第19話 エピローグ
薄っすらと意識が浮上する。
「んっ……ぁ~……あ?」
朝起きると家のベットの中でした。
そして、昨日
あの後の事は……あれ?思い出すと悪寒が……。
た、確か何処まで≪狂歌乱舞≫を使えるか試してみようと安直に考えて使った結果、殆どの思考を飲まれてしまって……。あー、なんか自分の事をルナちゃんとか言ってた気もする。
……これが冗談が冗談で無くなる恐怖ですか。
ただ、ステータスの状態異常欄を見るに昨日の≪狂歌乱舞≫の影響は完全に抜けているみたいですね。よかったぁ。
あ、取り敢えず煩いアラームを止めますか。
「さて……そろそろ事態を受け止めましょうか」
朝起きたら左目が真っ暗で真っ黒でした。
……何を言っているのか分からないかもしれませんが事実です。
洗面所に行って鏡を覗いてみると真黒な左目が映ってるんですよー。やだー。
……御免ホントに待って、マジで何も見えないんですけど。
平時なら邪眼開放!きりっ☆とかするかもしれないですけど、流石に理解不能な現状でそんな余裕はないんです。
「ん?邪眼?魔眼?」
あれ、もしかして魔眼に開眼したとか?
……いやー、まさかね。いや、でも。ねぇ?
俺に限ってそんなチート主人公みたいなネタはねぇ?
いや、だって俺ってゲームでいう所の基礎ステ高いからコイツ使っときゃ取り敢えず勝つる。って言われるタイプの人間じゃないですかー。
通常攻撃の連打コンボで勝てるDPS高い系?っていうんだっけ?
ただ、必殺技は無難にダメージ与える系ので特殊効果は地味なののみとかにしてバランスとってるアレ。
え?≪狂歌乱舞≫に≪幻想劇場≫?
≪幻想劇場≫はあくまで舞台創るだけだし、≪狂歌乱舞≫は狂化のデメリットがあるからバランス的には問題ない筈。身体能力はそこまで基礎ステ高くないどころか低いしね。うん。
強化してようやく他と渡り合えるぐらいだから問題無い。
そんな感じで内心誰かも分からない人物に言い訳をしながら俺はしれっと左目に魔力を集める。
その瞬間、左目の視界が広がった。
「わっ黒っ」
その瞳の中には通常の視界とその中を漂っている黒い靄の様なモノが視えた。
「何だコレ?」
一瞬俺の魔力かと思ったがそうでもなさそうだ。
この靄は俺には操れないし触れる事も出来ない。
ただ、身体に纏わりついているだけ。
うーむ……。
困った時はアレだな。
<管理神の祝福>発動!
……?
あれ?発動しない?
えっと、念のためにもう一回。
……うん、効いてないなコレ。
効果の大元になってそうな左目になら効くか?
<
・ユニークスキル
・レベル1
・Ⅴランクスキル
・死の気配――死気や死相を視る事が出来る。他にも死に関する事なら様々な事を視る事できる。
また、逆に死の呪いをかける事なども可能。その場合は呪いの濃さにより魔力を消費する。
・暗闇でも視界を確保できる。夜の気配を感じ取る事が出来る。
また、逆に自身の気配を闇に溶かす事も可能。その場合は紛わすクオリティーにより魔力を消費する。
うわー。
もう一度言おう。うわぁー。
「もろチートですね。コレは」
何という暗殺特化の能力。
こんなもの押し付けて誰を殺せというのだろうか……。
俺とミラの敵ですね。分かります。
さて、説明を見るに俺の周りに纏わりついているこれが死気か?
死相ではないと思いたいが……。
それにしても死の気配ねぇ。なんか俺真っ黒なんですけど。
昨日というか今朝ドランを様々な方法で殺しては生き返らせて殺しては……と無限ループ的な何かを行ってたからかな?何度も心臓やら頭やら何やらを踏み潰したり抉ったりしたからか手と足は特に真っ黒だし……。
どうにか出来ないものですかね?
解説を見るにこの靄を
おっ。
ああ、成程。
こういう時の聖属性か。
「聖光よ、我を癒し清め給え。≪リフレッシュ≫」
死気消しに疲労回復そして眠気覚ましとまさに一挙三得だ。
それにしても、
「ふぅ、さっぱりしました。そう言えば昨日は風呂に入らずにそのままベットへ倒れ込んだんでしたっけ?」
そうでした。
狂化した所為で好戦的になってたからか魔力消費をあまり考えずに行動してたんですよね。
おかげで最後は残存魔力が一割くらいに陥るという。
アレには本気で焦りました……ってあれ?
今俺、素で丁寧語使ってたな。
これが世に聞く生活習慣病……こわっ。
うん、絶対違うな。
はぁ……朝から阿保らし。
さっさと食堂に行って食事でも摂るかと溜息を吐いた。
取り敢えず、魔眼について当分の間は適当に幻術で誤魔化しながら過ごす事にする。
まあ、バレたとしてもユニークスキルが一つ増えたと言えばいいだけだしな。事実だし。
もう既に四つ持ってるんだ。そこに一つ増えた所で対して変わらないだろう。
俺は再び諦観混じりの溜息を吐くのだった。
◆ ◇ ◆
……風邪をひきました。
残念な事に風邪は状態異常回復の魔法を使ってもあまり効果がありません。
理由を<
だからといって自分に攻撃魔法を撃つのは論外。
結果ずっと横になっているしかないのが現在の状況です。
「うぅ、暇です」
本が読みたい、花壇や畑の手入れがしたい、料理作りたい、裁縫したい……。
「≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュア≫≪キュあ゛ヅ――いひゃい……」
俺は寝転んだ体勢のまま無心で≪キュア≫を唱え続ける。
途中で頬の内側を噛んだが≪ヒール≫ですぐに治した。口内炎になったら痛いからね。
そして肝心の風邪だが一時的にマシにはなった。
そう一時的に、だ。数時間程すると倦怠感がぶり返してくる。い、一向に治らない。
仕方なく、本当に仕方なく、もう一度寝ようかと思った時にその人物は来た。
――がちゃり
『ちわーっす!旦那、遊びに来まし――ひぶらっ!?』
普段は完全に隠蔽されている扉から出てきたのはヘルネスだった。
初めて会った日から何度か
『ノックしろと何度も言ってるだろうが!!』
『ちょ、痛っ。氷の礫飛ばさないでくださいっす!』
『うるせぇ!!こちとら風邪ひいてんだ!!』
『いた、ちょっ、まっ、いて』
非常に残念な事に最近は、ヘルネスがアホな事をする→俺がキレて氷の礫を飛ばす→ヘルネスが部屋の中を逃げ回るのやり取りがパターン化している気がする。ちっとも嬉しくない。
『はぁ、それで今日は如何した?また執務から逃げ出して来たのか?』
『いやぁ、あはは......』
『笑って誤魔化してんじゃねぇ。もう百発いっとくか?』
『ストップ、ストーーップ!落ち着いて下さいっす旦那!今日は式典の相談と依頼持って来たんすよ』
『なら、さっさとそう言え!氷よ≪アイスバレット≫!』
『のわぁ!』
ちなみにだが氷の礫の威力はかなり抑えられている。
ヘルネスなら精々軽い切り傷か青痣くらいしかできないだろう。
最もそれはヘルネスの事を思ってでは無く、そのラインが俺の壁や床に当たる直前で魔法を無効化出来る威力の限界だからなのだが。まあ余談である。
『式典ねぇ。やっぱり出ないと駄目か?』
式典というのは新たな特務部隊入りを果たした俺を祝う為の式典らしい。
全く持って面倒な話である。出来るだけ式の期間を短くして4日とは……長い、長過ぎる。
『いや、強制はしないっすけど出来れば出て欲しいっすね。ウチの面子的にも』
『はぁ……面倒ですね』
『あはは、お願いしますよ本気で』
4日我慢するだけでそこそこの権力が得られると思えば悪くは無い。どころか有益なのだが、やはり面倒なモノは面倒なのだ。
『で、もう一つの依頼っていうのは?』
『ちょっと待ってくださいねー』
ヘルネスが魔法を唱えて空間に割れ目を作る。
ヘルネスの独自属性は次元属性。転移やら空間切断なんかが使えるらしい。非常に羨ましい能力だ。
そしてこいつはそれを使って亜空間を作り出す事に成功したらしい。そこに物を収納できるのだと。こいつ謂わく、≪アイテムボックス≫の魔法版で≪マジックボックス≫らしい。
『おっ。あった。これっすね』
ヘルネスが取り出したのは数枚が重なった依頼用紙。
俺はベットから体を起こして用紙を受け取る。
『護衛依頼か。対象は……ああ成程。そういう事か。確かにコレは俺向け――いえ、私向けの依頼ですね」
「ああ、受けてくれるか?」
「そうですね……土・日休日を除いて一月1,000万エルですか。いいですよ。受けても」
思った以上に悪くない給金だな。
これなら学業の合間だけでいいし受けても損は無いだろう。
「そうか!2,000万までなら出すつもりだったがそれで受けてくれるか!」
「……確認ですがここの必要な物の代金はヘルネスが受け持つは事実ですよね?」
「うむ」
「なら、大丈夫ですよ。あ、学年が上がって拘束時間が増える場合は賃金の上乗せをお願いしますね」
「まあ、その為の一年契約だからな」
「ではこれで」
俺はササッと依頼書にサインを書き入れる。
さてと、思わぬ大金が入ったしミラに何かプレゼントでも買おうかな♪
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