第2話 王都到着
つ、着いたぁー。しんどっ。
予定時刻より一時間も遅れるってどうなのさ。上空なんだから天候以外に気にするべき所ないよね?
……やっぱり、魔力炉の劣化の所為かな? ホント、墜落とかしなくてよかったー。
あー、それにしても頭痛いわ~。
もう、二度と乗りたくないな。今度どうしても乗る必要がある時は初めから最後まで【カミルミ】に行く事にしよう。
さて、ルナちゃんin王都である。
これからの予定は王都にあるノートネス伯爵邸に行って兄姉との初顔合わせを行うらしい。どんな人達なのか少し楽しみだな。
よし、そろそろ護衛三人組の休憩もよさそうだな。
俺は三人の息が整ってきたのを確認して声を掛ける事にした。
「三人共、そろそろ行きましょうか。行けますね?」
「「「はい……」」」
お、息ぴったしだね。
俺はその様子を見て実践での三人の連携の良さを期待しながら、伯爵家の馬車を探す。お父様が王都の邸宅に連絡を入れておいたと言っていたので既に来ている筈なのだが……
「アレでしょうか?」
遠目にそれっぽい馬車を見つけた。
歩いて近づくと人ごみで隠れていた全体が露わになり、しっかりと家の家紋が確認できた。
「ルナ様、お待ちしておりました。執事長を務めておりますメイズ・ビーゲルと申します」
御者席にいた老人が席を降りた後、私に挨拶し頭を下げてくる。おぉ、ザ・執事って感じの人だね。
初対面の第一印象は大事なので、こちらも丁寧なカーテシーで返礼しておく。
「始めまして、既にご存知の様ですが改めて。私はルナルティア・ノートネスと申します。これから数年間、よろしくお願いしますわね」
もう一度、メイズさんは俺に向けて頭を下げた。
その後、場所の扉を開けてくれたのですぐに乗り込む事にした。む、階段までが少し高い。
仕方ないのでさり気無く馬車の階段の一段目と地面の間に≪無魔法≫で足場を作ってそこを踏んだ。
滑る様な動作で行ったので恐らく誰も気付けなかった筈だ。いや、メイズさんは気付いたのかな?一瞬だけ気配がぶれた気がする。
結局、メイズさんは俺が使った魔法について突っ込んでこなかった。
まあ、こんなの一々気にしてたら仕事にならないか。
「それでは、出発します」
全員が乗り込んだ所で御者席からメイズさんの声が聞こえた。
さて、これから初顔合わせか。うー、地味に緊張するなー。
馬車に揺られる事、約十五分。
ようやく邸宅に着いた。……何と言うか微妙な遠さだったな。
御者席にメイズさんがいる為、門は顔パスで通れた。
空き地に馬車を停めて屋敷に向かう。伯爵領の城とは比べ物にならないが、それでも屋敷は途轍もなくデカい。うわぁ、これ屋敷までの道のりがだるいパターンだ。
歩くこと数分で屋敷に到着する。
やっぱり地味に遠かった。黙々と五分間も歩かされると嫌がらせかよってなるな。
ただ、一本道という訳では無く曲がりくねっていた所から見て防犯的な何かだろう。実際にパッと見ただけで結界の様なものが何か所かあり、罠に至っては数百ヶ所あった。
これは、下手に脇道に出れないな。
「着きました。こちらが王都にあるノートネス辺境伯爵の御屋敷となっております」
うん、デケぇ。俺の体が小さいのもあるかもしれないが屋敷自体が間違いなくデカい。恐らく前世で言う豪邸という単語に間違いなく当て嵌まるであろう広さだ。
こんなもん、管理するだけで何百人の使用人が必要なんだか。何とも勿体無い話だな。いや、それともそんな事が気にならない程の金があるのかねぇ。貴族おそるべしだな。
俺はメイズさんに連れられて開け放たれた扉を潜る。
すると、目の前に巨大な階段が現れた。ほー、ココまで何もかもデカいと圧巻だな。
巨大な階段は二階まで続いており、三階への階段は正面の巨大な階段が影にならない様に左右に分けれてこちら側へ戻ってくるような造りとなっていた。
……これ、見様によっては上から一方的に攻撃を仕掛けられる造りだからか、防衛線を目的とした造りに見えなくも無いんだよなぁ。世知辛い。
どうやらその無駄にデカい階段を上って三階へと向かう様だ。
一度部屋でお休みになられてください。だ、そうだ。ついでに昼食が用意出来次第呼びに越させますとも言っていたな。一応述べておくと、朝食は船の上で食べた。リバースしそうになったのは秘密だ。
二階の階段のうち左側を上る。
そして、三階の廊下を右折し十二番目の部屋で止まった。
「改めまして、こちらがルナ様のお部屋となっております。昼食が出来次第、屋敷の者(使用人)に声を掛けさせますので、それまでの間どうぞお体を御休め下さい」
「えぇ、分かりましたわ。ご案内ご苦労でした」
うん、未だに上から物を言うのって慣れないな。
俺は早速クローゼットを開け、上着を脱いで備え付けてあったハンガーにぶら下げる。
人がいなくなったのでこれでようやく気が抜ける。あー、キツかった。
「う~ん、たっは~」
伸びをして肺から空気を出しながら脱力する。
うわ、思った以上にコレ凝ってるな。身体がバキバキとまではいわないがかなり軋んだ。
こんな幼児体形の頃から身体が凝るなんて……なんか凹む。まだ、こんな時期なのに将来が心配になって来たわ。絶対に書類仕事だけは避けよう。うん、そうしよう。
俺は一度思考を放棄してベッドに倒れ込んだ。
ふかふかで気持ちいい。……お風呂入りたいな。
これだけ広いんだし、一部屋に一つ備え付けてたりしないかな?
そんな訳で早速、部屋の扉を全て開けて回ってみた。
まず、最初の部屋にある扉は三つ。窓もあるがそれは今は置いておく。
当然一つ目は部屋の出入り口の扉。
二つ目はトイレなどに続いていると思われる扉が幾つかある洗面所に続く扉だ。
そして、三つ目がよく分からない扉だった。鍵が掛かってる上に魔法の結界が張られている。
やろうと思えば物理的にも魔法的にも何方でも消し飛ばせるが今は放置で良いだろう。この部屋が俺の部屋で確定したら調べてみようかと思う。とりあえず藪蛇は遠慮したい。
さて、次は洗面所を調べてみようと思う。
洗面所には歯ブラシや美容品などが並べられていた。うん、あとで一応チェックしておこう。お肌のケアは大事なんだからね!
と言うか、何もせずにいた場合は二年後に美月が来た時の事が怖い。二ケタ台くらいの時間をかけて、みっちり説教を喰らいそう。流石に長時間に及ぶ説教はゴメンこうむりたい。
いや、まあ。ちょくちょく会いに行こうとは思ってるんだけどね。
で、肝心の洗面所だが、扉がなんと五つもある。ちょっと多すぎないか?
まず、一つ目。定番のトイレ。洋式である。まあ、今のところ和式は見た事が無いんだけどね。
次に二つ目。更衣室があった。うわぁ、無駄に贅沢だな。地味に広い。七人くらいは入れるんじゃないかな?
んで、三つ目。お風呂場……――って来たーー!!よし、毎日お風呂に入れる!!……ふぅ。深呼吸、深呼吸。
よし、四つ目。……?ここはー、何だろう。入り口に高い段差があるから水でも溜めるのかな?うん、ココはよく分かんないな。
そして、最後五つ目。って、あ。また魔法が掛かってるし……。うん、まあ、仕方ないから今回は放置という事で。またのお楽しみという事にしておこうと思う。
ふう、とりあえず部屋の全体像はこんなもんかな?
無機質な印象が強い部屋なので、もしここが俺の部屋になるなら絶対に好き放題改造しようと思う。
さて、疲れも溜まってるし一度ベッドで休もうかな。
……最悪、寝ちゃったとしても使用人さんが起こしてくれるだろう。
最低限の結界だけ張って……よし。
んじゃ、そんな訳で、お休みぃ……
◆ ◇ ◆
「ルナ様、起きて下さい。ルナ様。ルナ様!」
「うぅ……頭痛い……」
耳元で大声を出された所為で頭がキンキンする。
ねぇ、何コレ罰ゲーム?
「おはようございます。ルナ様、お食事の準備が整いました。お着替え頂いた後、すぐに食堂へと向かう事となります。よろしいですか?」
「えっと、はい。分かりました。すぐに準備いたします、わ」
あ、なんか寝ぼけてた所為で語尾が後付けっぽくなっちゃったな。
うっ、なんかハズいしさっさと着替えてしまおうか。
俺は早速ベッドから降りてクローゼットにってアレ?
「あ、替えの服」
「こちらになります」
を鞄に忘れてた。と言う前にメイドさんが上下セットの服を差し出して来た。
ふむ、コレは何て言うんだろ?
下はロングスカートでいいとして、上は……Tシャツって感じでもないし、ポロシャツって感じでもない。うーん、分からん。
その中間のような服で背中と首元が結構開いている。うげ、苦手なタイプの服だな。
んで、その上にカーディガンぽいのを羽織ると。ふう、随分と露出が減ったおかげで少し落ち着いた。うん、これなら程よい風通しで気持ちがいい。
ちなみに着替える時はメイドさんに手伝って貰う。始めの頃に一人でやると周りが煩いのだ。こういうのは馴染んでからしれっと頼み込むと上手くいきやすい。
……よし、それじゃあ着替えも終わったし、食堂に向かうとしますかね。
あ。あと、真面な兄と姉でありますように!あの、糞親父そっくりの子供だった場合はNOセンキューです。
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