第11話 ただいま談笑中 1
『その前に何で土下座してたか教えてくれないか?』
『ん、ああ、それか……』
俺がその場を切り抜ける策に選んだのは単純明快、話題変更だった。
質問の答えを返すのはもう少し国王の話を聞いてからでも遅くないと思ったからだ。
『俺の≪称号≫に≪王の才覚≫っていうのがあってだな。その≪称号≫に≪王の直感≫っていう機能があるんだよ。効果は自身の国に関わる事に働く直感が鋭くなるっていうモノなんだが……』
何故かそこで言い渋る国王。
『その、だな……。アンタを見た瞬間に『ああコレには絶対に勝てない。国を挙げて総力戦を挑んでも傷一つ程度しか負わせられずに負ける』って直感が働いてな。で、つい下座った』
ついで土下座するのか。軽いな国王。
『いや、気を悪くするなよ。あんたを化物って言いたいわけじゃないんだからな!?別にカッケェとか思ってないからな!?』
何故にツンデレ風?
あと、そのワザとらしい小物臭漂う喋り方はやめろよ……
『はぁ……別に怒らねぇよ。実際戦力的にはそれくらい差があるしな』
『戦力か……実は何処かの国の国王だったり?』
地味に堂々と情報を毟り取ろうとしてるなコイツ。
何と言うか食えないタイプだな。やり難い。
ついポロッと世界管理してますとか言いそうに……ならないな。うん。
『別にそんなんじゃないぞ。まあ、それについては後で考えてから話す』
『んー、そっすか』
『だから、軽いな国王。おい』
『公私混同はしない主義なんで。私事に公務を交えたくないですし』
国王のくせに無駄に気さくだなコイツ。
と言うかこの喋り方がもしかして素なのか?まあ、そこはこれからの付き合いで自ずとわかるか。
それよりも、はぁ……コイツは何て言うか……
『まあ、帰ってから――いや、明後日辺りから本気出します!!』
とか、言いそう。と言うか言ったな。今。
まあ、こんな国王でも一応、業務は真面目にやってるっぽいしな~。
なんだかんだ言って今代の国王は優秀っていう話はよく聞くし、まあ、多分、恐らく、もしかしたら、本当に優秀なのかもしれない。猫を被っている可能性も無きにしも非ずか?
『あっそ』
『旦那も十分に軽いですよね』
『そうか?』
なんか、こいつと話してると疲れるな……
まあ、悪い奴ではないと思う。喰えない奴ではあるけどな。
『はぁ……じゃあ、俺の方の話も少しはするか』
『あ、俺も旦那の話聞きたいっす』
話す内容はまあ適当でいいか。
『の前に……なんで旦那?』
『なんとなく?』
はぁ……。
もう、突っ込むのは止めよう。突っ込むと更に喜びそうでなんかヤダ。
『まず俺の名前だけど夜月 神無って名乗ってる。言い回しで何となくわかったと思うけど偽名な』
『ええっと、本名は?』
『んー。まあ、そっちは気にするな。多分、あとで話す』
『えぇ……』
なんでか知らないがシュレベレスに偽名で通すように言われたんだよな。
前世の本名を出す場合は絶対に広まらない様に口止めしろって言われるくらい念押しされたからな……。流石に初対面の奴に話す事は出来ないな。
『ちなみにそっちは何て名前なんだ?』
『あれ?名乗ってなかったっけ?あー、俺、
『ああ、うん。そっちは知ってるから』
と言うか本名の方も<管理神の祝福>を通して知ってたんだけどな。
じゃあ、何で聞いた?って話だが、分かって無いと思わせる事に意味があったりするからだ。貴族社会なんかは嘘と騙しあいの魔窟だからな。
なんとなく喉が渇いて来た俺は軽く息を吐いた後、緑茶をアイテムボックスから取り出した。
『ちなみに前世ではニートやってました!』
「ごふっ」
俺は突然のカミングアウトに咽た。緑茶を噴出さなかった点については褒めて欲しい。
いや、ステータスに記載されてたから知ってはいたけどさ。
そんな堂々と胸張って言う事かそれ?
と言うか今絶対狙ってやっただろ!?
俺は口の端から垂れる緑茶を袖で拭いながらヘルネスにジト目を向ける。
『あはは、大丈夫すか?』
……こいつ後で絶対に絞める。
『働けニート』
『あはは、今世ではめっちゃ働いてますよー』
『城、抜け出して来たんじゃなかったっけ?』
おいコラ、目逸らしてんじゃねぇよ。
『ま、まあ、その話は置いておくとしまして』
『はぁ……俺との話終わったらちゃんと城帰れよ』
『あいさー!』
やっぱり軽いな。
さてと、そろそろ罠でも仕掛けるかな?
『で、だけど。俺の話をする前に幾つか確認してもいいか?』
『おいっす。何でも聞いてくれて構いませんよー』
『じゃあ、まず国王様は――ああ、めんどいからヘルネスって呼んでもいいか?』
頷きを返す国王。
『とりあえずヘルネスは俺達と敵対するつもりは無いと思ってもいいんだよな?』
『勿論すよ。敵対しても勝ち目無いって俺の直感が言ってますからね』
『国としても?』
『……』
うーん、フローリアお母様の時みたく誓わせて誓約で縛り付けるつもりだったんだけどな。流石に国の不利益になる質問には≪王の直感≫が働くっぽいな。
成程な。ヘルネス単独への誓約なら問題ないが、国が関わると≪王の直感≫で防がれるって事か。
『まあ、それはいいや。じゃあ次の質問。ヘルネス的には俺と敵対する可能性はどのくらいある?ああ、そこまで難しく考えなくてもいいからな』
『そっすね。0.1%未満ってところですかね』
『ちなみにその数値はどうやって出したんだ?』
『いや、何となくで出したんすけど……まあ、何かあれば俺か俺の側近を動かして何とかするつもりなんで、そこら辺は心配しないでも大丈夫っすよ』
ふむ。出来る限り敵対しないっていう考えを変えるつもりは無いみたいだな。
まあ、コチラとしても【カミルミ】から戦力ひっぱってきて総力戦とかしたくもないしな。
『じゃ、結論の確認だが……とりあえず、敵対するつもりは無いって事だな?』
『そっすね』
『誓って?』
『うー……』
うーむ。やはり≪王の直感≫が厄介だな。
『誓ってくれるなら。何かあった時、一回くらいなら戦力として駆けつけても良いが?』
『む……』
あと、一押しって感じかな?
『それに加えて大罪者の事も黙っておくぞ。罪業は怠惰だったっけ?』
『むぅ……と言うか何で知ってるんすか』
『まあ、それは置いといて……。まだ、足りないか?』
図々しく頷くヘルネス。
俺はそれを見て、両手を広げた降参のポーズをとる。
『なら、そうだな……。逆に何が欲しいんだ?』
もう、そろそろ浮かばなくなってきたのでヘルネスに丸投げする事にした。
コイツこんなんでも国王だからモノだけは色々持ってんだよなぁ……。交渉しにくい……。
『うぅ……じゃ、じゃあ前世の名前はいいので現世での名前を教えて欲しいっす!』
『それなら、誓うのか?』
『ああ、もー。それでいいっすよ!分かりましたよ。誓うっす。誓いますよー』
『はい、これで誓約成立だな。じゃ、『我、汝の誓約を結ぶ』。ついでに、惑え≪幻想劇場≫』
神術語で誓句を唱え、誓約としてヘルネスを縛り付ける。
空中から誓いの鎖が這い出て来るのを確認しながら俺は、俺の持つユニークスキルの一つである≪幻想劇場≫を発動する。
≪幻想劇場≫は結構変わったユニークスキルで周囲の空間を捻じ曲げ特異空間を形成するというモノだ。他にも幾つか便利な効果がある。
例えば俺はこの≪幻想劇場≫内でなら魔力を消費して色々なモノが創り出せる。これが≪幻想劇場≫の効果の一つだ。もっとも、創り出したモノを外に持ち出す事は出来ないのでそこまでの万能性がある訳では無い。
まあ、分かり易く言えば≪幻想劇場≫の効果の一つは『限定空間内の物質創造』だ。建物なんかも一瞬で作り上げられるのですごく便利な能力だったりする。
他にも『舞台変更』や『事象改変』などの付属能力があったりするが、それは後々明かしていこうと思う。
≪幻想劇場≫は俺の作った特異空間なので俺の許可が無ければ誰も入って来る事は出来ない場所だ。ついでに言うと幻惑空間でもある為、この中では転移が使えなかったりする。
つまり、逃げ出す事は不可能と言う訳だ。
俺は誓いの鎖から抜け出そうと必死にもがくヘルネスを横目に、真っ白なテーブルと真っ白な椅子を創り出す。これは物質創造の効果で創り出したものだ。
ちなみにクッキーなどの食べ物も創造できる。勿論、味もする。ただ、外に出ると無かった事になるのでお腹は膨れない。ダイエットには良いかもな。
ついでに言うと、分解摂取され細胞一つ一つにいきわたった状態で無かった事にされると細胞が崩れて大事件になるんじゃないか!?という心配はしなくていい。体に吸収される前にちゃんと無かった事になるらしい。これは<管理神の祝福>で調べた結果だから間違いない。
結局何が言いたいかと言うと、ちゃんとご飯は食べないとね。である。
「ああああああああああ――ッ!!ハアハアハア……」
「ん、終わったか。やっほー、元気?な訳無いよな。お疲れー」
『ハアハア……。な、なにするんすかいきなり!?死ぬかと思ったじゃないすか!?
って、アレ?ココ何処ですか?』
「ああ、ここか?俺のユニークスキルで作った空間。絶対に誰も入って来れないと思うから、無理して日本語で話さなくても良いぞ。ついでに言うと取り繕った喋り方もいらん」
「へー、そうなんっすか。じゃ、そうさせて貰いますね」
「やっぱり、
「あー、わかる。わかるっすよー!って、それよりさっきの説明してくださいよ!!」
っち、そう上手い事誤魔化されてはくれないか。あー、もう説明面倒だな……
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