第14話


 旅団の新拠点は転生者たちの自己防衛の為の要塞でもあった。

 街道から外れ周囲を森で囲われ、堀が建物の周囲を囲っている。


 旅団全員の殺害予告、しかも今夜。

 その凶報は過去の暴露によって恐慌状態になっていた団員達をむしろ奮い立たせた。テイラー団長は落ち着かぬ団員たちに激を飛ばし、出入り口の封鎖と屋敷内の捜索を命じた。

 出入り口を封鎖し鎧戸を閉めた。これだけで屋敷は籠城可能な砦となる。また内部からの脱出も困難になる。

 その後屋敷内の捜索が始まる。二人一組で隅々まで探り、殺害予告の写真を貼った犯人を探す。

 普段ならロウリィとコンビを組むケヴィンであったが、お互いにその気はなくクレリックのヘンドウとコンビを組んだ。

 ケヴィンは役職としては軽戦士、陽動錯乱索敵が仕事であるため要領は心得ている。一部屋ずつクリアリングしていき、その後ろを要領を得ない僧侶がついて回る。

 「でもおかしいと思わないか?全員がそろってた部屋で、誰にも気づかれずに写真を貼るなんて」

 ヘンドウはその事が気になって仕方がない。たとえ不可視の魔法を使ったとしても、貼っている所で気づかれそうなものであると。

 「全員が油断してて酒も飲んでた。それに壁なんて誰も見ていなかった。13人が14人でも気づかなかったかもしれない」

 ケヴィンは根拠のない返しをする。全員が自分の過去を突きつけられるという事態におののき、写真を貼った人物の正体に関しては関心が薄くなっていた。

 魔術師が最有力。あんな神業みたいなことが普通の盗賊や奇術師ができるとは思えない。

 「姿を消すとか、もしくは俺たちを同時に意識を失わせる魔法とか…」

 自分の旅団の魔法使いに心当たりを聞いておかなければならない。もっともそのあたりはすでに団長がやっている可能性が高い。室内のチェックをしながらケヴィンは想像を巡らす。

 「あ~我が神カイズルスよ、我ら転生者を守り給え~」

 クレリックのヘンドウの言葉は祈りではなくただの命乞いであったが、それを聞いてケヴィンはため息を付いた。

 「あんた、また神様変えたのか?」

 「ああ、前のは効きが悪かったからな。今度のは前よかキクぜ」

 この破戒僧、しょっちゅう信仰する神を変えているのだ。旅団の生命線であるクレリックがコロコロと宗旨替えをするなんてことは普通は許されないのだが、祈る神を変えても結果に変化がないということで大目に見られている。

 「神様変えても通用する神聖魔法ってなんなんだよ。信仰心とかどうなってんだ」

 「俺の信仰心は常に不動なんだよ。祈ってる方向が違うだけだ」

 担当範囲の捜索が終わった。成果はなかった。

 みなが集合しているリビングに戻りながら、ヘンドウがやや真面目な声で聞いてきた。

 「お前、ロウリィの前世の写真見たか?」

 「いや、すぐ隠されたから…」

 「そっか、まあ本人が見られたくないんだったら、見てやらないってのが男なのかもしれないな」

 明らかにヘンドウは彼女の写真を見た様子で、それを踏まえての忠告なようだった。

 秘密があり、その答えが写真として存在している。自分はその答えを見たいという誘惑に勝てるだろうかと、ケヴィンは思った。

 彼が懐にしまっている彼の写真は、他のみなの写真に比べて明らかに軽かった。

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