2#欲張りジーン

 こうしてニホンジカのジーンはひばの木のにいっぱい枝になっている風船をいっぱいゲットした。


 そうだ。ぼくの生えかけの頭の角に付けちゃお!


 ジーンは、その風船の束を右側の角に前脚の偶蹄を使って、くいっと結んだ。




 ふんふんふ~ん♪ ジーンは歩く度に、頭上の角に結んだ風船達がゆらゆらと踊るのが楽しかった。


 ぽ~んぽ~んとお互いの風船とぶつかりっこをしながら。


 しばらく歩いたら、草原で半ば浮きながらふわふわと揺れていた青い風船を見つけた。ジーンは偶脚で拾い上げて、また片一方の角に結んだ。 


風船2つ一緒にふわふわゆらゆら。ジーンは愉快にふんふんふ~んと鼻歌をうたいながらスキップした。




 「ストーップゥ~!!」


 すると、今さっきのカラスのジョイがまたやって来た。


 「み~んな穫っちゃったのかこのけちんぼ!」


 「また来た!それに“けちんぼ”って何だよ!」


 ジーンは今さっきより頬がパンパンにぷうっと膨れた。


 「“けちんぼ”ってさ~全部拙者が拾い集めた風船だよ~!風船が果物みたいになってる訳無ぇじゃん!それに断り無しにひとの風船勝手に盗るなボケぇ!」


 カラスのジョイはジーンに負けない位頬だけでなく吸い込んだ息を胸をパンパンにして膨れた。


 「ま、仕方ない。拙者の拾った風船の管理も悪かったなあ。あっ!そこの右端のピンク色の風船!空気が少なくて隣の風船より縮んでるから拙者が嘴でぷぅ~っと息入れて膨らませてあげようか?」


 「別にいいよ。バカガラス」


 「うるせえ!けちんぼ!バカジカバカジカ!ばーはは~い!」


 いたずらガラスのジョイはジーンに嫌みたらしくはやしたてながら飛び去っていった。


 「いったいなんだったんだろ。まいいか!俺にはいっぱいの風船があるし♪」


 それから、ジーンは草原やしげみに風船を見つけては拾っては、角に結びつけた。


 木の枝に引っかかった風船は、優しいニホンザルのテツジさんに頼めば取ってくれた。


 ジーンは崖になっている真下を見た。赤い風船が揺れていた。


 これはジーンの脚では取るのは難しい。


 すると、その崖を一匹のニホンカモシカが。ジーンの知り合いのマウシイだ。


 「お~い!マウシイ!頼みがある。」


 「・・・なんだ~い!」


  マウシイはジーンの呼びかけに答えたとたん、崖の風船を見つけ、


 「あ~~~っ!!ふうせんだ~~~っ!!」


 カモシカのマウシイはとんとんとーん!と崖をリズミカルに駆け下り、崖でふわふわと揺れている風船をくわえ、またとんとんとーんと崖を駆け戻った。


 「あ~っ!!」


 ジーンは見つけた赤い風船を取ったカモシカのマウシイを追いかけた。


 カモシカに追いついたジーンは、ぴょーん!とジャンプして通せんぼをした。


 「この風船は俺が見つけたんだ!返せ!」


 「僕が最初に見つけたんだ。やだ!」

 

 「返せ!」「やだ!」「返せ!」「やだ!」「返せ!」「やだ!」「返せ!」「やだ!」「返せ!」「やだ!」「返せ!」「やだ!」「返せ!」「やだ!」


 ・・・と問答の繰り返しだ。


 「風船欲しいって君、こんなにいっぱい風船もってるじゃん!」


 「ぎくっ!」


 「じゃあね~!」


 カモシカのマウシイはと~んと~んと崖を駆け下りて行った。


 でも直後ぱーん!と音がして、うわ~ん!!と泣き声がした。


 どうしようかな?一つあげようかな?でも下降りるの怖いし・・・まいいか。この風船は全部俺のものだしな。


 また風船探し。また拾っては角に結んだ。


 角はたちまち風船が結べない位にいっぱいになり、今度は脚に結んだ。


 ジーンは何だかいっぱい付けた風船で体が軽くなったような感じになり、ウキウキしてぴょーん!ぴょーん!と飛び跳ねた。本当に空を飛べそうな気がした。




 また風船を見つけた。


 今度は木の高い場所だ。ジーンは風船で少しは体重が軽くなっても、ジャンプしても取れない位置だ。


 また今さっきのニホンザルさんだ。お~い、あの風船を取ってくれ!


 「お断りだ」


 そのニホンザルのテツジは厳しく言い放った。


「何であのカモシカの風船が割れた時に一個でもあげなかったんだ?」


 「だって・・・」


 「だっても何もあるか!こんなケチで自己中な鹿にはあげる風船は無い!」


 ニホンザルのテツジはその高い木に引っかかってる青い風船を持ち去った。


 赤い風船が割れたカモシカのマウシイに渡すつもりだ。


 ジーンは何さ!とぷっと膨れながら、枝から枝に飛び移るニホンザルのテツジを見つめていた。


 青い風船をニホンザルのテツジに貰ったカモシカのマウシイは、今さっきの割れた赤い風船と一緒に前脚に結んで、鼻息でゆらゆらさせいる風船に見とれていた。

 

 

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