第23話 襲撃
時は少し遡る。
お姉様が更衣室で髪形を調整していた頃、私は通りに出て時間を潰そうとしていた。
「ゼノ、一時間くらいで帰って来ればいいですよね?」
「はい、ミラお嬢様」
「じゃ、お姉様の事よろしくね!」
そう言って私は街へと繰り出した。
通りに出ると早速分かれ道が私を迷わせる。
「うーん、どっちに行こうかなー。テーゼのおススメは?」
「そうですね。右の通りに向かえば美味しい食事処が在ります。左の通りに向かえば洋服やアクセサリーなどの店が在りますね。中央通りは……まあ、出店ですね……」
最後の中央通りを歯切れ悪そうに言うテーゼ。多分、私にそういうお店に言って欲しくないんだと思う。
だが、逆にそれが私の興味を惹いてしまった。
「出店ですか……」
「お嬢様、まさかとは思いますが……」
ここでテーゼは嫌な予感を感じた。そしてそれは当たってしまう。
「中央通りにしましょう!!」
「それは!」
「――テーゼ。無理です。諦めるしかないですね」
私の行動を止め様としたテーゼの肩をリノスが掴む。
「だが!」
「前に姫様を止めなかった件をあげられて終わりですよ」
「ぐっ――……」
反論しようがない事に気が付きテーゼは諦めた。
そう、元々私には「お姉様から聞きましたよ?」と言う切り札があったのです。
「では、行きましょうか!」
「了解です」
「はい……」
如何やら渋々テーゼも折れてくれた様だ。良かったー。
私は早速、中央通りに歩を進めた。
◆ ◇ ◆
食べ歩きを始めて40分程が経った。
集合時間が近くなったので私達はそろそろ戻る事にしたのだ。
「ふふ、お姉様へのお土産も買えましたし有意義な時間でした!」
「良かったですねお嬢様」
「はい!」
私とテーゼは並んで歩いていた。テーゼが私の話し相手になってくれていたのだ。
リノスは護衛の役目を務める為に一歩後ろから付いて来ている。
だから、一番早く異常に気が付く事が出来た。
「人が少なすぎる?」
私はリノスの呟きが気になったので辺りを見回してみる。
たしかに十数人しか歩いていない。
けれど今はお姉様にお土産を買う為に高級街へ来ていたので、そう珍しい事ではないと思うんだけど……
「そうでしょうか?」
「はい、そうで――ッ!?」
「きゃっ!?」
気が付くと体が吹き飛んでいた。いや、リノスが私を庇って突き飛ばしたらしい。
「ガアッアアアアアァァアア!?!?」
「ぇ?」
私を庇ったリノスの腕が切り飛ばされていた。
「な、何が?」
突然の事に頭が真っ白になった。そして――
「あはっ温いわぁ、実に温い」
リノスの腕を落とした赤髪赤眼の女が不気味に嗤う。
……ああ、この感覚覚えがある。コレはあの時の……私は自然と自分の目が細まったのを感じた。
「へぇ、貴女面白いわねぇ」
「お嬢、様、お逃げ、下さ、い。テー、ゼお嬢様、を頼む」
「リノスお前……。ああ、任せろ。お嬢様こちらに」
脂汗を流しながらリノスはテーゼに言った。決死の覚悟と言う奴らしい。眼がそういう眼をしていた。
私はテーゼの指示に従わない。お姉様にも被害を齎しかねないこの女は危険だ。今ココで、
「殺す」
「あはぁ、貴女ぁ本当に4歳なのかしらぁ?」
私は<管理神の祝福>を女を対称にして発動する。
≪メルフェ≫
レベル:124
性別:女
年齢:23歳
種族:
クラス:暗殺者 レベル71
工作員 レベル42
HP(生命力):450/450
MP(魔力):171/171
ST(体力):221/230
ATK(攻撃力):386(+71)
INT(知力):341(+84)
DEF(防御力):253
MIND(抵抗力):191
SPD(行動速度):529(+142)
「――ッ!?」
ステータスを見る余裕がない。あの女から一目でも離せばやられてしまいそうな緊張感がある。
「はぁぁああああ!!」
リノスが残った右腕で女――メルフェ目掛けて剣を振るう。
「あはぁ!」
メルフェはリノスの攻撃を余裕を持って回避し、通り抜けざま短剣で脇腹を切り裂こうとする。
「≪
私は腰に括った短杖を抜き放ち、短杖の先から雷の弾丸を飛ばしてメルフェを狙い打つ。
そのままリノスを倒しに動けば着弾、避ければリノスは無事と言う図だ。
「チッ」
メルフェは舌打ちを一つして回避を選択した。
「≪ファイアボール≫」
続けて≪ファイアボール≫を一つの詠唱で十発発動する。全てカスタム済みだ。
その≪ファイアボール≫を避けられないタイミングで全球放つ。
――ドゴォォオオン!
一発が着弾するごとに中規模な爆発を起こしていく。
「グあッ!?」
ぎりぎりで避けられたが爆風がメルフェを吹き飛ばした。
「死ね≪エアカッター≫」
私はメルフェの首目掛けて≪エアカッター≫を放つ。
風の魔法は寸分違わず発動し、もう少しと言うタイミングで横に転がり回避された。
「チッ……風よ≪エアカッ、タ――」
次は全方位から八発放とうと詠唱を開始した瞬間に首筋に衝撃を受けた。
「カハッ!?」
途轍もない衝撃に意識が持っていかれそうになる。
「まっ、だ」
もう一撃、私の首筋に手刀が振り下ろされる。
「ぅ……」
そこで私の意識が途絶えた。
どさりと言う音にリノスとテーゼが振り返る。
「「お嬢様!?」」
「貴方達ぃ撤退ですよぉ」
ミラを担いだメルファが部下達に告げる。すると貴族に扮していた部下達が波のように引いていく。
「待て!」
「くそ、お嬢様!!」
二人はすぐに攫われたミラを追いかけようとするが飛び道具で足止めされて思うように進めずにいる。
そして最後には完全に撒かれてしまうのだった。
◆ ◇ ◆
『では、そろそろクラス選定に参りましょうか』
「え、あ、はい。分かりました」
俺はイーベルの言葉に従い奥の扉を開ける。
そこには複雑に刻まれた魔法陣があった。その魔法陣が気になったルナは<管理神の祝福>を発動した。
<クラス選定魔法陣>
・クラスを選定する事が出来る魔法陣。
……それだけ?
如何やら見れる情報は少ないらしい。それだけブラックボックスが多いって事かな?
まあ、いいや。
「確かお……私が選べるのは一つだけなんですよね?」
『そうなのですか?』
「……」
この土下座天使に聞いたのが間違いだったらしい。
俺は黙って魔法陣の上に乗る。
『では、中央の窪みに血液を一滴垂らしてください』
魔法陣から台座が浮き上がってくる。その上には小針が一本。
<小針>
・麻痺の効果が付いた小針
「おい。麻痺効果って何だ」
『ただの患部麻酔です』
「本当に?」
うわぁ、嫌だな。
「はぁ……えい!」
チクリとした痛みが指先に走る。……痒い。
俺はそこから出た血を一滴窪みに落とす。
……。
俺は指先を窪みに近づけて血を垂らした。
……別にさっきの血が外れたとかそんなんじゃないですよ。うん。
ちなみにさり気無くつま先で証拠隠滅は終わらせた。
『取得可能クラス
その言葉通りこの世界で俺だけが唯一獲得できるクラスが表示された。
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