4#ジーンの角が取れた
やがて季節が過ぎ、鹿の角が生え変わる春先になった。
ジーンの角や体に結んだカラフルは風船は、日に日に萎むどころか萎んでるのを見つけると、外しては口で膨らませていたのでまだ元気だった。それでも何かの拍子で割れた風船もあった。
そんなジーンも角の生え変わる時が来た。
ジーンは角が痒くて痒くて仕方がなかった。
そこにあった木を角の風船が木に干渉して割れないように慎重にこすると、ポロッと角がとれた。
ええ~っ!
!ジーンは目を丸くした。ジーンはもう一方の角もこすったら、そっちの角もポロッと取れた。
ジーンは呆然とした。脚元には風船がいっぱい付いた角。
一方ジーンは角の無い頭・・・風船・・・俺の風船・・・どこに風船を・・・しばらく考えていたら、そうだ!体中に結ぼう!と思った。
ジーンは角の風船を取ろうとひもの結び目を解こうにも複雑に絡まり、解けない。
四苦八苦してる隙に、ジーンを狙う者がいた。
そいつは、ノッシノッシとジーンに近づき・・・
「あ~っやっぱり風船の鹿だ~!!」
そいつの正体は、ツキノワグマのプックだった。
プックは取れた角の風船を見て
「俺も風船欲しい~!!ちょうだ~い!」
とほっぺたをぷ~っとして、ゴム風船を口で膨らますジェスチャーをしながら野太い声で言った。
「ええ~っ!」ジーンは言った。
「だって僕が苦労して集めた風船だよ!」
「ねぇ~お願いだから一つでもいいからさあ~!」
プックは鼻の穴をパンパンにして、ジーンに顔を近づけて頼んだ。
「やだよ!自分で探せばいいじゃん!風船なんかどこでも堕ちてるよ!」
「このけち!」ツキノワグマのプックは膨れて、ジーンを睨みつけながら去って行った。
「この鹿はずるいね~風船いっぱいあるから一つでも譲れないかしら?」
「そうだね~!あの鹿何考えててるんでしょうね~!けちんぼの上に自己中ときたもんだ!」
このやり取りを目撃したリス達がシカのジーンに聞こえるようにひそひそと嫌みを言った。
ジーンはリス達を睨みつけると、リス達は
「自己中が見てる逃げろ~!」
とそそくさと逃げていった。
取れた角に巻きつけて取れなった風船はジーンが歯で何とか外れ、前脚に結んだ。
ジーンがすっかり萎んでいる緑色の1個の風船を見つけた。
ジーンは口で膨らませ直そうとして、吹き口をほどいて息を吹き込もうとした。
そこに、
ニョロニョロ・・・
「やあ、シカ君。」
「うわっ!マムシっ!」
マムシのウポは、シカのジーンの角に風船を結び治しているところを鎌首を上げ、舌をチロチロさせてじーっと蛇睨みしていたのだ。
ウポもまた、風船に見とれていたのだ。
「ねえシカ君、みんなには風船あげないであたしにはあげるよねえ。」
「ええ・・・」
「『ええ』じゃねえだろ!?お前本当に独占欲の固まりだな。関心するよ!お前が周囲から嫌われているのも分かるわ。いっそのこと風船と結婚すれば?お前みたいな自己中シカは、あたしの毒をお見舞いしてやるわ!」
マムシのウポはバッ!と口を大きく開けて、シカのジーンに向かって襲いかかってきた。
「うわぁーーーーっ!」
ジーンはぴょーん!と跳び跳ねて萎んだ緑色の風船をくわえたまま、必死にその場から逃げた。
「はあ、はあ・・・マムシまで僕の風船を狙いに来るとは・・・」
ジーンは、くわえた風船が少し膨らんだり萎んだりする程に肩で息をしていた。
「よし・・・この風船を膨らまして・・・」
ジーンは深く息を吸い込んで、思いきりくわえている緑色の風船に息を吹き込んだ。
ぷぅーーーーーーーっ!!
パァーン!
「あひゃっ!」
その風船のゴムはすっかり伸びきっていて、すぐに破裂した。
「・・・ったく、いいザマだ!みんながお前さんの風船を欲しがってるのに、独り占めするから罰が下ったんだよ!!この欲張り鹿め!」
また、マムシのウポが草葉からニョロっと飛び出して嘲笑った。
「なにおーっ!」
しゃくにさわったシカのジーンは、そのマムシを前肢の蹄で踏みつけようとした。
「おっと!あたいを踏んだらどうなるか知ってるか?直ぐ様、あたいの牙が脚に噛みついて毒を注入してやるからな!分かったか!!」
「・・・ちっ!」
これには、さすがのジーンはぐうの音も出なかった。
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