第10話 芋虫回収。いざゴミ捨て場へ

 俺 ”ビリー・アボット” はアイザックを倒し女を回収して仕事を終わらせようと下の階に下りる途中


「また地下かめんどくせぇ・・・。ん?」


 何故か地下で縛られていたはずの女が入口でのびていた


「自力で逃げようとして失敗したのか? おーい大丈夫か?」


 女に意識は無かったが、呼吸も脈も正常で問題は無さそうだった


「よし、生きてるな。よいしょ」


 俺は女を担いで車に放り込み、ジャンクヤードに向かった


「ブルルルルゥ・・・」


         ・ 

         ・

         ・

         ・


 俺は目的地にたどり着た、これでようやくひと息つく事が出来る。ジャンクヤード、その名の通りのゴミ捨て場で中央の工場跡の周りをスクラップが囲んでいるような場所だ


「やっとコイツを脱げるぜ・・・」


「ガチャ」


 俺は何時もの様に車を降り、ドラム缶で焚き木してる奴らの場所に行って血で汚れたダスターコートを脱いでドラム缶に放り込んで燃やす。すると焚き木を囲んでいた中の1人が俺に話しかけて来た


「来たなアボット」


「ようトール。水と傷を頼む」


「はいよ」


 トールは返事すると蛇口を捻り、本来ならジャンク部品を洗い流す為のホースの水で俺の身体に着いた汚れを落としてくれる


「ブシャアアアア」


「ぷはぁ!しみるぅ!!」


 俺はボロボロになったシャツを脱いで絞ったのだが、シャツから絞った水も真っ赤に濁っていた。このシャツも燃やしてしまいたいところだったが、水がしみてドラム缶の中に入れると火が消えてしまいそうだから止めた


「キュッ」


 しばらくすると放水が止まり。トールはドラム缶に突っ込んであった火かき棒を手に取り俺に近づくと頭を掻きながら俺の傷を見てぼやく


「今回は酷くやられたな。医者に任せた方が良いんじゃないか?」


「めんどくさい、やってくれ」


「わかったよ・・・」


 トールは渋々と言った感じで俺の傷に熱した比較帽を当て焼き、出血を止めた


「ジュウウ・・・…」


「うっ!んッッ…! 次!」


「毎度よくやるね・・・全く」


「ジュウゥゥゥ…」


 全ての傷の止血が終わり、トールは俺にウイスキーのボトルを差し出した


「ほらよ。支払いはダイナーの親父に払っといてくれ」


「ありがとよ」


 俺は受け取ったボトルの酒を傷口にかけて消毒した後に口にふくんだ


「ごくごく・・・うめぇ!」


「一応これも飲んどけ、抗生物質だ」


「ん?」


 横から手が伸びて誰かが薬を渡してきた。俺は振り向きソイツの顔を確認する


「お疲れさんビリー。守備はどうだ」


 薬を渡してきた人物、ジャスパーは何時ものニヤケ面で立っていた。コイツの気配がイマイチ読めないんだよな。俺は車まで歩きながら喋り、ボロ車から例の女を引っ張り出した


「女は無事回収、でも腹を怪我してんな」


 引っ張り出した女はまだ気絶していて、ジャスパーはすこし焦りながら抗議して来た


「おいおい!ビジネスクラス普通に運べって言ったろ」


「俺の靴はこんなに小さくねぇよ。たぶん逃げようとした所をやられたんだろうな」


 俺が女の腹を指さすと、ジャスパーはそこを見て納得してくれたようだ


「うわ~、靴跡がこんなにくっきりと。痛そッ」


 俺は女を車に戻し、痛そうに身体を身震いさせるジャスパーに話の本題を聞く事にした


「で?コイツ何なんだ?」


「ん?ああ。薬のバイヤーの小娘だよ。小さな製薬会社の所属なんだが」


 毛色が違うと思ったけがこの娘がねぇ、半分カタギってところか? 貧乏な製薬会社が法的にグレーな薬を横流して稼ぐのだけじゃやっていけなくなって、完全に違法なドラックに手を染めるなんてこと良くあるし。でもだから何だ


「・・・そんなの何でわざわざ助けなきゃならないんだよ」


「なんとこの娘、薬のデザインも出来る凄い子ちゃん。アングラなドラック大会で見事一等賞をとったチャンピオンなのだよビリー君!」


「まじかよ・・・」


「んん・・・ん!?」


 女が意識を取り戻した様で、俺達を見て目を見開いた


「ん~~!!?!?」


「あ~待て待て暴れるな」


「シャキン・・・」


 ゆっくりとナイフを出したジャスパーに怯えて女は固まってしまった


「んッ!?」


「今縄を解いてやるからな」


「シュ・・・」


 女の口を塞いでた猿ぐつわがナイフで切られパラリと落ちる。相変わらず良い切れ味だこと。口が自由になり女が喋り始めた


「んっ、ありがとう。・・・アンタたち誰!?」


「まあまあ、落ち着いて。とりあえず残りの縄切ってから話しましょうや、メアリー・ジャレットさん」


「私の名前を知ってる!?」


「こら動かない!」


 ジャスパーは動くなとは言いながらもテキパキと縛ってる縄をスパスパ切って、改めて彼女に目の高さを合わせてこう言った


「さぁて、俺は名はジャスパー、ジャスパー・オースティン、仕事の仲介業をやってる。で、お前さん助け出したのがそこの大男のビリーだ」


「ビリー・アボットだ」


 酒を飲みながら俺が挨拶すると、女はしばらく首を捻った後、大声を出してこっちを指さしてきた


「どうも・・・ってその声あの時の殺人鬼!」


「誰が殺人鬼だ」


 俺達の会話を無視してジャスパーがさえぎる様に話に割り込んで来た


「さて自己紹介も済んだことだし、商談を始めようか」

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