第9話 脱出の芋虫ゲーム

 どうしてこうなってしまったのか・・・自分でもよく分からない


「ここで大人しくしてな」


ん~ん~ううん!縄を解きなさいよ、チンピラ!


 私 ”メアリー・ジャレット” は縛られ地下室に閉じ込められていた。猿ぐつわまで噛まされて


「ん~・・・」


 そう、確か私は薬物の取引の為に挨拶の為に顔を出しにここに来たはず。なのに何で縛られる事態になったの? 初めは奴らも友好的だったのに・・・意味わかんない。もしかして上司にハメられた? 


「アイザック!言われた通り女を縛っといたぜ!」


「おう!見張り付きで奥のヤリ部屋に放り込んどけ。じゃあ行くぞアヴィー!ヴァイオレット!」


「「あいよ!」」


 リーダーのアイザックがそう言って、側近の二人を連れ上に上がって行った


「オラ来い!」


 私は男に引っ張られて奥の部屋に放り込まれた


「んん~!」

   「ドサッ」 


 生臭いベットに私は放り込まれて銃を突き付けられた。見張りの男がニヤついて独り言を言っている


「まったく、やれない上にシラフでいろとか、たまったもんじゃないぜ」


「・・・・・・」


 何もできない私は、あくびをしながら銃を向けている男を睨んでしばらく経ち


               ・

               ・

               ・


「ふぁ~~・・・…、んん?」


「むぐ?」


 1時間くらいたった頃だったか。ドア越しでも響いていた音楽が消え、代わりに何か物騒な音が聞こえて来た


「タン、タン、タン・・・」


     「タン、タン・・・」


「何だ!カチコミか!?」


 見張りの男は銃を握り、何かぶつくさ言いながら出口の方へ向かって行った


「ちょうど退屈してたとこだ。俺達にケンカ売った事を後悔させ・・・・、あ」


 出口に立った男何故かそのまま固まってしまった。どうしたんだろう?


「やべぇ…、シラフなのに見えちゃいけないもんが見える・・・ああ!」


 男は急に大声話出して部屋を飛び出してしまった。私の見張りは?


「バタン!」


「待て!何テメエらだけで助かろうとしてんだ・・・・・うぐぅ…チキショウ」


 勢い良く閉められた扉越しに男が殺られた気配を直感で感じて、私はつい叫んでしまった


ン~~!ン~~~!!なにぃ!どうしたのー!


「ドガン!」


 急にその扉が蹴破られ、見るからに不審な男が部屋に入って来た。その男の見た目はもう・・・


んん!?んぐぅ~!!!なに!?この殺人鬼はー!!!


 血まみれのコートを着た大柄の男で、その手にも返り血の付いた銃が・・・血の付き方から察するに、今さっきグリップで殴り殺して来たばかりだったのだろう。新鮮な血が滴っている。そんなスプラッター映画から飛び出したような男がこちらに銃を向けてたまま、何故か固まっている


「どうしよう・・・・」


 そうこの男は一言呟いた。私を殺すか迷ってるの? こうなればイチかバチかでアイコンタクトを! 目で訴え掛かれば引いてくれるかもしれない! 死んだ母親の面影でも妹でもいいから、そんな感じのこと思い出して早く映画の中に帰ってぇ~!


「ん~ッッ」


 男は私の目を見て何か考えてる様だった。効いてる!まさか効いてる!? なんでもやってみる物ね。アハハハ・・・・と思っていたら男が一言ぼやきながら銃を向けて来た


「商売女か…」


 しまった調子に乗って媚び売り過ぎた!? 娼婦やビッチなんて真っ先に殺される配役じゃないですかやだぁ~~~!!!


んんッッ~!!待ってぇ!!


 私の願いだ通じたのか男は銃を下げてくれた。男は独り言を言いながら懐から何かを取り出したのだが、携帯の画面を見て固まってしまった


「一応確認してみるか・・・あ、・・・・・・5分前の連絡かよ・・・」


 そして直ぐ、上の階からクラクションのような音が聞こえて来た


「ファアアン…ファァアン…」


「クラクションを鳴らしやがって、誘ってるのか?」


 男は上を見て不敵に笑っていた。どういう事?


んん??なに??


 「ビビッてないなら見逃すわけにはいかないな・・・受けてたつぜ」


 そう男は言って部屋から出て行ってしまった。助かった? いや、殺さないなら縄を解いてよ!!


「ん~~~ツ!!!《待ってぇぇい!!!》」


 私を無視して本当に居なくなってしまってた・・・。何しに来たのよ


「んッ!」


 こうしちゃいられないと思い。私は縛られたままベットから降り、芋虫の様に床を這って進んで開けっ放しのドアから部屋を出た


「んんぅ!?」


 部屋を出たそこもあの男にも引けを取らないぐらい、スプラッターな血みどろの光景だった。私は何か縄を切れるものは無いか辺りを見渡すと、床に落ちた斧の頭を見つけた


「ん!ん!」


 私は斧の頭の有る場所まで這って、後ろに縛られた手を必死に動かし、指で斧の頭をつまんで縄を切ろうと・・・


「ツルッ」


   摘まんで・・・


        「ツルリ」

       

           切ろうと・・・


               「・・・ッッツル、カラン」

 

 ダメだわ、指の力じゃ重くて摘まめない。どうしよう・・・・そうだ! 周りの死体のポケットからナイフを見つければ良いんだわ! チンピラんなんだし誰か持ってるでしょ。なんて考えていたらどこからかうめき声がした


「ううっ・・・」


 まだ生きてる人居るぅう!? ヤバイ! 見つかる前に脱出しないと! そう思い必死に地下から上へあがる為の階段を這って進んだ


「ん!んうん!!」


 登り切った・・・後は出口まで進んでしまえば。っと考え休んでいると


「ドガッン!!」


 何かが壁を突き破り目の前を通り過ぎて行った


「ブルルルルゥゥウン!」

         「ドガ、ドゴン!バキッ!!・・・・」


 今のバイクよね…しかも何か引きずって無かった? アレってひょっとして・・・


「ドガッン!!」

     「あぁ!クソ痛てぇ!」


 再び壁を突き破って出て来たので、今度は冷静に見る事が出来た。引きずられていたのはあの血みどろコート男だった


「カッカッカッカッカッカッ…!」


 バイクが上に向かう気配がする。今のウチに出口に! このチャンスを逃すかと、死体と瓦礫の中を必死に這った!もう必死に!


「ん~!」


 着いた!出口までたどり着いた! 外に出ようとしたのもつかの間


「ゴカアァン!」


 もの凄い音と共に空からバイクが落ちて来た


んん、っがん~~!?なんで空からバイクが!?

         

 もの凄い光景だったも知れないけど動揺してる場合じゃない!と考えそれでも私は前に進もうとした


「タタタタン!タタタタタタタァン!タタタァン!」


「ドーン!」


 突然の銃撃でバイクは爆発した。これは流石に止まらざる負えない。上から銃で狙ってるかも知れないし


「ん・・・・・・う?」


 もうどうしていいのか分からず固まっていると、何者かが燃え盛るバイクを飛び越えこちらに走って来た


「あの血まみれブギーマンぶっ殺ろっしゃぁぁぁぁぁあああ!!」

                           「グキン!」


 その走って来た女性、アヴィーって名前だっけ? まあその人に思いっきり踏みつけられてしまった


「うっ!うう・・・」


 女の腹を踏みつけるなんて最低ね。それとも相手も女なんだから問題なし? そんな事を考えていると、痛みと共に意識が遠のいていった・・・・


「ッ・・・・ッ・・・」


 沈んだ意識の中、何故か私はチェーンソウを持った木こりがマシンガンを乱射して暴れる夢だった

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