6#寒立ちする二頭のカモシカ

 吹雪の中、倒れて凍死寸前状態だったカモシカのマウシイを救ったのは、牝のカモシカだった。


 マウシイは鼻の穴をパンパンに膨らませた。余りのその牝カモシカが美しさに見とれた。


 「貴方はだあれ?」


 「ぼ・・・ぼくは『マウシイ』で・・・す・・・」


 「『マウシイ』・・・いい名前ね。あたしは『ミミカ』というの。よろしくね。」


 「ミミカさん・・・こちらこそよ・・・ろ・・・しく。」


  マウシイは緊張の余り、声が震えていた。


 二頭のカモシカは見つめあったまま立っていた。


 そのカモシカを激しい吹雪を覆い隠した。


 寒立ちした同士のカモシカのうち、マウシイの鼻の穴がピクピクとした。


 ミミカはそれを見てぷっと吹き出した。


 ミミカは笑った。マウシイもつられて笑った。二頭は腹を抱えて笑った。



 

 マウシイは聞いてみた。


 「そこに大きなフワフワした赤い実が飛んでなかった?」




  ミミカは答えた。




 「赤い実って風船のこと?」




 「ふ・う・せ・ん??」

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