Xmas記念番外編

メリクリ~

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 これはルナが王都に行く年の12月24日つまりはクリスマスイブのお話である。

 当時のルナの年齢は7歳、ミラは4歳だ。

 ちなみにルナの誕生日が10月12日で、ミラの誕生日が3月4日だ。その為、当時は3歳差が開いている状態になっている。ただ学園の学年で言うと二年差になる。

 まあ、そこは置いておくとして、今、街中をそんな7歳児と4歳児が二人で歩いていた。

 そう、二人で・・・である。


 あんな事件があってからまだ二ヶ月と経っていないのにである。

 許可が下りた理由は単純で、四つのユニークスキルを得たルナが試し打ちと言って屋敷内の兵士を半壊させたからだ。フローリア以外のほぼ全員を打ちのめしたルナに文句を言える人物などそうは居らず、下町での二人歩きは案外あっさりと許可された。

 何処かの親馬鹿な父親が可愛い可愛い娘(ミラ限定)の為に隠密に長けた護衛をつけたりもしていたが、そんな目論見は広範囲探知とマップ機能の組み合わせを使うルナに一瞬で暴かれ、ものの数分で隠蔽を使用したルナに撒かれるのだった。


 そして平然と護衛を撒いた二人はアクセサリーショップでいちゃついていた。もっとも傍目には貴族の姉妹が仲良くちょっとスキンシップ多めの買い物をしているようにしか見えないだろう。


「ねぇねぇ、お姉様!これ何て如何かな?ピンクの真珠のブレスレット!」

「ん?う~ん……それ、なんかブレスレットって言うより数珠って感じしない?」

「う、言われてみれば確かにそんな気がしてきたよ……」


 本当に二人だけで屋敷の関係者は一人もいない為、二人の喋り方は随分と崩れたモノだった。ミラなどルナのお姉様呼び以外はほぼ美月の口調である。


 ルナ達はショーケースに入った高級品にはあまり目を向けず、少し安めのコーナーを見て回る。これは所持金の問題――ではなく、ミラの希望によるものだ。

 豪華なモノは如何してもルナの持つ≪細工≫や≪裁縫≫、≪服飾≫スキルで作ったものに見劣りするからだ。それなら、チープなモノを買って思い出としてタンスの奥にしまっておこうという事になったのだ。

 下手に高いモノを買うぐらいなら素材でお金を使いお姉様に良品を作ってもらいますと言うのがミラの言い分である。

 ルナもその意見には賛成なので、アクセサリーショップに来た意義は流行を知れたという事くらいだろう。

 では、服の方もそうなのかというとそうでも無かったりする。


「お姉様、これでまた新しい思い出ができたね!」

「ええ、そうね。はい、ミラこっち来て、ね?」


 お揃いのベル型ペンダントを買った二人はそれを店先でお互いの首に掛け合い、二人して微笑みあう。

 そのまま数秒の時が過ぎ、ミラが満足したであろうタイミングでルナは一歩後ろに下がり、ミラの手を取って次のお店へ向かう。

 次の目的地は二軒先の服飾店だ。


 ココに来た目的は流行ファッションを知る意味合いも大きいが、異世界独特の技術を知る為でもある。そしてなにより女性用下着の問題を解決する為であった。

 そう、ルナの前世は男だ。当然、女性用下着の構造など知る筈がない。というか知っていたら基本ルナ全肯定のミラでも普通に引くだろう。

 ただ、ルナから下着コーナーに向かうのは色々と拙い。ミラからはまず間違いなく白い目で見られるだろう。


 さて、如何したモノかとルナが考え込んでいると、ミラはその間に好さげな服を何着か見つけた様でルナに一声掛けた後、試着室に入って行った。

 ルナは思わぬ形で手に入れたこのチャンスを逃すまいと足早に下着コーナーに向かう。そしてそこでオーソドックスな下着を十種程手に取り、籠に詰めてすぐレジへと向かった。サイズ違いも幾つかある為、店員さんに胡乱気な目で見られたがルナはミラが来る前にと急いで押し通したのだった。

 下着を買い終えたルナがそれらをインベントリにしまうのと、ミラが試着室から出て来るのはほぼ同時だった。それを見たルナは間一髪と冷や汗を流していたのだが、表面上はすまし顔を取り繕ったのだった。あと数秒遅ければ間違いなくミラの玩具にされた事だろう。いろんな形で。


「ミラ如何決まった?」

「はい!こちらの二点に致します!」


 店員さんが見ているので二人共口調はお嬢様言葉だ。

 ルナはさも当然と言わんばかりの表情でミラの選んだ二つの服を眺める。数秒前の焦燥を一切顔に出さない所は演劇部の面目躍如といった所だろうか。

 ミラは数秒前にあったルナの決定的瞬間などつゆ知らず選んだ服をルナに見せびらかすのだった。


 一つは首筋にモコモコのファーが付いたコートだ。色は茶で明るく、ポケットが多い。日本人女性が好みそうな服だ。ド定番の選択にルナは思わず苦笑を浮かべる。まあ、センスが無いよりかは幾分マシだろう。


 もう一つはアッシュグレイのジャケットだ。ミラ曰く部屋着にするらしい。

 暖房が無いこの世界の夜はとても冷える。ノートネス辺境伯爵領はレストノア王国の最北端にあるので尚更だ。断熱材を組み込んだ部屋でもそこそこ冷えるので、大体の家に暖炉がある。

 当然、ルナ達の住む部屋にも暖炉はあるのだが、煤っぽくなって嫌と言うルナの意見によりその暖炉は使われていない。もっとも、ルナが部屋に火属性の魔力を充満させているので部屋はかなり暖かい。

 だから、ミラの言う部屋着とは屋敷内、つまりはトイレや食事等の用事で廊下に出なければならない時の寒気対策だろう。

 余談だが、ルナは当然の如く≪魔装≫を使っている為、外だろうが室内だろうが常にホカホカである。羨ましい。


「帰ったらこの服、色々と改造してくださいねお姉様!」

「ふふ、勿論。そのくらいなら問題ありませんわ。お姉様の技術でミラをあっと言わせてあげます」


 ミラの言う改造とは布で作った造花を縫い付けたりして見栄えを可愛らしくする服飾もそうだが、服の内側に魔法陣を刻んで防御力を上げたりする≪付加術エンチャント≫等も含まれている。


 ルナは早速どんな改造を施すかで頭を悩ませ始める。

 一方でミラはルナのその真剣な表情を見て、頬を赤らめ心内で黄色悲鳴を上げる。

 そして、店員さんはその変なお嬢様二人組を見て盛大に頬を引き攣らせる。早く勤務時間終わらないかなと内心で溜息を吐くのだった。



     ◆ ◇ ◆



 ミラの選んだ二つの服をお買い上げした後、ルナ達は少し遅めの昼食を取る事にした。

 早速相談を始めようとしたルナであったが、あまり外に出ない――正確には出させて貰えない――ミラでは何が食べたいかなどの要望は出せても食事処の話までは出来ない事に気付いた。

 それを含めてミラと話し合った結果、食べ物の要望はミラが、場所はルナが決める事になった。


「で、ミラは何が食べたいの?」

「うーん……やっぱり普段、お家で食べれないモノが良いかな」

「屋敷で食べられないモノですか……」


 ミラの要望を受け取ったルナは早速、脳内で選択肢を上げる。

 ちなみにこの場合の普段食べられない物と言うのは高価な料理を出すお店の事ではない。

 それこそ領主の娘として普段からいいモノを食べている二人からするとそこら辺の屋台で売っている綿菓子でさえ普段は食べられないモノなのだから。

 つまり二人の言う普段食べられない物と言うのは、出来る限り美味しくそれでいて安価で量産が可能なモノの事だ。前世のイメージで言う所の某有名ハンバーガショップや某有名フライドチキンショップなどがそうだ。

 そう考えると以前行ったピザ屋も良いが、この間行った丼ものチェーン店も普段は食べられないモノに当てはまる。

 他にも前回入ろうとしてテーゼに止められたお寿司屋さんなどが浮かぶ。テーゼ曰く生魚を食べてお腹を壊したらどうするんですか!?だそうだ。

 まあ、お腹を壊したという話は聞かないので恐らくテーゼが単純に生魚に苦手意識を抱いただけだろうとルナは睨んでいる。

 あとは、この時期に合わせて鍋だろうか?この間、ボア鍋なるものを食べてみて案外美味しかった事をルナは覚えている。

 案外沢山の選択肢が浮かぶ自分にルナは随分とこの世界に馴染んで来たなと苦笑するのだった。


「ミラ他にも希望はない?」

「折角ならいっぱい食べられるところがいいです!あ、あと温かいモノが食べたいな~」

「成程ね。この季節だし暖かいモノは良いかもね。そうなるとお寿司はアウトかな?温かくないし。

 あとは、量が多めか……うーん、やっぱりお鍋かな?身体温まるし」

「お鍋!いい!それがいい!」


 そんな訳で本日の昼食は鍋に決まったのだった。

 鍋は高価なモノじゃないの?と言うツッコミは厳禁である。本人たちは素で気づいてないので。

 如何やら二人の感性はすっかりお嬢様のモノとなってしまっている様だ。



     ◆ ◇ ◆



「ありがとうございましたー!」


 鍋料理専門店『アカシア』から出てきた二人はそれはもう見て分かるぐらいにお腹一杯だった。文字通りのお腹一杯で可愛らしいポッコリお腹が非常に目につく。

 幼女体形なルナなんかは特に酷い。


「「うぅ……」」


 居た堪れなくなった二人はその場から足早に逃げ出すのだった。




 さて、そんな二人の午後の予定だが、実はもうすでにする事事態は決まっていたりする。

 では一体何をするかと言うと、いつもお世話になっている人達に逆ドッキリならぬ逆クリスマスプレゼントをするつもりなのだ。

 ちなみに既に大半の人達へのプレゼント内容は決定しており、残すところはセリル唯一人である。


 セリルが最後になった理由は単純で何をプレゼントするかが定まらなかったのだ。

 フローリアなら戦闘関連という事でルナ特製の軍服を、政務に勤しむガレン――ルナ達の父親。現ノートネス伯爵――なら疲労回復と毒物耐性、症状緩和の効果を着けたペンダントを、といった形で案外簡単に決まったのだが、セリルは魔法師として武官に務めていながら執務の手伝いを熟す文官でもある。

 どっち付かずという訳では無く、何方にも深く精通している分なおたちが悪い。

 冗談抜きで彼女がいないと回らなくなる部署が幾つかあるのだから、まったくもって笑えない話である。

 それこそ、彼女がノートネス家の土台を担っているといっても過言ではないのだ。


 そんな数多くの事を熟す彼女だからこそ、何をプレゼントすれば真に喜ばれるのかがまったくもって浮かばないのだ。

 武官として考えれば魔法使用の媒体となる杖が喜ばれるだろう。

 だが、しかしである。文官として考えれば杖など貰っても困るだけどあろう。なら羽ペンにでもすればいいのかと言えばそうでもない。

 非常に悩ましい所である。


 ちなみにだが、ガレンと同じものをプレゼントするのは駄目だ。

 そうなるとフローリアが一人はぶられてしまう。折角、三人で仲良くやっていけているのだからわざわざ良好な関係を破壊しにいく必要は無いのだ。

 ただ、そんな事をぐるぐると考え続けていると結局、また最初の何をプレゼントすればいいのか定まらない。に逆戻りしてしまうのだ。


「はぁ……ミラ、何かいい案ない?」

「うっ、それが思いつかないからこうして街に出てるんだよね?」

「まぁ、そうなりますよねぇ~」


 適当な返事を返しているルナだが、コレでもかなり真剣に悩んでいる。そろそろ決めないと本当に時間が無い。


「うーん、いっそマジックペンでも作ってみたら如何かな?」

「でも、それじゃ、文官の方しかカバーできませんよね?」

「だからさ……」


 その案を聞いたルナはミラの面白い発想に笑みを浮かべる。


「いいですね。それにしましょう」

「やったー!」

「じゃあ、早速部屋に戻って【カミルミ】で作ってみましょう!私が無効に言っている間の見張りはお願いしますよ?」

「らじゃー!」


 色々と世間一般からかけ離れた二人であったが、この時ばかりは年相応の顔をしていたのだった。



     ◆  ◇  ◆



 夜7時、普段通りの夕食の時間だ。

 普段と違うのは並べられた料理がいつもより豪華な事とミラが異様にそわそわしている点か。


「ミラ、料理が気になるのは分かるがそこまで落ち着きがないとはしたなく見えるぞ。もう少しルナを見習ってみたらどうだ?」


 あまりマナーに厳しくないフローリアに注意されるくらいにミラは浮足立っている。

 それを見たルナは、これは全員揃ったらすぐに渡した方がよさそうだと内心で立てていた予定を変更する。


 ガタンという大きな音共に食堂の扉が開かれ、二人の人物が入室してくる。

 ようやくミラお待ちかね人物達が来たようだ。


「すまん遅くなった」

「ごめんなさいね」


 ご存知の通りセリルとガレンである。

 如何やらつい先程まで執務室で今後の計画を練っていた様だ。


 二人は一言詫びを入れるとすぐに席に着く。

 わざわざ長い謝罪をするよりも少しでも早く食事が始められるようにする事の方が真の償いになるという考えのようだ。確かに正論である。


「長い前置きはいらないな。

 今日は年に一度の聖夜だ。皆で美味い食事を堪能しよう。では、乾杯!」


 手早く食前の挨拶を済ませたガレンに続いて皆グラスを持ち上げる。

 そうしてノートネス家の食事が始ま――


「すこし、お待ちください」


――ろうたものの、タイミングを見計らっていたルナにそれは止められた。


「む、なんだルティア」


 このまま食事が始められると思っていたガレンはご立腹である。


「さっ、ミラも立って。ね?」

「はい」


 二人の少女は椅子から降りて親達の元へ向かう。

 そして、


「「お父様、そしてお母様方。私達からのクリスマスプレゼントです!どうぞ、お受け取り下さい!」」


 息ぴったりの可愛らしい演出で差し出されたのは一人一つで計三つの贈り物プレゼント

 一人一人手渡されていくその様子に親馬鹿な母親達はメロメロである。もう一方の駄目親父は目を細めている。ミラから手渡しされたのが相当嬉しかったようだ。

 ルナはその様子を見てアイドルの握手会で感極まるファンか!とかなり遠回しなツッコミを入れていた。


「「どうぞ、開けてみてください!」」

「ふふ、うむ」

「さて、何が入っているのか」

「ええ、楽しみですね」


 まず最初に贈箱プレゼントボックスを開けたのはフローリアだ。

 中から出てきた服を広げて確認する。


「おお、変わったデザインだが……凄いなコレは。肌触りも良いし、物を入れる場所も多い。何より格好いいな」


 まるで男の子の様にはしゃぐフローリアを見てルナは微笑む。

 全て一から作り上げた力作を母親に褒めて貰えて内心では大喜びなのだ。


 次に箱を開けたのはガレン。

 そこには緻密な魔法陣の刻まれたペンダントが入っている。


「ん?底にまだ何か入っているのか?」


 箱を置く時に鳴った音でまだ何かが入っている事に気付いた様だ。

 底に入れられていたのはペンダントの効果解説書だった。ちなみに書いたのはミラである。

 大半の事はルナ頼みだった為、ミラが自分にも出来る事を探し、その結果考え付いたのがこの効果解説書だ。

 ミラはレベルを上げた<管理神の祝福>でペンダントの効果を読み取り、それを他の人物にも見える様、紙に書き上げたのだ。


「ふむ、疲労回復に毒物耐性、後は疲労しにくくなる症状緩和の効果が付いたペンダントか。それに隠蔽処理も施されていると……よくもまあ、こんな高価なモノを用意出来たな……」


 あまりの効果の高さにガレンも呆れ気味である。

 世間一般ではアクセサリー装備の効果は良くて三つ、最上級で五つと言われている。

 そんな中、隠蔽を含めれば効果四つのアクセサリーだ。それこそお小遣いで渡されている30万エルでは絶対に買う事は出来ない代物である。

 ガレンが呆れるのも仕方が無い事であろう。


 余談だが、この解説書はフローリアの箱にも入っていたりする。


 さて、残りは悩みの種であったセリルへのプレゼントのみだ。

 セリルは可愛らしくラッピングされた結び目を解き、中身を覗き込む。

 そこには……


「ペン?」


 少しカラフルな羽ペンが入っていた。

 その下にはその羽ペンの使い方を記した解説書も用意されている。


「ええっと、なになに。

 1、この羽ペンに微量の魔力を通します」


 セリルは解説書に書かれた通りペンに微量の魔力を流し込んでみる。

 するとペンが淡く光りだした。


「え?うーん、これでいいのかしら?」


 少し悩みながらも二つ目の指示に従う事にする。


「2、ペンが光ったら使用可能の合図です。

 3、使用可能状態で握りグリップ部分にあるボタンを押しながらペンを動かせば文字を書く事が出来ます。是非、この用紙の裏に試し書きしてみてください、か」


 セリルは何度かペンを光らせてみたあと、意を決してこの羽ペンを使ってみる事した。


「まあ、ホントにインクが出たわ」


 セリルは驚きながら何度も試し書きをする。如何やらお気に召した様だ。

 ルナはほっと息を吐きながらセリルに解説書の続きを読むよう勧める。


「えっと、『マジックペンシル』応用編?」


 『マジックペンシル』というのはルナの作った羽ペンの名称だ。特に捻りは無い。


「まず、羽を左方向に捻ります」


 指示を読みセリルは解説書通り羽を掴み折り曲げた。


「わわ、違いますセリルお母様!」


 それを見て慌てたのはルナである。

 折角、機構に作ったのに壊されては堪らない。

 いろんなタイプのボールペンを持っている人ならばわかると思うが、羽を捻ると言うのは羽を折るという意味では無く、ペンの上部を回転させるという意味だ。

 クリップ部分を捻ってペン先を出すタイプと言えば分かり易いだろうか?


 まあ、そんな訳で焦ったルナはちゃんとセリルに正しい使用法を伝え元の位置に戻った。


「これでいいのかしら?で次はまた魔力を……あら?」


 先程と同量の魔力を込めてもペンが光らない。

 セリルはおかしな減少に首を傾げつつ、少しずつ魔力を込める量を増やしていく。

 するとペンは再び光を取り戻した。


「充填が完了したら先程と同じ要領で次は空中に文字を書いてみましょう」


 セリルは「空中?」とまたもや首を傾げながつつ指示通り先程の要領で空中に文字を書いてみた。するとどうだろう。


「あら?あらあらあら?ホントに書けるのね」


 ルナが以前、空中に魔法陣を描いていたのを見たミラが考えた応用的な使い方だ。

 普通の人は空中に魔力を定着させられない為、補助具としてルナが作り上げたのがこの羽ペンなのだ。


「最後に呪文を空中に綴ってみてください。それを一本線で繋げば魔法が発動します……って、ええ!?」


 前代未聞の技術である。

 正確には『マジックペンシル』内部に記録された魔法陣を呪文を綴る事で読みだして使う技術なのだが、それは今は置いておく事にする。


 セリルは驚きで固まりながらも好奇心でほぼ無意識に空中へと手を滑らせた。


『光球よ我が意に従い照らし出せ≪ライト≫』


 全ての文字を書き終えたセリルは一気に横棒線を引く。

 すると空中の文字が集まり光の球を形どった。


「嘘、本当に発動しちゃった」


 解説書通り魔法が発動する。

 それを見ていた使用人やガレン、フローリアまでもが見事に驚愕で固まった。

 ルナとミラはその様子を見て悪戯っ子の笑みを浮かべハイタッチをかますのだった。


「「やったー!!」」

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