鹿の角の風船

アほリ

1#ジーンと風船

う~ん。いい天気だなぁ~!


 ニホンシカのジーンは、胸いっぱいに清々しい空気を吸い込んだ。


 何か面白いことないかなぁ~♪




 空にはツグミとキビタキのおしゃべり。雲一つない。太陽が眩しい。

 

 大きなひばの木の下。ぼくのお気に入り。


 見上げれば、枝と枝が吹く風でカサカサと心地よい歌をうたう。

 

 ジーンはひばの木を見上げた。


 無数の風船が果物がなっているようにいっぱい浮いていた。


 「どこから飛んできたのかな?こんなにいっぱい風船がなっているなんて夢のようだなあ。全部穫っちゃお~っと♪それに僕が穫れる範囲にラッキ~♪」


 ジーンは背伸びしてよっこらしょっ!と前脚や口でひばの木になっている風船を穫っていった。




 かあ!かあ!




 突然一羽のハシブトガラスが邪魔した。


 「拙者の獲物に何するんじゃ~!」


 「このバカカラス!木から落ちるだろ!!」


 「バカカラスとは何だよ!拙者の名はジョイ。風船割りのジョイだ!分かったか!」


 「ジョイだかなんだか知らないけど、この木になっている風船を取りたいんだよ。どいてよ!」


 「カハハハ!」


 「何がおかしいんだよ!」ジーンはぷっと膨れた。


 「拙者は通算1000個風船を割り続けたんだ!どうだ!まいったか!


 ・・・という訳で拙者の獲物だ。割らせろ!」


 「そんなこと知ったこっちゃないよ!俺が最初に見つけたから、俺の・・・うわぁ!」


 ドスン!いたたた・・・


 「し~らない!し~らない!でも無事みたいだ。実はなこの風船は拙者が・・・いや何でも無いっ!バッハハ~イ!ついでにこのけちんぼ!」


 いたずらカラスのジョイはやっと退散したけど、尻餅ついちゃったかな?でもジーンの前脚には色とりどりのゴム風船が握られていた。

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