第24話 虚飾の大罪者 1
クラスを無事?取得できた俺は何度かクラス専用スキルを試していた。
「うーん、嵌れば強いけど発動までの条件厳しすぎね?」
思わずぼやいた。
このスキル、発動に至るまでの制限が厳しすぎる気がする。
『そうですね。ですが、ルティア様のそのクラスは途轍もない可能性を秘めております』
「いや、そうなんだけどさ……今の所、使用できるのが俺とミラとフローリアお母様とダンスの先生だけって……」
また溜息が漏れる。
如何しよコレ。結局、戦闘系クラスじゃなかったし……
「はぁ……まあ、いいか。使えるのは間違いないし」
『はい、それでは良い人生を』
「え?」
イーベルの突然な言葉に思わず振り返る。当然、誰もいない。
『送還術式展開!』
床の魔法陣が発光する。
っておい、送還術式?
「待っ――」
その瞬間、俺の意識は途絶えた。
◆ ◇ ◆
「いった、いー!?」
感じた衝撃に顔を起こす。
意識が途切れて気が付くとそこは暗い部屋だった。
「で、何処ココ?」
返事はない。
周囲を見回すと微かに光が漏れていた。
俺はとにかくそこに近づいてみる。
「扉?」
開け放つと座り込んだ皆がいた。
「お帰りなさい」
「あ、ディゾートさん」
「ルナルティア様、随分と時間が掛かっていましたね」
如何やら無事戻ってこれたらしい。
「ええ、少しスキルの試し撃ちをしておりました。お待たせした様でごめんなさい。
あと、私の事はルナかルティアとお呼び下さいディゾートさん。勿論、皆様もね。流石に毎回ルナルティアと呼ぶのは長すぎます」
ディゾートさんに笑いかける。その後、子供達にも微笑みを向ける。
「いえ、流石にそれは……」
裕福そうな家の子が困った顔で言う。
「大丈夫ですわ」
面倒だけどこうでも言わないと皆堅苦しい喋り方しかしてこないしね。
ついでに意義を呈してきた少年にニッコリと微笑みを向ける。
「うっ、分かりました」
アルカイックスマイルでごり押し?
伯爵家という身分の所為でこのような面倒事が起こっているんだから、その伯爵家の権力で解決しても問題ないですよね?
「ふふ、よかったですわ。それで、ディゾートさんこの後はどの様な進行になっているのです?」
「プログラムはコレで終わりですよ。ですからルティア様は何時お帰りになっても問題ありません」
「そうなのですか。では、私はコレで失礼致します。皆様も頑張ってくださいね」
ディゾートさんに一礼した後、子供達に軽く手を振って部屋から出た。
俺は部屋を出た後、早足で曲がり角に進む。
「はぁ、はぁ、はあ……」
誰もいない事を確認して廊下にへたり込む。
「く、苦しい」
《≪守護の誓約≫のペナルティーが発生しました》
≪守護の誓約≫の効果が発動した。誓約に従い、痛みと共に情報が流れ込んでくる。
「何が……くそっ、ミラが、攫わ、れた!?」
痛みに歯を食いしばり過ぎて歯茎から血が出てきた。
数十秒、痛みは続く、そして痛みが流れ込むのが停止する頃には完全に俺はミラの現在の状況を把握していた。
これが、≪守護の誓約≫の効果の一つだ。
≪守護の誓約≫は守護対象を守れなかった場合、それに応じたペナルティーを受ける事になる。今感じていた激痛がそれだ。
そして、今回の様に守護対象が攫われた場合は≪守護の誓約≫の効果で守護対象の状況と場所を把握する事が出来るのだ。
「ミラ、すぐに助、けに行く、から、な」
残った痛みで言葉が上手く紡げない。
「くそ、≪ヒー、リング≫」
≪ヒーリング≫が無事に発動し、徐々に回復が始まる。数十秒もすれば痛みは和らぎ喋れるには問題無い程度になった。
「聖なる水よ。我が身を癒し清め給え≪セイクリットウォーターヒーリング≫」
かなりの量の魔力が持っていかれるが問題ない。コレで、ST(体力)を気にせず走り回れる。
「我が望むは加速なり。光の速度を我に与えたまえ。≪ライトニング≫!≪魔装:黒鎖≫!」
俺は廊下を全力疾走する。
そして講堂に走り込んで目的の人物を見つけた。
「ゼノ!」
「お嬢様!?」
俺の取り乱し様にゼノも少し驚いていた。確かにここ数年の間、本気で取り乱したのなんて今日が初めてだからな。
「貴方は至急、貴賓街に向かいなさい!途中、人避けの結界が張られている可能性がありますので注意して進んで下さい!私はもう片方に向かいます!!いいですね!?」
早口で用件だけを捲くし立てて神殿を出た。
《≪称号:炎の魔法士≫を――
《≪称号:嵐の――
《≪称号:王――
《≪称――
《――
――
――煩い!!今はそれ所じゃないんだよ!!
俺は地面をぐっと踏み締め、全力でジャンプする。そして屋根の上に着地した。
通りで悲鳴が聞こえたが今はそんな事に構ってはいられない。
「≪魔装:
手元に大鎌を顕現させる。
魔力の収束体である≪
「くそっ、距離が離れすぎてる。如何すれば追いつける!?」
――≪魔装:白翼・黒翼≫使うか?
――いや、それだと後が辛く……――
――後が辛く?だから、如何した!?
「≪魔装:白翼・黒翼・対四天≫!!」
俺の背中に白4枚、黒4枚の翼が現れる。
これが、現在の俺の最大展開数だ。つっ、負荷処理が掛かって軽い眩暈がするな。
チラリと左上を見てみると147%の文字が表示されている。
処理負荷147%か……後を気にしなければまだまだ行ける!
「風よ!≪突風≫!」
魔法で生み出した突風に乗って飛翔する。
まったく持って余裕は無いが最低限出来る事として黒魔力での隠蔽を発動。
少ししか持ちそうに無いが街を出るまで持てばそれで十分だろう。
俺は全力で八つの翼を羽ばたかせた。
◆ ◇ ◆
ミラは体に感じる激しい揺れで目を覚ました。
(ココは……そうか!)
瞬時に状況を思い出したミラは身動ぎ一つせずに周囲の様子を伺った。
(森?と言う事はもう街中じゃない?)
首さえ動かしていない為、殆ど状況は確認できないが、また意識を刈り取られるよりはいい。今は静観するべきとミラは自分に言い聞かせた。
「メルフェさん」
後ろから偵察に出ていたと思われる男がメルフェに結果を報告する為に戻って来た様だ。
ミラは目に映った状況でそう判断した。実際それは間違っておらず。
「如何かしてぇ?」
「いえ、
「分かったわぁ。貴方達はぁ先行しててもいいわよぉ?」
メルフェはミラを担いでいる男とその周囲を固めている者達に先行の指示を出す。
「了解しました。それでは、先に行かせて貰いま――」
「行かせると思うな」
ミラを担いでいた男の首が飛んだ。
一瞬の出来事に何名かが固まった。その者達の殆どはまだ任務について日の浅い者達だ。
「≪凶刃≫」
続けてその場で固まっていた者達の数名の首が飛んだ。
「貴方ぁ、何者かしらぁ?」
さも当然の様に距離を取っていたメルフェは部下の死を気にする事無く、空から降って来た
メルフェの見た限り、
恐らくと言うか間違い無く手に持っているあの大鎌が相手の得物だろう。
メルフェはサッと部下の死体に視線を向ける。鋭利な切り口が見えた。切れ味は一級品と見た方がいいだろう。
「ああ、初めまして。俺は水無月 佳夜だ」
「うふっあはっ、私はぁメルフェよぉ」
「ふぅ、早速だけど……
――俺の可愛い姫様に手を出したんだ。お前等全員、依頼主含めて楽に死ねると思うなよ」
その瞬間、佳夜から膨大な魔力が漏れ出した。
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