第12話 ただいま談笑中 2
「あー、今のはちょっと強力な契約だ」
「……えっ?それだけっすか?」
「ああ」
……。
地味な沈黙が続く。
「いやいや、それだけな訳無いですよね!?」
「ちっ」
「露骨に舌打ちしないで下さいよぉ!?」
さて、何と説明したモノか……
≪神術語≫なんかの神関係のスキルは口にするの自体が憚られるしな……。
「取り敢えずだな、今のは特殊なスキルを使った契約魔法だ。特殊スキルについては俺から詳しい事を話すのは無理だと先に言っておく。
んで、肝心の内容だが神でも仏でも世界でも何でもいいから、とにかく誓いを立てさせる事でそれをその対象に認識させて見届け人になってもらう。そして、その誓いが破られればその見届け人が代償の取り立てに向かってくれるという素敵システムだ。OK?
ちなみに今回の見届け人はこの世界の管理神と世界そのものだから。まず間違いなく、やらかせば死刑執行だな」
「うわ、何それ物騒。というか何処がちょっとだ!滅茶苦茶強力な奴じゃねぇか!」
まあ、そうは言っても守れば何の問題も無い誓約だからな。
そこまで理不尽なモノではない筈。約束を破って死ぬような場合は普通に此奴が悪い。
「誓約内容は大きく二つ。
俺の勢力と敵対しない。俺の正体なんかの秘密を洩らさない。だ。まあ、特段問題になる様なモノは無いだろ?」
「いや、まあ、そうなんすけど……」
「んじゃ、そういう事で」
「えぇ……」
もっとも、俺もそこまで酷く締め付けるつもりは無い。
例を言えば、チームスポーツで紅組と白組に分かれた時に、俺が白、ヘルネスが紅組になったとしよう。それだけで、お前は敵対した。などというつもりは無いという事だ。
流石にそれは酷すぎる。まあ、この場合、やろうと思えばいつでもそれが出来るという状況が大事なのだ。
これで、ある程度の安全は確保できたと内心で安堵のため息を吐く。
「ああ、そうそう。一応、メリットもあるぞ」
「マジッすか!」
「お、おぅ」
コイツ無駄に食いつきいいな。
「で、メリットって何なんすか?薬用シャンプーですか?」
「ぉぃ。じゃなくて、メリットってのは集中すれば俺の勢力の人員が分かるっていうモノなんだが……分かるか?」
「んー、ちょい待ってくださいね~。……あぁ、なんとなくわかるっすね」
そうか、分かるのか。
俺は試しに≪
「お?反応が増えた?」
「如何だ?違いとか分かるか?」
「うーん、違いは分かんないっすね。ただ、旦那の勢力っていう大まかな事しかわかんないっす」
「そうか」
ちなみにだが、俺は<管理神の加護>で<
今やったら、ヘルネスに出来るのがバレるからやらないけど。
「さて、これ以上言える事は無いし、この話はもう終わりでいいか?」
「問題無いですよ~」
軽いな。と、もう何度目かもわからないツッコミを内心で入れる。
これについてはもう諦めた方がいいのかもしれない。突っ込んだら負けだと自分に喝をいれた。
……これで、とりあえずヘルネスと会った時に最低限のやっておきたいと思った事は終えた。
さて、ここからは、少しだけ警戒を解いて、聞きたかったことを幾つか聞いてみるか。
その為にもまずは……
「なら……
――改めまして国王ヘルネス・K・イーヴェル・レストノア様。ここからはコチラの姿にてお相手させて頂きますわ」
≪虚飾の仮面≫を解除する。
この行為はヘルネスに少しは信用しましたよ。というのを見せつける為の行為だ。
約束していたからという事もある。
「……え~っと、もしかして旦那?」
「はい、そうですよ。可愛いらしいでしょう?」
あざとく頬に指をあてて下から上目遣いでヘルネスの顔を見上げる。
「TS転生!!か・ら・の・幼女北之ーーーーーーーーーー!!!」
なんか、「来たこれ!!」の部分がおかしかった気がする。
と言うか狂喜乱舞すんなネット民。あと、幼女言うなし。
「煩い元ニートですわね。踏みますわよ?」
「むほぉーー!!我々の業界ではごほっ!びっ!ぐしゃ……ぶしゅ……」
悪ふざけで脚を振り上げる。的確にハイヒールの踵の尖った部分がヘルネスの腹部を打ち抜いた。
そこから華麗に追撃三連撃を決める。三発目以降は完全に内臓を抉っていた。
倒れたヘルネスが血の池を作り出す。
まあ、こんなので死なれても困るので、仕方無く俺は回復魔法を掛けてあげる事にした。と言うか、ちょっと力加減をミスッ……いや、何でもない。
「聖光よ、癒し給え≪エクストラヒール≫」
「完全復活!じゃなくて!痛いじゃないっすか!?殺す気っすか!?」
「いや、別に。死んだらそん時はそん時だ」
「間違いないっす!その理不尽さは旦那っす!」
もっとも、ココは俺の創り出した幻想空間。
それこそやりたい放題できる世界だ。最悪死んでも『事象改変』を使って、『死んだ事を無かった事』にすれば復活させられる。魔力を大量に消費するのであまりやりたい行為ではないけどな。
それに、流石に現実で国王を殺そうとは思わない。やり直しが利くと分かっているからこそこの様なふざけた行為が出来るのだ。
「と言う訳でこの姿が私の転生した姿となっております。可愛らしい見た目に惑わされると痛い目を見る事になりますよ」
そう言ってウィンクする。
最近、躊躇無くこういう行動がとれる様になってきた自分に少し寒気がした。
「くそっ、あざといけど可愛い!そして、痛い目ならもうすでに見た所っす」
「ねぇ、おじちゃんはルナのいたずら許してくれるよね?」
「ごふっ、気管からさっきの血が……で、でも可愛いからおじちゃん許しちゃうっす」
むっ?
このロリペド野郎なかなかやるな。
って、俺は何を真剣に考察してるんだか……
「まっ、冗談はこの位にして。
フローリア・T・ノートネスの娘、ルナルティア・ノートネスです。初めましてお爺様。どうぞお見知りおきを」
「こほん。ヘルネス・K・イーヴェル・レストノアだ。
……っておい。ちょっと待って。フローリアの娘?え、おい、もしかして本当に……孫?」
如何やらようやく気付いたらしい。
そう、なんとフローリアお母様は元王家の人間だったのです!
その所為で俺の≪称号≫に『王家の血筋』や『王の覇気』などと言う物騒なモノが……。この間、遂に≪雷魔法≫まで生えてきたし……
「ですです」
「まじかー……。そうか、俺の孫が転生者かぁ……」
「まあ、あんまりいい気分はしないよな。悪い」
少し苦笑いになってしまう。
誰だって自分の子供や孫が得体の知れないモノだといい気分はしないだろう。
それにヘルネスの場合は自身がそうなだけに転生者と言う言葉の意味をしっかり理解してるからな。
「いや、気にしなくていいっすよ。俺も転生者ですから。何方かと言えば旦那側の人間って事っすよ」
「そうか……。ならいい……
あ。あと、この姿の時はルナでお願いしますね」
「うむ。分かった。なら余もお爺ちゃんで頼む」
「ええ、わかりましたわ。よろしくね、お爺ちゃん!」
二人ともキャラがブレまくっている。
まあ、ワザとなんだけどさ。
「さてと、話す必要がある事はこのくらいでしょうか?」
「あー……うん。そうだな」
「では、もう少し聞きたい事があるので答えて頂いても良いでしょうか?」
「ん、なんだ?」
「まあ、その前にとりあえずお座り下さいな。≪浄化≫」
俺は≪幻想劇場≫で対面にヘルネスの椅子を創り出し、勧める。
ついでに≪浄化≫で少し汚れてしまったヘルネスの服を清めておいた。
「で、飲み物の要望は?」
インベントリからティーセットを出し、お茶請けのお菓子を並べる。
そして、お菓子は当然のように自作である。何とでも合う様に種類は豊富に作ってある。
羊羹、お饅頭、お煎餅、チョコレート、クッキー、チップス、ケーキなどなどの定番物から、少しそれて栗きんとん、バケット、バームクーヘン、ラムネ菓子などなどもある。
あとはガッツリ系でパンケーキやスフレ、カステラ、パンナコッタなんかもある。ああ、そう言えばプリンやゼリーなんかも作ってあったな。
「紅茶を頼む」
「味の要望はございますか?」
「濃い目で後味はスッキリとかあるか?」
「ええ。香りが少し強い品種になりますが宜しいですか?」
「ああ」
取り出した茶葉はピエノクリムと言う品種で、傷の自然治癒と魔力の回復を内側から早める効果がある。
少し黄みがかった紅という見た目だ。紅茶にすると橙色が出る。
俺はそれをヘルネスの前に並べると、自分の分を注ぐ。
俺の茶葉は薔薇に特殊な品種改良を施したモノで、蒼い色の花弁が特徴的な品種である。ちなみにまだ名前は付けていない。
そして、この茶葉の面白い所は常に花弁から冷気を発している点だ。その為、普通の温度より10℃程高いお湯を使う。
ティーカップに青薔薇を入れ、そこにお湯を注ぐ。すると瞬く間に花が崩れお湯に溶け込んだ。
うん、綺麗な青色だ。
「では、頂ましょうか」
「うむ。どれを食べてもいいんだよな?」
「ええ、勿論構いませんよ」
「よっしゃ!じゃあまずは……」
さて、ではそろそろ今日聞きまわる予定だった事を聞いてみますか。
ヘルネス知ってるといいな。
「ねぇ、お爺様」
「――ドランと言う名前をご存じありませんか?」
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