3#ジーンの親
そよ風にニホンジカのジーンの立派な角に結ばれた無数の風船が揺れていた。
ジーンは、今ニホンザルのテツジが言い放った言葉に言い知れぬ悔しさを感じた。
「何であのカモシカの風船が割れた時に一個でもあげなかったんだ?」
「こんなケチで自己中な鹿にはあげる風船は無い!」
それもそうだろう。
あの態度ではどう見ても自分は“自己中”でしか見られない。
本当はニホンカモシカのマウシイにあの赤い風船を
「俺はいいからこの風船は君の物だよ」
と言いたかったが自分の心の中の“自己中”が邪魔する。
しかもカモシカのマウシイは、自分と同じ境遇であることだ。
マウシイの母さんは目の前で車にはねられて死んだと、いつかマウシイの口から聞いたのだ。そしてジーンの母も・・・
ジーンがあの時、ひっきりなしに行き過ぎる車の列に大はしゃぎしてなければ・・・母鹿が再三注意したのも聞く耳持たなかったジーンは、夢中になってなんと道路のど真ん中を駆け回ったのだ!
仰天した母鹿は道路上ではしゃぐジーンをダッシュしてきてはねのけた。
その瞬間・・・
「母さああああん!キョォォォォォーン!」
母さんは大型トラックに挽かれたのだ!
弧を描いて道路に叩きつけられた母鹿は砕けた骨の体でジーンにこう告げた。
「ジーン・・・あんたは本当に自己中ね・・・そういう性格じゃ・・・友達出来ないよ・・・」
そのまま母鹿はジーンの傍らで息を引き取った。
あの時に流した涙はいったい何だったのだろうか?
ジーンはまたあの忌まわしい後悔の日を思い出して目からうっすらと涙がこぼれ落ちた。
ジーンは角に結びつけた無数のカラフルな風船を涙でぼやけた目で見上げた。
ジーンが角に風船を結びつけたのに訳があった。それは父の影響だった。
父鹿はとても立派な右角に鉢巻を付けた大きな赤い風船を結んでいた。
お祭りの屋台で売られているゴム風船だ。お寺のお祭り中に怪我している所を人間が手当てして、お近づきと友情の印にその近く屋台で買った風船を角に結んで貰ったとか。
始めてジーンが父を見た時、赤い風船と立派な胸元が相まって凛々しい見えた。
そよ風にニホンジカのジーンの立派な角に結ばれた無数の風船が揺れていた。
ジーンは、今ニホンザルのテツジが言い放った言葉に言い知れぬ悔しさを感じた。
「何であのカモシカの風船が割れた時に一個でもあげなかったんだ?」
「こんなケチで自己中な鹿にはあげる風船は無い!」
それもそうだろう。
あの態度ではどう見ても自分は“自己中”でしか見られない。
本当はニホンカモシカのマウシイにあの赤い風船を
「俺はいいからこの風船は君の物だよ」
と言いたかったが自分の心の中の“自己中”が邪魔する。
しかもカモシカのマウシイは、自分と同じ境遇であることだ。
マウシイの母さんは目の前で車にはねられて死んだと、いつかマウシイの口から聞いたのだ。そしてジーンの母も・・・
ジーンがあの時、ひっきりなしに行き過ぎる車の列に大はしゃぎしてなければ・・・母鹿が再三注意したのも聞く耳持たなかったジーンは、夢中になってなんと道路のど真ん中を駆け回ったのだ!
仰天した母鹿は道路上ではしゃぐジーンをダッシュしてきてはねのけた。
その瞬間・・・
「母さああああん!キョォォォォォーン!」
母さんは大型トラックに挽かれたのだ!
弧を描いて道路に叩きつけられた母鹿は砕けた骨の体でジーンにこう告げた。
「ジーン・・・あんたは本当に自己中ね・・・そういう性格じゃ・・・友達出来ないよ・・・」
そのまま母鹿はジーンの傍らで息を引き取った。
あの時に流した涙はいったい何だったのだろうか?
ジーンはまたあの忌まわしい後悔の日を思い出して目からうっすらと涙がこぼれ落ちた。
ジーンは角に結びつけた無数のカラフルな風船を涙でぼやけた目で見上げた。
ジーンが角に風船を結びつけたのに訳があった。それは父の影響だった。
父鹿はとても立派な右角に鉢巻を付けた大きな赤い風船を結んでいた。
お祭りの屋台で売られているゴム風船だ。お寺のお祭り中に怪我している所を人間が手当てして、お近づきと友情の印にその近く屋台で買った風船を角に結んで貰ったとか。
始めてジーンが父を見た時、赤い風船と立派な胸元が相まって凛々しい見えた。
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