第5話 荒猪(マッド・ホッグ)アヴィー

 俺 ”ビリー・アボット” は挑発して来たチンピラ共のリーダー格の奴らを潰すため、装備を整え階段を上がった


「カッ、カッ、カッ…」


「ブルルププン、ブルル・・・」


 ゆっくりと階段を上がる俺の足音と上に居るヤツのバイクのエンジン音が、様子をうかがいながらゆっくりと近づいて


「カッ!」


「ブゥン!」


 階段を上り切る前にチンピラの死体を投げて囮にした。チンピラは麻薬ドラックのせいで痩せていたのでとても軽く投げやすくよく飛ぶ


「んッ!?」


 相手の女は突然飛んできた人型物体に動揺し、手に持った短機関銃サブマシンカンでそのチンピラを撃ち落とそうとした


「タタタタタタン!」


 撃った死体バラバラになり返り血を浴びて顔をしかめる女に、俺は拾った二挺の銃を撃ちながら物陰になる場所まで移動した


「タン!タン!タン!」

    「タン!タン!タン!」


 だが女な直ぐに反応しバイクを発進させて何処かへ走り去ってしまっう


「くそッ!」


「ブルルルルゥゥウン!」


 走り去る女を見て俺はすこし油断してしまった。よく耳をすますとドカドカと何かが物を壊している音がする


「逃げたのか? ・・・んん?」


「…・・・ドガ、ドゴン!バキッ!!」


 そしてその音は段々大きくなり俺に近づいて来た


「…マズい!!」


 直感的に俺は大きく前へ跳んで身を伏せた。同時に俺が立っていた場所の壁を突き破ってさっきの女のバイクが現れる


「ドガッン!!」


「外したか…あ、居た」


「このッアマ!」


 俺と目が合うなり、女はサブマシンガンを撃ちながら再び壁を突き抜け走り去っていった


「タタタタタタタァン!」


「あ、チキショウめぇ!」


「タンタン!」

     「タンタタン!」


 俺は地面を横に転がりながら銃撃を躱し、壁の向こうに消える女の乗ったバイクを銃で撃ち返しながら改めて確認した。前輪の前にはプロテクターが付いていて、ライトも金網で守られている。そのライトの上には搭乗者を破片から守る為の覗き穴が空いた大きな鋼鉄製のシールドが付いてた


「壁を突き破る為にハナッから改造してたってか!? 妙チクリンな玩具バイクに乗りやがって!」


 俺が立ち上がると、どこからか壁を突き破って女が現れ、俺に向かって走って来る


「おおっと!」


 バイクに轢かれまいと身を引き躱し、女はすれ違った瞬間何かを振りかぶる


「ぐっ!?」


 次の瞬間、俺の肩に痛みが走って引きずられた


「がぁあ!」


「ちょっとデートしようか」


 俺の肩にはフックの様な物が突き刺さっていた。そう言えば聞いたことある、バイク同士での格闘戦では刃物はあまり使われない、刃物では相手の身体に武器が食い込んで絡め取られてしまうからだそうだ。だからバットや鉄パイプ等の打撃武器が好まるだと・・・


「放しやがれ!」


「いやよ♡」


 ・・・だが逆の発想で、時には長い柄の先に鉤状の物が付いた武器ですれ違いざまに刺して引きずり落とすヤツも居るとか、彼女はそのタイプだったみたいだ


「ドガッ!ガタン!」


 などと考えてる中に俺はビルの中を壁をぶち破りながら引き回されて、身体のあちこちに物がぶつかる


「あぁ!クソ痛てぇ!」


「タン!タン!」


 俺はなんとか体勢を整えながら女に向かって銃を発砲したが当たることはなく


「この!ちょこまかとッ、痛てててててぇ!」


 バイクはそのまま階段を上って、段差がガンガンと俺の身体にぶつかる


「カッカッカッカッカッカッ…!」


「キイィィイン!」


 階段を上り切ったところでバイクが大きく曲がった。前輪が見える程に


「ここだ!」


 俺はバイクの前輪に向かって拳銃を投げてタイヤのホイールに絡ませようとした


「カランッガッ」

     「タン!」


「きゃッ!」


 銃は絡まなかったがホイールに弾かれて暴発。女は予想もしなかった位置から顔の側に弾丸が飛んできた事でバランスを崩し転倒。結果オーライである


「うおお!?」


 俺もフックが刺さったまま放り出され壁に叩きつけられたわけだが

 

        「ドン!」


 肩に刺さったフックを抜いて立ち上がり俺は女に近づいた


「っっ…ッ、全く、派手に壊しやがって。報酬が減ったらどうする気だ。くっ!」


 抜いたフックをよーく見ると、どこかで見覚えがあるのに気づく


「このフック…港で漁師が魚を引くのに使ってる奴か?」


「この・・・デクノ棒がッ」


「黙ってろマグロ女」


      「タン!タンタン!」


 倒れてる女を撃って仕留めようとしたら


「ブルルルルゥ!」


 女は素早くバイクを起こして、こちらにウィリー走行して突撃して来た。放った銃弾がバイクに弾かれてしまう


「カン!カン!」


「なんて往生際が悪りぃ!!」


 振り下ろされるバイクの前輪を後ろに大きく引いて躱し、女の頭をフックで潰そうとしたが彼女は奇声を上げ


「りゃあ!」


 前輪を支点にしてバイクの尻を持ち上げながら回転させ、回し蹴りの様に高速で回転する後輪をこちらに叩きつけて来やがった


「ギィィィィィィアァッァァアン!!」


 フックでどうにか後輪の一撃を防いでバイクを持ち上げる


「このッ!」


「放しな!!」


 女はバイクを掴む俺に蹴りを入れて来た


「よっと」


 俺を蹴る為に身を乗り出して不安定になった所を狙ってバイクを下ろすと、俺をすり潰す為に高速回転したタイヤのせいでバイクは壁に向かって勢いよく走り出した


「ぎゃあ!?」


  「ゴカアァン!」


 バイクは壁を突き破り、女は外に向かって落ちて行った


「ふん、マヌケめ!・・・・しまった!」


 もう決着がついたと一瞬安心したがここは二階だ、まだあの女は生きてる可能性がある。経験上あの手の輩はこりる事が無いので後々絶対面倒な事になる


「何かないか!? えっと、ああ有った!!」


 俺は女が使っていた安物のサブマシンガンが地面に転がっているのを見つけて、それを手に取り壁に空いた穴に向かった。一応相手が反撃して来る事を想定して慎重に下を覗く


「居た!」


 彼女のバイクが目に入り、案の定生きていた女が地面を這っていたので持ってるサブマシンガンを全弾撃ち込んだ


「タタタタン!タタタタタタタァン!タタタァン!」


「ドーン!」


 バイクは爆発、女の死体は見れなかったがこれ以上の追撃は出来ない。まだ二人残っているのだから


「最悪のデートコースだったぜ!!ああクソッ! 残りの奴はどこだ」


「ブルルルル・・・」


 耳をすますと上からバイクのエンジン音が微かに聞こえる


「そこか!」


「ポイッ」


 俺はサブマシンガンを外へ投げ捨て上に向かった

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