第12話 そうだ、街へ行こう!箱入り娘、遂に家から出る編 2


 ふぅ、ピザ美味しかったなぁ……


「うーん、やる事が無い」


 折角だしファンタジーなモノは何かないかな?


「あ、店員さーん」

「はーい、どうしましたかー?」


 たったったったと走って来る。


「この街の名物って何ですか?」

「名物ですかー?」


 うーんと悩む店員の少女。


 ……。


 ええー……この街ってそんなに有名な物無いの?


「……敢えて言うなら闘技場が有名ですねー」

「へぇ、闘技場ねぇ……」

「?」


 ポツリと呟いた俺の言葉を聞き取ってしまったのか店員さんが首を傾げる。


「ああ、ごめんなさい。独り言です」

「そうなんですかー?」

「はい!そうなんです!」


 俺はお礼を告げて店を出た。


「あ、何処にあるか聞いてなかった……」


 そして場所を聞き忘れていた事に気が付いたのだった。



     ◆  ◇  ◆



 ノートネス伯爵領にある闘技場。何故そこが有名かと言うと、その闘技場が過去の遺物だからだ。

 そう、闘技場そのものが過去の遺物なのだ。

 国内にある闘技場でココと王都にある闘技場のみが結界を生成する機能を有している。だから、この街には腕試しに冒険者が集まって来るそうだ。

 俺はそんな感じの事が書かれた壁を眺めていた。

 他にも発見の経緯やこの遺跡の成り立ちの予想などが掛かれていた。

 そして当然、俺が誰も見向きもしないそれを読んでいたのには理由があった。



<アルテタリア語>

・人間の共通語

・世界で最も使用されている言語

・[ダウンロード可]



 言いたい事は分かっただろうか?

 神様の言っていた通り<管理神の加護>のレベルを上げ、権限レベルを上げると言語が理解できる様になりました。

 文字も全部読める。

 ……何コレチート?

 自分で頼んでおいてアレだが、チート感が凄まじい。

 

 ……。


 まあ、便利なので良しとしよう。


「ここまで来たからには幾つか試合見てくか」


 そんな訳で俺は対戦表を見に行く。

 既に今日の試合は三分の一程度終わっているらしい。

 チラリと横を見ると賭けの窓口が盛り上がっている。うわー、儲かってそう。

 ≪ステータス≫を見ると所持金が298,000エル程ある。……成程、これなら三十万ぽいっと出せるわ。


「ええっと、次の対戦は……ミニッツVSロンベルト」


 何故だろう。ロンベルトってやられ役っぽい名前な気がする。

 ボケっと試合を見てるとロンベルトが勝った。やられ役とか言ってゴメンねロンベルト。

 ちなみにレベルは41と46だった。ロンベルト意外と強い?

 ああ、そう言えば≪世界記録アカシックレコード≫で調べてみた所。この世界で一般人の平均レベルは13だ。どうやらレベル51の俺はかなり異常な存在らしい。


「ふむ、次はアリアンヌVSベルモンド」


 何、もしかして演劇系で攻めてますか?

 ……気のせいだろう。

 ちなみにベルモンドが勝った。風魔法でアリアンヌを吹き飛ばし、場外への押し出し勝ち。

 ……ベルモンド狡いな!(褒め言葉)


「今度はリンドルVSメンダス」


 リンドルがメンダスの顎をアッパーで打ち抜いて勝負あり。

 見てて楽しい肉弾戦だった。


「リベルタルVSメルセフォイ」


 時間切れで引き分けになった。

 うーん。メルセフォイはラストスパート掛けたら勝てたと思うんだけどなぁ。


「リオVSメンゼル」


 メンゼルとメンダスの名前が似ていると思ったが、特に深い関わりは無いらしい。後ろの席のおっさんが言ってたのを聞いた。

 リオの一撃でメンゼルが瞬殺されて終わった。ちなみに死んではいない。


「ロブロVSゴジュドウガ」


 巨人族のゴジュドウガが圧勝した。

 それはもう語る事が殆ど無いくらいの完封勝ちだった。


「ロンベルトVSスペレー」


 本日二度目のロンベルト。

 スペレーのレイピア使いの前に為す術も無くやられた。南無。


「うーん。一方的な展開が続いてるな。次はスペレーVSゴジュドウガか」


 ……まず、ゴジュドウガにレイピアが効いてない。

 おい運営。何故この組み合わせで組んだ。


「ふぅ、今日はこの辺でお終いにしておこうかな」


 うん、思った以上に楽しめた。

 俺は席を立ち出口へと向かう。そこへ、大男二人が立ち塞がった。


「お嬢ちゃん。ちょっと待ちな」

「……」


 ……て、テンプレ来たー!?

 え、マジで?コレやっちゃって良いやつ?


「何でしょうか?」


 とりあえずは素知らぬ顔で相手の出方を窺う。


「いやな。保護者は如何したのかと思ってな」

「保護者ならあちらに居ますが……」


 そう言って俺はスタンドを見る。

 確かに護衛兼監視という名目の保護者が三人いる。


「そうなのか?まあ、それなら問題無いな」

「?」

「ああ、俺たちはこういう者だ」


 男はしゃがみ込んで胸から掛けた紙を俺に見せる。


 <警備員>

・ゼスメトル


 ……。


「私、迷子じゃないです!!」

「はは、すまねぇなぁお嬢ちゃん」


 思わず頬を膨らませて怒った。

 失礼過ぎる!俺はぷりぷり怒りながら闘技場を出たのだった。



     ◆  ◇  ◆



 ルナが闘技場を出た後、護衛の三人組は動き出した。


「リノス、テーゼ。お前達はお嬢様を追え。俺はあの二人と少し話をしてくる」

「「はっ、了解しました」」


 リノス、テーゼと呼ばれた男女二人組はすぐさま動き出しルナを追う。

 そして、残ったリーダーであるゼノは先程、ルナに話しかけた二人に近寄った。


「ちょっと待て」

「ん?」


 主にルナと話していた男の方――ゼスメトルがゼノの言葉に反応した。


「貴様、お嬢様と何の話をしていた」

「お嬢様……ああ、あのお嬢ちゃんか」

「そうだ」


 ゼノは鋭い目つきで男を睨む。


「おお、怖い怖い。俺達はこういう者だ」

「……警備員?……お前達がか?」

「おう!こう見えて立派な警備員だぜ!何だったらココの職員に問い合わせてくれても構わねぇよ」

「……。いや、いい。これでも人を見極める目はある方だと自負している」

「そうかい」

「そうだ」


 ……。


 沈黙が続く。

 ふっとゼノは笑うと警戒を緩めた。

 ……もっとも、それは警戒を完全に解いた訳ではなく、ほんの少し張りつめていた緊張感を緩めただけだ。


「ふぅ、もう用が無いなら行かせて貰っても?」

「ああ、構わん」

「んじゃ、どうも。

 って、あ!そうそう」

「む?どうした?」


 突然何かを思い出した様なゼスメトルにゼノは訝しむ。


「いや、な。あんた等の尾行。お嬢ちゃんにバレてるぞ」

「……」


 思わぬ事を聞かされて、ポカンと口を開けて固まったゼノであった。



     ◆  ◇  ◆



 後ろで護衛さん達がお仕事をしている一方で俺はとある場所を目指して歩いていた。

 それは街に出る事が決まった時に行こうと決めていた場所だ。


「時間は3時44分……微妙だな……」


 俺は視界上部の≪時計≫を見て呟く。

 ……最近独り言が増えた気がするな。年か、年なのか!?


「はぁ……」


 悩まし気な溜息が出た。

 まだ精神年齢だと二十歳くらいなんだけどな。あ、そう言えばこの世界で二十歳はおじさん、おばさんか。うぅ、何かショック。ロリババアェ……


「あ、着いた」


 気が付くと目的地が目の前にあった。

 そこは真っ白い巨大な建物で他とは違った空気が流れている場所だった。


「神殿」


 それが今回の散歩で俺の最後の目的地となる場所だ。

 俺は再び歩みを始める。

 神殿の中に入ると長椅子の端に腰かけた。


「あとは、時間を潰すだけ、っと」


《≪称号≫の有効化アクティベートを開始します》

《≪ステータス≫に≪称号≫の表示が追加されました》


 俺の目的通りの音声アナウンスが入った。

 そう、これが俺の神殿に来た目的だ。

 神殿と言う場所は聖域で世界との繋がりが一時的に深まる場所なのだ。その為、クラスを更新したり、≪称号≫を更新したりと言った事が可能になる。

 他には≪ステータス≫を確認したりする事も出来る。まあ、その場合はお金が掛かるけどね。

 そして自他ともに認める世間知らずの俺が何故そのような事を知っているかだが、理由は簡単。≪称号≫の認可を行うのは管理神の業務だからだ。当然、手伝いをしていた俺が知らない道理はない。

 神殿では祈りを捧げる事でどうちゃらこうちゃら言っているが、断言しよう。教会内に居さえすれば更新は行われる。祈りとかぶっちゃけ関係無い。もし、更新速度を向上させる方法を上げるとすれば更に神聖度が高い場所に行くのが本当の更新を早める方法だ。

 ただ、そう言った場所は一般開放されていない為、礼拝堂のどこにいても関係無い訳だ。

 だから俺は長椅子の端に座り、静かに目を瞑って≪世界記録アカシックレコード≫で調べモノに専念するのだった。


《≪称号:転生者≫を獲得しました》

《≪称号:禁忌に触れし者≫を獲得しました》

《≪称号:消滅者≫を獲得しました》

《≪称号:眠り姫≫を獲得しました》

《≪称号:黒の魔導士≫を獲得しました》

《≪称号:青の魔導士≫を獲得しました》

《≪称号:白の魔導士≫を獲得しました》

《≪称号:死神幼女≫を獲得しました》

《≪称号:超越者≫を獲得しました》

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