第17話 町 -シティ-
昔々、未来に向かって発展する世界から取り残される様に、さびれていった田舎町。そこはいつしか犯罪者が逃げこむ悪党共のたまり場となり、犯罪の温床になり果てていた。
武器の密造と販売、殺人、強盗、窃盗、売春、ドラック・・・・。まさにこの世の地獄と言った有様だったが、皮肉な事にこれらの
そこはこの世の悪を詰め込んだ地獄ではあったが、真っ当な世間では満たされない欲望を叶える
政府は何度も大規模な鎮圧作戦を行ったが町を焼き尽くす事は出来なかった。それどころか町を逃げ出した人間が、他の都市で犯罪業を行ない治安がさらに悪化する結果をもたらす事となる。そしてある決定を下した
町を囲むように壁を作り、町の人間が外に出ない様にしたのだ。そして町は刑務所で扱いきれなかった犯罪者を追放する犯罪者の流刑場となり果てる
だが犯罪業が生む経済効果を政府は捨てきれず、町の人間の更生を名目に合法的な貿易を結び、制限はあるものの人の出入りも許される。言わば犯罪者の放牧場になった
「そう、家畜だ・・・この町の人間は」
次の仕事場所に向かう車の後部座席で書類を見る私 ”エドワード・ギブスン” は、何となく外の景色を見て呟いた
「このシティにも自然はあるのだな」
この町の呼び名は、その時の最も力を持った犯罪組織が自称して、町の支配体制が変わる度にコロコロと変わっっていき、やがて
「この辺りには農家が集中してますからね。一番デカイのは古い軍事基地を占領し農場を作ったヴァーモント農場ってとこです。葉っぱ育ててふかしてるヒッピーモドキ共の集まりでさぁ」
「軍事基地? そんな場所で農業を?」
「農業だけでなく基地を改造し、ライブ会場なんかも作って時々演奏してますよ。生活に必要な食糧から自分達で作ると自立心の強い連中の集まりですから、他の組織と組む事は滅多にありません。お暇の時に立ち寄られてみますか?」
「いや、今のところ仕事で寄る必要はない。コカやヘロインの仕入れ先は別の組織と契約を結んでいる、先方にいらぬ疑念を抱かせる行動は慎むべきだろう。正直、少し興味はあるがな」
失笑しながら私は再び書類に目を通そうとした瞬間
「ドオオン!」
「何事ッ!・・・・ふぬっ!?」
「モ~~~」
突如、車に衝撃が走り停止し。外を覗くと、もう自然界ではすでに絶滅危惧種のはずのバッファローがこちらを覗き込んでいた
”ぶつかって来たのはコイツか!?”
と思いながらも突然の出来事に固まっている私に運転手が衝撃で作動したエアバックをナイフで切り咲いて潰しながら、私に声をかけて来た
「痛てて…。大丈夫ですかボス」
「なぜこんな場所に猛獣で野放しになっている!?」
私の言葉でようやく周りを囲んでいるバッファローに気付いている様子だった
「あ~…、こりゃ多分、さっき話しました・・・・」
運転手が喋り終える前に、どこからか調子はずれの声が聞こえて来た
「だいじょ~ぶ? 僕ちゃんの牛が驚いて、ちょっっと暴走しちゃってさぁ。ゴメンネ」
大きなトラックに乗った、身体の線が細いカウボーイ風の、西部劇に出てくるようなタフガイとは対極にいる様な男が謝って来くる。先ほどの事故はコイツが原因だろう
「え~と・・・」
しかし謝る気があるのかないのか、ヘラヘラしながらその男は帽子のバンドに挟んであるコニカル巻きのタバコを二つ取り、片方を口に咥え火をつけ、もう一つのタバコをこちらに差し出してきた
「吸う? 良い葉っぱ使ってるよん。このところ天気が良いからさ」
その男がそう言ったとたん、護衛の背後の車両から発砲があった
「パンパンパン!」
「襲撃だ!!」
そう言ってカウボーイを銃撃する護衛達
”そう言えば護衛の車両は前後に配置させていたはずだが”
と思い前を見ると、前方の護衛車は牛ではなく、明らかにトラックに衝突されであろう車体はひしゃげていた。これでわざとじゃないと言うのは無理があるだろう
「ひい! だからゴメンって言ってるのにぃ~!」
奇声を上げながら逃げて行き、牛達は走りながらもトラックの荷台から降りた足場を使いながら飛び乗って行く
「頭の良い動物だな」
私は思わずそうぼやいた頃、後ろの護衛の車両が走り去るカウボーイ男を追いかけていく。運転手がボーとする私に言った
「どうにか…まだ車は動きそうだ。一度本部に戻ります。後でヴァーモント農場に苦情を入れましょう」
「あの男がその農場の関係者か・・・。まったく、部下の教育はしっかりして欲しいものだ」
「いえボス・・・。あの男がその農場の
「・・・・・・・」
私は運転手の言葉に絶句してしまい。落ち着いてから愚痴をこぼす
「間違ってもビジネスパートナーにはなりたくないな・・・」
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