第13話 お披露目

「あの、それがルナさんの杖?何ですか?」


 グリーンウルフを狩り、何事もなく移動再開とはいかなかった。

 まあ、自分でも杖?ってなるような杖だしなぁ。皆、俺の身の丈の倍くらいあるこの杖に興味津々らしい。


「ええ、そうです。これが私の杖。【世杖旗せいじょうき・エンドロンド】です」


 エンドロンドの形状は杖というよりかは旗に近い。

 大まかな見た目は杖の先端に繊細に魔法陣が描かれた布地が取り付けたというものだ。振れば刺繍がバタバタと旗のように音を出す。

 細かな性能は詳細情報を開きながらの方が説明しやすいだろう。



<世杖旗・エンドロンド>

・特殊な木材を使用して作られた杖と製作者の技術の粋が込められた旗布を組み合わせた杖旗。月と死の魔力を帯びている。未完成品。(世界樹の苗木を使って作られた杖と製作者の技術の粋が込められた旗布を組み合わせた杖旗。死と月の祝福を受けている。未完成の神器。)

・   作(ルナルティア・ノートネス作)

・手の込んだ刺繍が施された杖旗。全体の絶妙なバランスが保たれている奇跡の作品。しかし、未だ変化の加わる余地がある未完成品。(世界に一つの神聖なる世界樹の苗木を武器に加工するという想像を絶する狂気から生まれた産物。しかし、世界樹の生命力は凄まじく、武器になっても未だに生き続け成長している。そして、持ち主の死と月の魔力の影響を受け変質している。

 管理神、世界神、創造神、破壊神に認められた神器。死、月、統治、存在、創造、破壊の6つを統べる。)

 所有者以外に使用することはできない。

・万能武器 専用武器

所有者:ルナルティア・ノートネス(ルナルティア・ノートネス=水無月 佳夜)

特殊効果:(【不壊】)【再生】【成長】【魔力生成】【即死】(【死滅】)【月重】(【歳月】【統治】【存在】【創造】【破壊】)

レア度:10(15)

品質:SS(-)



 ()の部分は見せられない為、情報を弄って隠蔽した文章だ。見せられる場所や少し改変すれば見せられる場所はそのまま出している。ちなみにこの隠蔽にはシュレベレスも噛んでいるのでまず見破られることはない。流石に管理神としてこれを世に出すのはまずいらしい。

 というか世界樹の苗木を武器に加工したの凄い怒られたんだよな……。いや、丁度いい木材を探している時に目録にこんなのがあったら使っちゃうだろ……


 特殊効果の諸々は完成とともに発現した特殊効果だ。狙って付けたわけじゃないので特殊効果をつける方法は不明である。何となく想像がつかないでもないが、調べても権限が足りてなかったので未だ予測の域を出ない。

 尚、各特殊効果の一覧はこんな感じだ。



【不壊】……決して壊れる事はない。

【再生】……破損、損耗しても元通りになる。

【成長】……武器そのものが成長する。

【魔力生成】……魔力を生成する。

【即死】……死属性の魔力を貯め込み、攻撃と共に対象に流し込み相手を死に至らしめる。

【死滅】……殺害した対象を滅ぼす。

【月重】……杖を起点に重力を変化させる事ができる。

【歳月】……指定した対象の時を進める。

【統治】……統べる。

【存在】……存在する。

【創造】……創造する。

【破壊】……破壊する。



 最後4つの説明が酷過ぎるのは諦めて置いておくとして、注目すべきは初めの四つだろう。

 【不壊】【再生】【成長】【魔力生成】この四つは恐らく世界樹の持つ能力だ。特に嬉しいのは【不壊】だな。壊れないというのはそれだけで強い。

 中央の四つはやろうと思えば自分の魔力でも可能だが、杖を通すことで効率が数十倍に跳ね上がった。これも嬉しい誤算である。


「伝説級武器……あの、ルナさんこんなもの何処で手に入れたんですか?」


 さて、如何答えようか。

 ……誰かに貰ったとか言っても嘘くさいしなぁ。

 じゃあ、拾ったとか?……論外だな。気がついたらそこにあった。っぽいけどなんか違う気がする。作った。うん、それじゃわざわざ隠した意味がなくなるな。落ちてきた。……拾ったと同レベルだな。


「はぁ……よくわかりませんが気づけばそこにあったんですよ」

「えっと……」

「だから、聞かれても答えようがないんですよね……」


 うん、これが一番誤魔化すのに向いているという結論に至った。

 説明しようのないものを説明する方法はないからな。これなら俺が相当なボロを出さない限りあらゆる角度から誤魔化しがきく。


「それに見ていてくださいね」


 俺はエンドロンドをかなりの力を込めて投擲する。

 するとエンドロンドは地面と水平に飛び、正面の木を粉砕し突き抜けた。木製の杖が一方的に同じ気を破壊する様は奇妙の一言に尽きる。

 そのままエンドロンドはクルクルと回転しながら俺の前に戻ってきて止まった。


「この様に手放そうとしても戻ってくるんですよ。封印や結界を施した箱に入れても突き破って戻ってきますし……。幸い、私のアイテムボックスには素直に入ってくれるので何とかなっていますが、物騒で街中では取り出せないというのが本当の所なんですよ」

「あはは……確かにちょっとアレを見た後ではその意見に頷くしかないですね……」


 そう言ってシャルル君は幹を粉砕された木を引き攣った表情で見つめる。


 うーん、それにしても≪詐欺術≫スキルが発動しているのかペラペラと口から作り話が出る。

 ちなみに戻ってきた本当の理由は【月重】の特殊効果で重力場を発動して思うように動かしたというものである。

 まあ、それはそれとして、


「そろそろ、行きましょうか。早めに薬草を見つけてしまいましょう」


 俺はぴょんとエンドロンドに乗る。

 そこに【月重】を発動すれば空飛ぶ杖旗の出来上がりである。

 ふわふわとあたりを漂って動作確認を済ませれば移動再開である。


「ちゃんと歩いたらどうなんですの!」


 ヴァイオレットが怒鳴っていたが、魔力の回復量的に問題ないという事や俺の歩幅的移動速度の問題を解決できるという事や奇襲に素早く対応できる等々。何かと理由を付けてその意見はねじ伏せた。魔力が厳しくなれば歩くと俺が言うまでキャンキャン煩かったな……。

 尚、俺の魔力は山を一つ消し飛ばすくらいの大魔法を20連程撃たなければ尽きることはない。また、もし尽きるようなことがあっても10分程すればまた大魔法を1、2発撃てるようになる。つまり何が言いたいかというと、多少浮いている程度でなくなるほど俺の魔力は少なくないので歩く気は毛頭無いという事だ。


 さて、しばらくふわふわと浮きながら森の中を進むと薬草の群生地を見つけた。

 ただ、近くにはまたグリーンウルフがいるようだ。


「あちら側にまたグリーンウルフの群がいますね。数は恐らく5体、先程よりも少ないです」

「気づかれてそうですか?」


 シャルル君の質問を受けて光点の様子を確認する。動いてはいないようだ。ただ、気配を探るに一体が気を張り続けているように感じる。


「……そうですね。まだ、気づかれてはいません。ただ一匹、警戒色の強い個体がいるので派手な行動をとればいつ気づかれてもおかしくないですね」

「そうなんですか。皆は如何したい?倒す?それとも避けていく?」


 シャルル君が全員を見回しながら聞いてきた。

 俺的には目的の薬草をとるためにも殲滅一択なんだけどな。まあ、目的の薬草があるのは伝えてないから回避も選択肢になるよね。

 こうなると気配察知が得意と思わせたのが悔やまれる。薬草があるってことが分かる理由がないと下手に教えられないからなぁ。


「倒すに決まってますわ!」

「うーん、如何しよう」

「……リーダーに任せる」


 皆の意見は多少だけど殲滅の方向に向いてる様だ。

 これなら俺が殲滅に票を入れれば倒す方向に決まるかな?


「そうですね、私は……」


 思わず舌打ちしそうになるのをこらえる。表情にも出て……ないな。

 俺は状況が多少面倒になった苛立ちを内心に押し込め、状況の再確認に努める。

 如何やらヴァイオレットが倒すといったときに飛んだ殺気で警戒していた敵が気付いたようだ。


「ヴォン!ファウ!ヴォン!!」

「……気づかれましたね。グリーンウルフが来ます。皆さん構えて下さい」


 ……ココは気持ちを切り替えよう。

 そう、わざわざ説得する手間が省けたと思おう。

 うん、そうだ。先手をとれなくてもこの程度の敵なら多分シャルル君一人で何とかなるし。


 ……ただ、この戦闘が終わったら多少ヴァイオレットに嫌味を言ってもいいよね?パーティーを危険にさらした罰は必要だよね?うん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る