5#カモシカ、風船に乗って・・・

 「ここはどこだろう?」


 カモシカのマウシイはむくっと起き上がった。


 空を見ると柔らかい幻想的な雲。そこにカラフルな木の実ー風船ーらしき物が浮かんでいる。


 ・・・きれいだなぁ・・・


マウシイはうっとりと飛んでいく無数の風船に見とれてた。




 ぽわぽわ・・・ふわふわ・・・




 カモシカのマウシイはいい気持ちになって思い切り深呼吸した。


 すると、マウシイの口から赤い玉?が現れわれた。カモシカのマウシイは息を吐くとその赤い玉は大きくなり、さらに大きく息を吐くと赤い玉は大きく大きく膨らんでいった。


 カモシカのマウシイはほっぺたと鼻の穴をパンパンにして体中の空気を絞り出すように思いっ切り息をその玉・・・(ゴム風船だった!)に吹き込んだ。


 いつの間にか赤い玉はカモシカのマウシイの体より何十倍も大きくなっていた。


 マウシイの息で巨大になった玉はふわりと浮かび上がった。


 カモシカのマウシイはとっさの出来事だったので、玉(風船)の吹き口をくわえた状態のまま、玉にしがみついた。


 空中に浮かぶカモシカのマウシイを乗せた赤い大きな玉・・・いや風船。マウシイはほっぺたを膨らませたまま、あたりを見るとカラフルな玉(風船)が一緒にいっぱい浮かんでいた。


 ・・・とても気持ちいい・・・まるで天国だ・・・




 やがて下には清らかな大河が流れているのを見た。


 ・・・大河の向かいがわの河川敷にはお母さんが・・・マウシイがまだ幼かったころ目の前で林道で車に跳ねられて死んだお母さんが・・・


 おかあさ~ん!僕だよ~!!今すぐここにいくよ~!!


 カモシカのマウシイはいつの間にか巨大な風船玉の吹き口から口を離してしまっていた。


 すると、吹き口から激しい暖かい突風が飛び出した。そしてどこからか声がする・・・




 「ねえ、起きて!凍え死んじゃうよ!!」




 カモシカのマウシイはハッ!と我に帰り飛び起きると、他のカモシカの暖かい鼻息。雌のカモシカだった。


 彼女が来なければ、マウシイは凍死していたかもしれない。

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