第17話 街へ行こう!春の神事見学編 1


 春になった。

 街に出た俺は神殿に向かっていた。

 今日、神殿を訪れる目的は神事を見る事である。

 神事は春夏秋冬に渡り4度行われる催しだ。春は五月一日に、夏は八月一日に、秋は十一月一日に、冬は二月一日に行わていれる。つまり春の神事が行われる今日は五月一日と言う訳だ。

 そして春夏秋冬の季節分けは春が三月~五月、夏が六月~八月、秋が九月~十一月、冬が十二月~二月といった分けられ方となっている。例えば五月・・の二十九日生まれの場合は春の神事に参加する事になる訳ですね――じゃない、なる訳だ。


 それと先程から話題に出ている『神事』とは七五三の七歳のみバージョンだ。

 そして、コレを受ける事で世間一般に少年少女として認められる。ちなみに成人として認められる成人式が行われるのは15歳の時だ。


「もっとも昔は八歳の時に神事を行っていたらしいですわ。七歳に変更になったのは、学園の開始時期と被っているので慌ただしく動く羽目になるのを嫌った貴族達のクレームに合わせた結果の様ですわね」

「お姉様は物知りですねー」

「まあ、全てそこの石碑に彫られているモノを読んだだけなのですけれどね?」

「……」


 ミラの微妙そうな表情を眺めながら俺は肩を竦めた。


「私の生まれ月は十月ですので秋の神事に参加する事になりますわね」

「お姉様の晴れ姿……ごくり」

「――っ!?寒気が……。ミラ今、不吉な事を考えましたわね……」


 鳥肌が立った二の腕を擦りながら俺はミラをジト目で睨む。


「言いがかりですわ!私はただ、着物姿のお姉様が肩を出して前屈みになって唇に人差し指を当てた姿を思い浮かべただけですわ!!」


 モロにお前の所為じゃねぇか!!

 思わずそう叫びそうになるのを必死に堪えながら、ニコリと微笑んで喋り方を変えて俺はミラを糾弾した。


「それって、やっぱり間違いなくあなたの所為ですわよね!?」


 ……あんまり変わって無かった。


「そうとも言いますわ」

「そう以外には言いません!」


 そんな二人の微笑ましい?様子を神事の見学に来た大人達は見守っていた。ついでに街に出る時は毎回付いて来ている護衛兼見張りさん達も見守っていた。


「お、始まるぞ」


 ふと、誰かがそう言うのが聞こえた。


「ミラ、始まるみたいですわね」

「はい!お姉様!」


 ちなみに俺達は先日から護衛さん達に頼んで一番前のかぶりつきの席を確保していたりする。


 窓から光が差し込み幻想的な空間となっている神殿に別部屋に待機していた子供達が入って来た。

 彼ら彼女らは到着した端から神像の前にひかれている絨毯に膝を着き、祈りのポーズをとる。


「ふーん。入る順番は身なりから見て貴族から平民の順番みたいね」

「そう、みたいですね……」

「どうかしたの?ミラ?」

「えっと、如何しても貴族や平民のような身分制度というモノには慣れれなくて……何か良い方法はありませんかお姉様?」


 ああ、元日本人としては慣れないよな……

 服を剥かれてドレスを着せられるのは未だに慣れないし。お風呂も身体を他人に洗われるのってむず痒いんだよなぁ……


「まあ、慣れるしか方法はありませんわね」

「お姉様が冷たいです……」


 しょぼくれるミラの頭を撫でながら俺は前を向いた。

 神事は次の段階へ進もうとしていた。

 神官の青年が部屋に入って来る。俺はその青年にいつも通り<管理神の祝福>を発動した。



<ディゾート・ギーヴェ>

レベル:97

性別:男

年齢:24

種族:人間ヒューマン

クラス:神官剣士 レベル17

HP(生命力):429/430(+170)

MP(魔力):312/585(+170)

ST(体力):117/386(+170)

ATK(攻撃力):411(+170)

INT(知力):375(+170)

DEF(防御力):210

MIND(抵抗力):388

SPD(行動速度):316

MN(処理能力):100%/0.14%

EF(放出力):272

EXP(経験値):010295/195900(2136425)


先天スキル

・剣術 レベル231(+85)

・聖魔法 レベル26(+9)


クラススキル

・法術 レベル115(+34)

・瞑想 レベル71(+34)


後天スキル

・速読 レベル68(+34)

・魔力操作 レベル39(+34)

・気配察知 レベル48(+34)


称号

・聖の魔法士

・女神エルーナの信者



 おぉ、レベル97!思ったより高い!

 スキルは7個か。うーん、こっちは微妙かな?持ってる人はレベル50に達してなくても10くらい持ってるからなぁ……

 ああでも、≪聖魔法≫持ちか……そういう意味では評価高いね。

 ちなみに≪聖魔法≫と言うのは≪光魔法≫の一つ上位スキルだ。その上に≪白魔法≫が存在しており各属性も同じ様に二段階の進化先がある。≪火魔法≫なら≪炎魔法≫、さらにその上に≪赤魔法≫と続く。

 もう理解して貰えたと思うが、基礎魔法の上に上位魔法が続き色魔法カラーズマジックとなる形だ。

 基礎魔法は火・水・風・土・光・闇の六属性で、上位魔法から炎・氷・嵐・地・聖・魔に雷が入り七属性となる。あとの色魔法は単純に属性の色そのままに赤・青・緑・橙・白・黒・紫だ。


 そう言えば、青年・・神官って言ったけど24歳なんだね……全然青年じゃなかったよ……

 ま、まあ。とりあえずは神父さんで。


「コホン……本日は晴天に恵まれ――」


 そこから神父さんの長話が始まった。

 まずは本日のお日柄から始まり、次に式辞の挨拶。そこから本日、神事を受ける子供達の名前が呼ばれ、来席した貴賓席の方々の紹介に続き、最後に神事を行う神父本人の自己紹介へと続いた。


「それでは、次に聖典の第一章からの朗読に入ります」


 え……

 そして、その言葉通り創世神話の朗読が30分程続いた。長い。しかも、俺が知ってる事実とかなり違う。

 明らかに間違っているモノや脚色されている点がチラホラ……もっとも、俺の知るソレらは管理神の業務の最中に偶然知りえたモノばかりなので何処まで本当なのかは分からない。

 あ、そういえば、俺はチラリと隣のミラを見る。疲労してはいるが、まだ倒れたりしそうな感じではなさそうだ。

 ……一応、確認しておくか。


「ミラ大丈夫?」

「少し眠たいですが大丈夫です」


 確かに眼が少しウトウトした感じだ。

 俺はインベントリから紅茶やハーブティーなどが入れられるティーセットを取り出して、ミラと自分の分を注ぐ。ちなみにお湯は≪青魔法≫でササッと出した。


「はい、どうぞ。スッキリとした味わいのハーブティーですから目が覚めると思いますわ」

「わあ、ありがとうございます!お姉様!」


 ミラが美味しそうに飲むのを確認した後、俺も自分用に用意した紅茶で口内を潤した。ちなみに香茶なども備え付けたティーセットだが、個人的に香茶は好まない為に殆ど消費されていない。

 あ、紅茶の茶葉が随分と減って来たし部屋に戻ったら紅茶の茶葉缶に新しい茶葉を詰めておかないといけないな。

 俺はさらにカップを三つ取り出す。そこに緑茶と紅茶、ミルクを注いで後ろを振り向いた。


「皆さんもどうぞ」


 微笑みながら護衛兼見張りのゼノさん達にカップを乗せたトレーを差し出す。


「む、宜しいのですか?」

「はい、問題ありませんわ」

「でわ。お前達も折角だし頂いておけ」


 ゼノさんは残りの二人――リノスとテーゼ――も一緒に誘った。


「「いいん(宜しいの)ですか?」」

「寧ろお前はお嬢様直々の御誘いを断るのか?」

「「いえ、愚問でした」」


 うーん。堅いなぁ。まあ、仕方ないか。

 気を付けないと不敬罪でバッサリもあり得る世界だしねぇ……


「美味いですな」

「美味しいですね」

「ホントっすね」

「ふふ、お世辞でも嬉しいですわ」


 上からゼノさん、テーゼさん、リノスさんの順だ。ちなみにゼノさんが緑茶、リノスさんとテーゼさんの二人が紅茶でリノスさんは砂糖を一匙(極小匙)、テーゼさんはミルクをたっぷりだ。

 一応、茶葉は自家製に近いので褒められればやはり嬉しい。その茶葉だが、栽培は≪箱庭の理想郷ガーデン・オブ・ユートピア≫で創られた【カミルミ】で行っている。


「そう言えば神事は後どの位で終わるのでしょうか?」


 首を傾げるとリノスさんがその問いに答えてくれた。


「そうですねー……確かあとは神官が祝福を行って終わりですよ」

「そう、ですか。ありがとうございます」

「いえいえ、お安い御用ですよ姫様」


 リノスさんは少しの独特なしゃべり方をする。軽薄そうな態度と雰囲気が相まって胡散臭く感じるが根は良い人だ……と思う。

 実際、喋りは三人の中で一番上手いし、交渉なども担当しているらしい。

 そんな分析をしていると神父さんが祈りに入った。


「――…カロル神、エルーナ神、シュペレス神よ。これから新たなる旅立ちを迎える者たちに祝福を与えたまえ」


 聖句が唱え終わると同時に光が降って来た。

 その光は主役の子供達の真上で飛び散り、子供達の上へ降り注ぐ。


「うわー、綺麗ですね」

「そうですわね」


 それから少しの間、俺とミラはその幻想的な光にうっとりと見惚れるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る