今日も今日とて慌ただしく
第16話 全て遠い幻
俺は眠りに落ち夢を見た。たまに見るんだ、この悪夢を
「ッッ・・・!ッッ!」
雨の降る中、無数に聞こえる足音、足音・・・
「バンッ」
そして聞こえる銃声。俺はその中、雨とコンリートの寒さと痛みに耐えながら進んで行った
「・・・ッッ」
だが間に合わない。間に合った多としても無駄な事、群がる獣を追い払うには俺の手は小さく非力なのだから・・・・
・
・
・
「ううっ・・・」
悪夢はどこで途切れたのか曖昧で、どこまで見たのか思い出そうとしながら俺は目を覚ます
「ん・・・・ふぅ…」
俺は寝ぼけていたのか、いつの間にか右手を何かを掴もうとする様に前に伸ばしていた。改めて自分の手をよく見ると、いくつもの傷痕とタコだらけの大きな手だ
「いつの間にか…こんな大きくなっちまったんだなぁ・・・」
「ブゥンブゥン!…ブゥンブゥン!…ブゥンブゥン」
携帯のバイブ音がやかましく鳴り、俺 ”ビリー・アボット” は、ダルイのを我慢してベットから起きて電話に出た
「はい、もしもし・・・」
「ビリーィ! 仕事だぁ!直ぐに来い!」
「んッ!」
電話に出ると調子外れな喚き声が俺の鼓膜を揺さぶった。その後も構わず相手はやかましく言葉を続けた
「ん!? どうしたビリー!また寝ちまったか!?
オレの返事が無かったので焦ったのか大声を出しやがる。その声に負けじと大声で名前を呼んで答えてやった。こんな電話かけて来るヤツは一人しかいない
「やかましいモーニングコールだな!ジョニー・ヴァーモント!」
「起きたか! 直ぐこっちに来てくれ!増援が必要なんだぁあ!」
「バアアアアァァァン!!」
ジョニーが奇声を上げると電話ごしに爆発音が響いた。嫌がらせか!? いつも二日酔いで弱ってる俺の朝を狙った嫌がらせなのか!? と思いながら俺は我慢しながら通話を続けた
「ジョニー!今の爆発は何だ!?」
「あ、今のは僕ちゃんのダイナマイトだから気にしないでくれ。それより直ぐに来てくれ!牛泥棒が僕ちゃんの牛達を狙ってるぅう!」
「牛泥棒だぁ? 西部劇じゃねぇんだ!ハッパの吸い過ぎで幻覚でも見てんだろ! 水飲んで休め!」
「タンッ、ギュン! ダダダ! ギュンギュン!」
ジョニーがふざけた事を言ってるので俺が休めと言ったとたん、電話から銃弾が飛んでくる音がいくつも聞こえて来たんだがマジでヤバいのか? そう思っているとジョニーが喚きだした
「さっきから撃たれてるんですけどお!これ幻覚ぅうう!? そうか、すぐ寝よう」
言われた通りに直ぐに休もうとしたジョニーを俺は必死に止めた
「待て待て!こっちにも聞こえるからそれ幻覚じゃねえ! わかった!直ぐ行くからな! 場所はどこだ?農場か?」
「今は牛のお散歩中! 僕ちゃんのGPSを追って直ぐに来てくれええ!!」
やかましく言うジョニーに、俺はキレた
「そう言う話なら先にジャスパーに連絡しろマヌケ! んな機材俺は持ってねぇ!」
「だったら直ぐにオースティンの所に行ってよ!同じアパートだろ!」
「やかましい!行ってやるよ! お前を襲う牛泥棒御一行のメンバーに俺が加わってほしくなかったらしばらく黙っとけ!!」
「はい」
ジョニーは短く返事して黙ってくれたが、相変わらず銃声は聞こえてくる
「まったくよ、いい加減にしてほしいぜ」
俺はクローゼットを開いてトレンチコートと武器弾薬を持もって部屋を出ようとした
「おっと、ついでに渡しておくか」
昨日書いた報告書の事を思い出して、ついでに報告書も持ちジャスパーの部屋に向かった
・
・
・
「ガチャッ」
ジャスパーの部屋の前まで行くと、ドアが勝手に開き、タイミングよく中からジャスパーが出て来てくれた。俺はジャスパーに手短に話して報告書を渡す
「お、ビリー、出かけるのか?」
「ああ、これは昨日の仕事の報告書だ」
「サンキュ。ウォークマンでも買ったのかビリー? 音漏れてるぞ」
きっとジャスパーが言ってるのは携帯から漏れる音の事だろう。そう考えてジャスパーの耳元に携帯を近づけた
「ちがう、これだ」
「ん?」
「オォォオオオオスティイイイン! GPSをビリーに貸してやってえええぇぇえええぇえ!」
携帯をジャスパーの耳元に近づけたとたん、こっちにも聞こえる音量でジョニーが叫んだ
「うわ!なんだ!?」
「ジョニーだ、襲われてるから助けてほしいんだと。ヤツのGPSの位置情報を教えてくれ」
「相変わらず騒がしい奴だな! 待ってろ」
ジャスパーは自分の携帯を取り出し、いじってしばらくすると、俺の携帯が反応した
「ピン♪」
「これで位置情報はお前の携帯で見れるはずだ。早く行ってやれ」
ジャスパーに言われるまま携帯を確認すると、たしかに地図に位置情報が表示されていた。俺は手短にジャスパーに返事をして走った
「確認した。直ぐに行く」
「俺はしばらくジャレットと保険屋と打ち合わせだから、サポートは期待すんなよー」
走り去る俺に向かって、ジャスパーはそう言って来たので軽く返事し、俺は地下の駐車場へ向かった
「ああ!じゃあな!」
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