宿題が一つ増えたのだった。
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