第4話 <8> 図書館での調査と検討
鉄道橋の見学が終わると徒歩で松川町図書館へ向かった。地元図書館は地元情報の重要な起点であり、今日の最終目的地だった。ここで国鉄松鹿線について調べるというのが今日最大のお題なのだ。
餅多先輩からは先ほど撮影した写真は学校のサーバー経由でメンバーが見られるようにしてメッセするとの話があった。
音田先生からは「国鉄松鹿線について見た事を踏まえて調べて下さい。今晩、夕食後に発表会をやるからそれまでにまとめる前提で調べ上げてね」との話があり、一同は図書館内に散った。
ここについて調べるという話は予め言われていたので下調べはしていた。鉄道廃線本については地元の中央図書館で見つけた本を複写してタブレットに入れてきてあった。鉄道橋流出については昭和34年水害での流出が記録されていた。餅多先輩はこれでデザインが途中で異なる橋になったと判断していた。
そこまで確認した所でメッセの着信音が鳴った。餅多先輩から写真アップロード完了したとの事でアクセス用アドレスが添えられていた。
一枚ずつ写真と餅多先輩が付けたキャプションを見ていく。鉄道廃線本によれば昭和34年水害では第2から第4までの3つの橋梁が流されている。写真を見ていく。伊那大島駅側が第1橋梁になるらしい。「日本国有鉄道」と書かれた銘板がはまっていた。第2、第3、第4とチェックしていく。
流されて復旧工事が為された時はまだ国鉄時代だったので全部「日本国有鉄道」でないとおかしいけど。第4橋梁の所で「?」となった。ここだけ「日本国有鉄道」の文字が見当たらない。そして代わりに「1981年」という数字があるのを見つけた。これってどういう意味なのか?
図書館のカウンターに行った。カウンターの中にいたスタッフの方を捕まえて聞いた。
「すいません。この町であった水害についてまとまっている資料を探してるんですが」
「え、水害ですか?」
「はい。川も近いですし昭和34年水害なんて有名みたいですけど他にもあったんじゃないかなあって」
「あんまり聞かれないからすぐ答えられないけど……ちょっと待ってくれますか」
「はい。お手数掛けます」
カウンター内は大騒動になった。地元の小学生低学年らしい子に「何を聞いたの?」と聞かれたけど答える前に友達に呼ばれたらしくそちらに行ってしまった。こんな風な混乱を起こす人、いないから思わず聞いたのかな。
10分ほどスタッフ3人がああでもない、こうでもないと探してくれた結果、1冊の町政史本を渡された。
「これに出てます」
「ありがとうございます」
本を閲覧席に持っていくとパラリと中身を見た。年表が出てるようだったので、そちらでそれらしい分を選ぶと詳細についてその時期の記述が載っているページを確認して行き、必要なページに紙栞を挟んでカウンターに戻り複写をさせてもらった。後でスマフォで撮影してタブレットに取り込まなきゃ。
17時まで図書館で各自調査を行った上で伊那大島駅から再び電車で伊那市駅に戻り18時30分頃にマイクロバスに拾ってもらって旅館に戻った。
温泉にさっと入りさっぱりするとすぐ夕食。この後に発表準備があるので慌ただしくかき込む感じで食べるとそれぞれの部屋で発表内容をまとめて21時にカラオケルームに集合になった。ほんと1日目より2日目の方が容赦ない日程というのは本気の合宿としか言いようがない。
21時には青息吐息の高校生8人とこれから面白い発表聞けるかなとわくわくしている顧問の先生が1人いるという状態になっていた。
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