7#殺されゆく仲間達に風船を

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




 1000頭ものエゾシカ達の群れは、100個もの大量の風船を立派な角に結んだ、がたい隆々の一頭の雄エゾシカが率いて、荒野を力強く走り回った。


 その『風船角』のエゾシカのリーダー、ニイムは行く先々で拾い集めた風船の『仲間達』・・・一頭一頭群れから死んでゆく仲間がいると、必ず見付ける風船・・・と、後方の夥しいリアルな『群れ』に声をかけた。


 「ちょっと休憩ぃーーー!!食事しよう!」


 「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」・・・




 キキキキキキッ!!


 ざざーーっ!!




 むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ・・・




 「休憩終わりーーー!!さあ、みんな行くどぉーーー!!」




「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」「はーい!」・・・




 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




 夥しいエゾシカの群れが去った後の山林の木々の皮は、見た者にとっては無惨と思わざる位に剥がされていた。


 エゾシカ達が木の皮を餌として食していたからだった。


 人間達はこの行為をこう述べた。




 『シカの食害被害』と。



 只でさえ、無数のエゾシカ達の群だ。人間達は迷惑だと怨念と憎悪を『有害獣』であるエゾシカ達に向けられた。


 この世には、エゾシカの天敵であるエゾオオカミは人間の憎悪によって滅ぼされ、エゾシカ達は繁殖コントロールが効かなくなり、どんどん増加の一途を辿っていた。


 


 そして、その『風船角』の雄エゾシカのニイムの大量すぎる、その大群もそのエゾシカの増加の象徴だった。




 そんなニイムの群れを地元のハンター達が見逃す訳が無かった。 




 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!




 「しまった!」


 リーダー鹿のニイムは、突然の銃声に驚いて跳び跳ねた。




 ニイムの判断ミスだった。




 ・・・まさか、この静かな茂みに人間どもが潜んでたとは・・・!!




 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!




 びぃーーーーっ!!


 ぐぉーーーーーっ!!


 ・・・・・・




 「・・・!!!!」


 リーダー鹿のニイムは絶句した。




 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!




 ハンター達は一斉にエゾシカの群れに向けて猟銃を打ち、どんどん射殺しまくった。




 ・・・仲間が・・・!!




 ・・・仲間が・・・!!




 ・・・どんどん・・・




 ・・・どんどん・・・




 ・・・死んでいく・・・




 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!



 びぃーーーーっ!!


 ぐぉーーーーーっ!!


 ・・・・・・



 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!




 一頭の身体中に銃弾を受けたエゾシカが、真っ赤な鮮血を垂れ流しながら、ニイムに這いつくばって息を絶え絶えに蚊の鳴く声で呟いた。


 「ふ・・・風船く・・・くれ・・・」


 


 バタッ・・・




 血塗れのエゾシカは、そのまま息絶えた。




 「風船くれ・・・」


 「風船ちょうだい・・・」


 「ふ・う・せ・ん・・・」


 「風船ちょうだいよ・・・」


 「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」「風船を・・・」・・・・・・




 「・・・?!」




 雄エゾシカのニイムは絶句した。




 ・・・今までの俺はいったい何勘違いしてたんだ・・・?!




 ・・・俺をリーダー鹿と慕って、付いてきたのではなくて、この俺の角の風船が目当てで付いてきたのか・・・!!




 エゾシカのニイムは、立派な角をまさぐり結ばれた風船を手繰り寄せた。


 風船に宿った『仲間』に、どうするか聴くためだ。




 ≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫≪・・・・・・≫・・・・・・




 どの風船も、返答が無かった。




 ≪この風船には、俺らは居ねえぜ!!≫




 「はっ!その声は!!」


 エゾシカのニイムは、頭上の角から聞こえて来る仲間の声にギョッ!!とした。




 ≪隊長!!お願いです!直ちに隊長の角に括ってある風船を、後ろの仲間に差し上げて下さい!≫


 


 「しかし・・・お前達が・・・」




 ≪だから言ったでしょ?俺達は風船から、隊長の角に憑依したって!!≫




 「だって・・ 」


 ≪俺達は、隊長の為に言ってるのです!隊長!俺達の生きてた頃に魅せた、自慢の角で後ろの仲間達を救って下さい!≫


 


 ・・・角・・・



 ・・・角・・・




 「角!!!!」


 雄エゾシカのニイムは、偶蹄で角に結ばれた100個もあるカラフルな風船を全部ほどき、


 「みんなぁ!!ごめんなーーーー!!欲しかったんだろ?風船を!!あげるぜ!!ただし、1頭に1個なーーーー!!

 みんなぁ!!興奮しすぎて風船割るなよーーー!!!

 風船貰ったら、必死に逃げろ!!

 必死に逃げ切れ!!

 ここは危ない!!

 だから・・・俺が・・・この角で・・・守るからなぁーーーー!!

 俺はお前らのリーダー!!風船角のニイムだぁーーーーーーー!!」


 雄エゾシカのニイムは、大声で後続のエゾシカ達に告げると、風船をどんどんと偶脚で投げ与えた。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!


 


 「風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!風船欲しい!!」




 エゾシカ達は我先に我先にとドンドンひしめきあった。


 何しろ、1000頭のエゾシカである。雄エゾシカのニイムは、忽ち揉みくちゃになり焦った。




 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!




 ぱぁーん!!


 

 「ぎょおおおおおん!!」


 その時だった。


 雄エゾシカのニイムが手渡そうとした風船に散弾銃の弾が命中し、木っ端微塵にパンクしたと共に、手渡そうとした相手のシカもその犠牲になり倒れて死んだのだ。




「嘘だああああーーーー!!」



 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!


 ダーーーーン!!




 ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!ぱぁーん!!




 「ぎゃああああん!!」


 「ぎょおおおおおん!!」


 「ぐわぁぁぁぁ!!」


 「げぇぇぇぇぇん!!」




 風船は、シカ達に渡らず次々とハンターの銃弾に当たりパンパン破裂し、シカ達も忽ち次々と銃弾に倒されていった。




 「こ・・・こ・・・」



 雄エゾシカのニイムは、守りきれなかったシカ達への無念と、ニイムの思いを阻害したハンター達への怒りで目は爛々と輝き、顔はしかめ、蹄から、筋肉、鼻、角、そして小さな尾の先までシュウシュウと湯気が立ち込めた。




 「このやろう!!なんてことしやがる!!に・・・人間ども!!!!お前らだけは許さねえ!!!!!!

嘘だああああーーーー!!」

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