第6話 (魔法)実技の時間
「おし、全員揃ってるな。そいじゃ、授業を始めんぞー」
さて、授業が始まった訳だが……何故か皆、頭上に‶?"マークを浮かべている。
「皆さん如何したのでしょう?」
小声で横のシャロちゃんに問いかけてみる。
すると、彼女も俺と同じこそこそ声で理由を教えてくれた。
「えっとね。何時もの先生と違うんだ」
「成程。そういう事でしたか」
理由は不明だが、すぐに教師本人から聞けるだろう。
と思っていたが、先に少し離れた場所で手が上がり教師に質問が上がった。
「あの~、なんでグレゴリオ先生じゃないんですかー」
「む、そうかグレゴリオ先生から聞いていなかったんだな。グレゴリオ先生は魔法実技の『魔法』担当だ。そして、この俺が『実技』の担当と言う訳だ」
……。
え、説明終わり!?こんな説明じゃ実際に戦闘したことある奴以外理解できないだろ!?
「えっと……」
ほら、質問した子困っちゃってんじゃん。
はぁ、仕方ない……。
「恐らく先生が仰ろうとしたのは、『魔法使いが敵と戦闘する際に最低限身を守る為の術を学ばせる』という事ではないでしょうか?」
「うむ、それだ!」
つまるところ近接戦闘だろう。
接敵されたらそこで終わり。何て事だとお話にならないからな。
「では、授業を始めるぞ!まずはとりあえず倉庫だ!」
そう言って教師はずんずん進んでいく。
そして、少ししたところでこちらを振り返った。……ついて来いって事か?
「ついて来いって事じゃないのか?」
「かな?」
「うん、たぶん」
誰かの言葉を皮切りに、みんなも恐る恐る立ち上がって教師の後に続く。
教師について少し歩いた所にその倉庫はあった。中を覗くと大量武器が種類ごとに固めて並べられていた。
「この中から好きなモノを選んでいいぞ!」
「おい、お前如何する?」
「うーん、やっぱ剣かなぁ」
「私、片手にライブラ持ってるから短剣位しか持てないんだよね……」
「私は普通に杖でいいかな」
「僕もやっぱり剣かなぁ」
「ワタクシは……鞭と剣にしますわ」
クラスメイトの会話を聞くに、皆かなりベターな選択をした様だ。
それと最後に聴こえて来たヴァイオレットは確か蛇腹剣を主武器に据えていた筈……ああ、置いてなかったのか。それで近しい剣と鞭を選んだ訳ね。
「そうですね……では、私は
「多いよ!?そんなの戦闘中にどうやって使うのさ!」
ふむ、シャロちゃんに全力のツッコミを入れられてしまった。
でもシャロちゃんや俺に戦闘中武器を入れ替える手段があるのを忘れたのかね?
「こうやってですよ≪
手にあった武器達は全て闇に収納された。
いや、正確にはインベントリにしまっただけなんだけどね。
「あ、そっか。≪アイテムボックス≫」
「使う時は――こうやって武器を取り出せばすぐさま戦えますからね。下手をすれば、それこそ武器を鞘などから抜き放つよりも楽かもしれませんよ」
実演しながら剣で≪抜刀術≫の真似事をする。
ちなみに刀は無かった。その刀だが一応、使えない事も無い。
まあ、本職には敵わないけどな。
「よーし、全員選んだな!戻るぞ!」
みんなも教師の短文に慣れた様で何となく意味を読み取った。コレは恐らく体育館に戻るという意味なのだろう(そのまんま)。
そうして元気な教師の声に引かれて全員、最初の体育館に戻るのだった。
◆ ◇ ◆
さて、何故か体育館の中央で俺とシャルル君は対峙していた。
――両者共に武器を構えて。
「ふぅ、こんな時だけど初めまして。僕はシャルル・メルガノスです。よろしくお願いしますルナルティアさん」
「初めましてシャルルさん。私はルナルティア・ノートネスと申します。どうぞお見知りおきを」
略式の
さて、そろそろ何故こうなったのかの解説をしようと思う。
といっても、まあ。話はそこまで複雑な事では無い。全ては体育館に戻って来てから教師に告げられたこの一言に尽きる。
『では、これから実力の近しい者どうしで模擬戦を行う!とりあえず、メルガノス!ルナルティア!前に出ろ!』
ちなみに俺が名でシャルル君が姓呼びなのは、うちの学校にお姉様という同姓の存在がいて紛らわしいからである。
『お前達!よく、見ておけよ!』
相変わらずの短文だが、何となく理解はできる。恐らく俺達で模擬戦をするという話だ。他の生徒は見学なのだろう。
それにしても……ヴァイオレットの奴、凄い目で睨み付けて来るな……。そんなに俺に実力で負けていると思われるのが嫌なのか……
実際の話、ヴァイオレットと俺の戦いだと勝負にならないだろうに。ああ、成程なんとなくわかったぞ。
俺のステータスは段階分けして何重にも隠蔽している。ヴァイオレットは恐らく初期の方で躓いて相当低いステータスに見えたのだろう。
まあ、軽く戦っているところを見せれば実力の差は自ずと理解できるだろ。……出来るよな?
さて、そんな訳で今に至る。
「それでは模擬戦を始める。模擬戦中は結界を張るので遠慮はいらんぞ!それでは、両者構え!」
教師がボタンを押すと見学の生徒の少し前位に透き通った結界が現れた。とりあえず<管理神の祝福>発動。
……ほー、ヘルネスの≪次元魔法≫を保存した魔道具か。これなら簡単には割れなさそうだな。
よし、折角だし今日は戦闘ログを流しながら戦うか。転生者相手だと何が飛んできてもおかしくないからな。
「それでは、――始め!!」
――敵対象にスキル≪剣術・Ⅱ≫が自動発動。
――パッシブ≪剣の心得≫が発動しました。
――自身のスキル≪槍術・Ⅱ≫が自動発動。
――パッシブ≪槍の心得≫が発動しました。
――自身のスキル≪格闘術・Ⅲ≫が自動発動。
――パッシブ≪格闘の心得≫が発動しました。
――パッシブ≪武術の心得≫≪戦闘の心得≫が発動しました。
――自身のスキル≪決闘劇・Ⅲ≫が自動発動。
――敵対象の意識が自身に集中しました。
――自身の全ステータスに+50の補正が入ります。
――自身のスキル≪狂想劇・Ⅳ≫が自動発動。
――対象とのレベル差、存在差、階級差により、自身の全ステータスに+479の補正が入ります。
戦闘開始と共に各々のスキルが自動発動する。というか殆ど俺のスキルだな。
それにしても、思いの外≪狂想劇≫の効果が低いな。ゴブリンなんかだと2,000くらい上がるんだがな。
だが、まあコレでシャルル君とのステータス差はかなり縮まったな。お、シャルル君が早速何か仕掛けてくる気みたいだな。
「我、【傲慢】なる者成り」
――敵対象がスキル≪傲慢なる者・Ⅳ≫を発動しました。レベル差に応じて敵対象が強化、自身が弱体化します。
――敵対象の全ステータスが1.01倍になります。
――Cancel!対象とのレベル差が-78の為、弱体化の無効化に成功しました。
と、【傲慢の大罪者】のスキルか。ん?というかシャルル君は【強欲の大罪者】だよな?あとで、詳しく調べてみるか。
効果は自分より弱い対象の弱体化兼自身の強化か。うーん、俺みたいな敵には使えない雑魚狩り向きな能力だな。
「風よ、我に疾く駆ける力を≪エア・スカーラ≫」
――自身がスキル≪風魔法・Ⅰ≫を発動。魔法≪エア・スカーラ≫を使用しました。
――一定時間、自身の行動速度がほんの少し上昇します。
――一定時間、自身の重量がほんの少し軽量化されます。
――一定時間、≪風属性≫に微量の耐性を得ました。
相手が1.01倍強化されたのでこちらも支援魔法で自身を強化してみた。ちなみに今のは風属性の下級魔法だ。一般の効果はスピードを3%程強化するというモノだ。ちなみに俺が使うと7%程上昇する。重量は4㎏軽減。耐性の方は5%軽減といった所か。
いつもならもっと強堅なエンチャントを施すところだが今日は様々な理由を加味して抑えめの抑えめな≪エア・スカーラ≫にしておいた。
「さて、まずは手始めに≪メイルスピア≫です」
――自身がスキル≪槍術・Ⅱ≫を発動。武技≪メイルスピア≫を使用しました。
≪メイルスピア≫は突きの貫通力をあげるスキルだ。
あたれば幾ら模擬槍でもそこそこの怪我を負うだろう。さぁ、シャルル君。どう防ぐ?
「≪パリィ≫!」
――敵対象がスキル≪盾術・Ⅱ≫を発動。武技≪パリィ≫を使用しました。
ほー、おっと、思わず感心してしまった。
俺も受け流しが得意なタイプだが、その俺から見て綺麗とはとても言えないが上手な受け流しだった。
「ふふ。では、次はこれです。≪三段突き≫」
――自身がスキル≪槍術・Ⅱ≫を発動。武技≪三段突き≫を使用しました。
文字通り上・中・下段を突く武技だ。
読み易いが、単純故に避けにくい武技なのだが……如何する?
「≪ジャンプ≫!!」
――敵対象がスキル≪体術・Ⅰ≫を発動。武技≪ジャンプ≫を使用しました。
ふむ、跳躍距離上昇のジャンプを使ってのバックステップか。
だが、それは俺相手には悪手だな。
俺は素早くインベントリから弓を取り出す。
――自身のスキル≪弓術・Ⅱ≫が自動発動。
――パッシブ≪弓の心得≫が発動しました。
「くらいなさい。≪デッドアロー≫」
――自身がスキル≪弓術・Ⅱ≫を発動。連鎖武技≪デッドアロー≫を使用しました。
――自身のスキル≪槍術・Ⅱ≫が連鎖発動。武技連鎖!≪メイルスピア≫が発動しました。
≪デッドアロー≫は武器を弓で放つスキルだ。
<管理神の書斎>で下働きしてる時に必要になって覚えたんだよなぁ。懐かしい。
さて、そんな≪デッドアロー≫威力は通常の矢の数十倍だ。それに連鎖発動した≪メイルスピア≫によって貫通力も強化されている。
「さぁ。どう対処します?」
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