第8話「ウザラブ」8

◯翌日、父がバイクを裏庭に引き出して整備している。

唯「なんか…かっこいいよ!古いけど綺麗なバイク!タンクの色がギー太と同じだし…、なんかギー太に出会った時と同じ感じがする。」

父「お父さんの大学時代は、お母さんのTZRみたいなカフェレーサー全盛でね。でもお父さんは古き良き英国車みたいな単気筒のデザインを週刊誌の裏表紙の広告で見て、SR400に一目惚れしたんだ。それで地下鉄工事のバイトして買ったんだよ。それだけに手放せなくてね。買取の梅光で査定したこともあるけど。唯がバイク乗るなら、新車買ってあげてもいいんだよ。」

唯「バイク屋で色々見たけど、どれもピンと来なくて…。いっそただで手に入るならと帰ってきたんだけど、なんか私にはこの子しかない気がしてきた!お父さんが乗ってないなら私が乗りたい。まだ走るでしょ?」

父「致命的な故障はないみたいだけど、部品が劣化してるかもしれないから、きちっとレストアした方がいいな。まあ唯も免許取るのに時間かかるだろうし…」

唯「バイト頑張って、最短で免許取るから待っててね。えっと、この子名前あるの?」

父「ロシナンテて言うんだ」

唯「(うわっ!昭和のセンス…)じゃあ待っててね、ロッシー」

◯少し離れたところ所に母と憂が立っている。

憂「おねえちゃんだけいいなあ。私もバイク欲しい」

母「私のTZRなら実家にまだあるわよ。嫁入資金に売ろうと買取梅光に査定して貰ったけど、2ストはあんまり高く売れなくて…」

唯憂「(どんだけ梅光独占企業?)」

母「それに独身時代、普通に走ってただけなのに”本牧のマリア”とか言われて、なぜだか道を譲って貰ったりして、楽しかった…。結婚でバイクを降りても、なんかそんなごく普通の青春の思い出を手放すの、しのびなくって」

唯憂「お母様?なんか普通じゃない青春になってませんか?」

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