第4話 <2> 合宿旅行へ行く!

 合宿旅行は5月には企画が始まっていた。リーズナブルに図書館など見学して知見を深め、ついでにレファレンスサービスの利用者・回答者としての体験が出来るような実地調査も行うというのは、図書委員会の伝統らしい。


 合宿参加者が3学年揃うのは音田おんだ先生になってからは初めてらしく音田先生と委員長の秋葉先輩はいつも以上にハイテンション。選書会議などの合間に企画内容を決めていた。

「やっぱり温泉は譲れないよね」

「気が合いますね。先生。私もです」


 オフタイムの事ばっかり心配しているように見えたけど、そうは甘くはなく恐ろしく真面目な見学・演習予定が組まれていた。図書館は2カ所、旧図書館が1カ所。そしてフィールドワークの演習が1件という内容が2泊3日で詰め込まれていた。欲張り過ぎるのは音田先生と秋葉先輩の悪いところだった。これ、やりきれるのか心配。


「ところで先生、夜のスケジュールになんでカラオケなんて予定が入ってるんですか?」

 恐る恐る聞いてみた。

「ミアキちゃん、いいのよ、親睦だから歌ってレファしてって図書委員会ならではよ」

 意味のわかんない回答。カラオケ自体は音田先生の趣味だった。この人の音楽の趣味とか知らないや。今時のネット音楽とか歌えるのかしらんって私がそもそも

そういうの疎いから困ったな。


 そばで聞いていて音田先生の回答に呆れた雅楽川先輩が事の真相を話してくれた。

「泊まるホテル、音田先生のご親戚なんだって。だから安い。で、音田先生がもう勝手にお願いしてそういう部屋を無料で使わせてくれるって話がついてる。レファレンスのフィールドワークの発表をそこでやるからって理由だけど、その後のお遊びでカラオケやるから。ただし音痴といえば音田」

「こら、そこはおべんちゃらでもいいから先生の美声が聞けるって言っとけ」

 しのぶちゃんは横暴だなあと思いつつ苦笑した。


 どうやっていくかは予算の兼ね合いもあって紛糾した。結局、青春18切符を使う(!)という荒技が安いという話になって登戸駅集合、立川経由の中央線旅になった(必然的に普通列車鈍行旅だ)。

 20日月曜日に夏休み前の最終授業が終わった。2学期制なのでこの日に終業式はない。ただ長期の休みに入るので翌日からは部活や補習、アルバイトに打ち込む子が多い。そして私達は翌21日火曜日から2泊3日の合宿旅行に行く。

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