バレナの魔術講座Ⅰ

 『それじゃあ、まず、魔術ってもんは何なのかを教えてやる。

 『魔術ってのはオレが生きている―勿論、肉体と魂が一緒のときだ―以前からあって、オレたちの生活に深く密接している当たり前の技術だった。現代でいうスマートフォンみたいなものだな。

『ん? 何でそんな昔からあるのに現代にはないのかって。知らねーよ、そんなもん。色々あったんだろ、俺が眠っている間に。え?バレナさんは一千年前から魂の状態でいるのにどうして魔術がなくなった経緯を知らないのかだって、そこらへんは複雑だからいつか説明する。

 『で、その魔術を発見し、基本技術を体系化したと言われる人物がソロモンっていう奴だ。

『ソロモンの正体については詳しくはよく分かってねぇんだ。

『ソロモンには弟子たちが多くいたんだが誰一人としてソロモンの本当の姿を見たことが無いらしく、魔術を教えたり、弟子たちに会う際は動物や鳥の姿が教えていたらしいんだ。何、ソロモンは歴史上に存在する?ふむふむ……。同姓同名の別人じゃねぇのそいつ

『ソロモンの死後、十数人いた弟子たちは各地へ魔術を教えるため散らばっていった

 『その中の4人が今のヨーロッパの地に赴き、それぞれ独自の流派を作った。その4人の中の一人がオレの師匠のマーリンだ。

 『他の3人は誰かって? それはまた暇なときにでも話してやるよ。全部話したらつまらないだろ。まぁ、楽しみにしてな。

 『それで、魔術ってのはマギアとIMAGINE回路を使って、イメージを……。え? 何を言っているのちんぷんかんだって? 

 『まず、マギアの説明についてだ。

 『マギアってのは簡単に言えばあらゆる人間に流れている生命エネルギーのことだ。今は目に見えたり肌で感じたりできないから信じらねーのかもしれねぇけど、IMAGINE回路が目覚めればはっきりとわかるぜ。

 『マギアは音とか光みたいに波の動きをしていて、波の高さや間隔もあって、人それぞれ違う。それ故にマギアは個人差があって、それが魔術の性質を大きく分ける。これも詳しいことを話していると日が暮れぬならぬ日が昇っちまうから今回は割愛な。いずれ話す日がくるかもしれないな。

 『次にIMAGINE回路についてだ。

 『IMAGINE回路は脳の神経系の一種でマギアを頭の中のイメージへと具現化させるための言わばコンバーター的なものだ。なに?なんでバレナさんがコンバーターなんて近代的なものを知っているのかって。それはだな………まぁ、色々あったんだよ。

 『だが9割くらいの人間は生を享受してから死ぬまでの間にIMAGINE回路を使わない。なぜなら別段使わなくても生活に支障がないからだ。生きることに必要ないものは退化していく。進化の鉄則だな。それでも人間の尾骨のように旧世代の痕跡としてわずかながら残っている。そして、尾骨と違うのはIMAGINE回路は訓練すればより活性化する。そのためには、IMAGINE回路を発現していなければいけないのだけど、オレが知ってるのは二通りだ。

 『一つは先天的に発現している場合。これは残りの1割の選ばれた人間だけしかいない。体に入った感じ、カイは違ったな。ちなみにオレは元々IMAGINE回路が開いていたこっちのタイプだ。さて、もう一つは他の人間の魔術によって誘発されて発現する場合だ。ここで注意しなければいけないのは魔術を受けたもの全員がIMAGINE回路を発現しないってことだ。才能のない奴はいくら受けたって発現しない。オレもそんな奴らを何人も見てきた。

 『さて、今までの話をまとめると頭の中のイメージをマギアをIMAGINE回路で変換し、具現化することが魔術だ。

 『具体的な例を挙げると、カイが頭の中で手から炎を出すことをイメージしたら手から炎が出るって感じだ。

 『以上が魔術の説明だ。分かったろ?』 

 

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