第10話 ルナルティア・ノートネスのオリジナル魔法 2
――チリンッ!
銀貨が地面に落ちた。
その瞬間、フローリアお母様が動く。
「≪ボルト≫!≪ボルト≫!≪ボルト≫!≪ボルト≫!≪ボルト≫!!」
五連続で電撃が飛ぶ。
一発目、二発目、三発目の間に≪反射鏡≫が割って入った。
電撃は≪反射鏡≫に着弾……する前に手前の空間で消滅した。
「「な!?」」
俺とフローリアお母様が同時に吃驚する。
衝撃から先に立ち直ったのはフローリアお母様。続けて≪ボルト≫の魔法を放つ。
だが、その全てが俺より7m程手前で掻き消える。
「くっ!ならば!」
気が付くとフローリアお母様がほぼ目の前にいた。
――速っ!
俺は咄嗟に切り札を切った。
ピタッとフローリアお母様が停止する。
「うぐっ」
発現量ぎりぎりの魔力を使い≪無魔法≫でフローリアお母様を捕らえたのだ。
俺はフローリアお母様の胴を≪
それに対してフローリアお母様は剣を持った腕だけに魔力を集め、腕への≪無魔法≫を無効化した。そこから腕を動かして≪
だが、甘い!そんな事では≪
ただの黒魔力の集合体。それが≪
だから、フローリアお母様の剣をすり抜け、フローリアお母様の胴をぶった斬った。
「カハッ!?」
そして闇属性の効果である『吸収』が発動する。普段ならダメージ分のHP(生命力)を吸収するのだが、今回はその設定をMP(魔力)に変更した。
俺は≪無魔法≫の維持を手放した。理由は単純でフローリアお母様の無効化が済んだからだ。それでなくても魔力のみで現象を起こす≪無魔法≫は消費が激しいのだ。ずっと起動などさせていられない。
倒れ込むフローリアお母様を支える為に俺は落下点に回り、
「ふっ!」
フローリアお母様の不意打ちをくらった。え、きたねぇ。
不意打ちを俺は常時発動型の切り札その二である≪夜月のドレス≫を使い止める。何をしたかというと、闇属性で衝撃を『吸収』したのだ。一瞬、処理負荷が60%を超えたがすぐに元の43.82%へ戻った。
「≪黒鎖:全展開≫!!」
俺は黒い球から六つの鎖を全て展開し、九つ全ての鎖でフローリアお母様を縛り上げる。
「ぐっ!?」
「限界ギリギリまで吸い尽くせ」
「あぁぁあああああああああああああああ!!!」
≪黒鎖≫は黒魔力でできているので『吸収』が使える。それを使いフローリアお母様から魔力を無理矢理吸い上げたのだ。
結局、数十秒間フローリアお母様の絶叫は続き、最後に気絶した。最後の最後までフローリアお母様は暴れていたが≪黒鎖≫を無効化する事は出来なかった様だ。
《クラス『脚本家』のクラススキル≪決闘劇≫が解放されました》
《≪
◆ ◇ ◆
俺は気絶したフローリアお母様を背負って――半分引きずって――壁際まで行き、そこにへたり込んだ。
「ハァ……きっつ」
フローリアお母様を横倒しに寝かせ頭を俺の膝の上に乗せる。ちっさい枕だがないよりマシだろう。
「光よ我が身に癒しを与え給え≪ヒーリング≫。水よ我が身に癒しを与え給え≪ウォーターヒーリング≫」
フローリアお母様に回復魔法を掛ける。肉体的に怪我は殆どないので、気絶から早く目覚めてくれればラッキー程度の考えだ。もし目が覚めなければ顔面に水ぶっぱも考えてはいる。
「さて」
始めのアレが何かの考察するか。
分かっているとは思うが始めのアレとは≪ボルト≫の魔法が掻き消えた件だ。
とりあえず、俺はステータスを開いて確認してみる。
≪ステータス≫
名前:ルナルティア・ノートネス
レベル:51
性別:女
年齢:5歳
種族:
クラス:
HP(生命力):173/173(+74)
MP(魔力):31263/35679
ST(体力):166/166(+71)
ATK(攻撃力):180(+120)
INT(知力):14813(+7407)
DEF(防御力):147(+91)
MIND(抵抗力):94959(+30000)
SPD(行動速度):168(+72)
MN(処理能力):(545%)100%/13.64%処理中
EF(放出力):2496
先天スキル
・魔力操作 レベル584(+93)
・魔力感知 レベル365(+93)
・精神制御 レベル530(+134)
・並列思考 レベル445(+393)
・催眠術 レベル263(+134)
・詐欺術 レベル480(+300)
・神術語 レベル256(+166)
・料理 レベル184(+93)
・裁縫 レベル180(+93)
・無魔法 レベル725(+227)
・水魔法 レベル309(+227)
・闇魔法 レベル343(+227)
・光魔法 レベル279(+227)
クラススキル
・演技
・模倣
・速読
・決闘劇
ああ、解った。MIND(抵抗力)か。7m手前で魔法無効化ってェ……
うん、まあ。そういうモノだと思っておこう。
「で、あとは≪決闘劇≫と≪
困った時はとりあえず<管理神の祝福>で検索だ。
<決闘劇>
・脚本家のクラススキル
・
・決闘や一対一の対決の時にスキル補正が入る。補正は能力値上昇、対象行動先読など。
<
・<管理神の加護>と<世界の祝福>のリンク機能。
・
・最大作成数:1/1
・現在所有世界:無し
……。
うん。世界ね。うん。
これ、突っ込まないと駄目ですか?
……。
駄目ですよね。知ってます。
「はぁ……マジか……」
「う……ン……」
「あ」
膝上のフローリアお母様が身じろいだ。
そろそろ目が覚めそうらしい。
≪ステータス≫を見てみると魔力が10%ほど回復していた。それが理由かな?
「ぅん……ルナちゃん……?」
「はい、お母様」
「ふふ、今日も可愛いねぇ。むぎゅー」
「はぶっ」
フローリアお母様に抱きしめられた。
何がとは言わないが相変わらずデカい。ついでに言うと苦しい。
「むぅうう!」
「ほへ?」
本気で苦しくなってきて暴れたらフローリアお母様も気が付いた様だ。
「あ、あれ?もしかして夢じゃない?」
「ぷはぁ……。うぅ、もしかしなくても夢じゃありませんよぉ」
苦しすぎて若干涙声になった。恥ずかしい。
「……」
「……」
「う……」
「う?」
「うわぁああああああ!!恥ずかしいぃぃぃいいいいいい!!!ルナ!見るなぁああああああああああああああ!!!!」
フローリアお母様は一瞬で起き上がると雷速で走って行った。速い。
「……置いて行かれた」
……よし、戻って寝るか。≪
◆ ◇ ◆
うん……目が覚めた。今の時間は8時2――
――ジりりりりりり!!
「ひ、ヒャイ!?」
うわ、変な声出た。目覚めて五秒後アラーム心臓に悪いな。
これは後で設定変更しておこう。
「あ、お姉さま。起きましたか?」
「え、ええ」
どうやら優しいミラは今の痴態を見なかった事にしてくれたらしい。
うぅ……ただ、その優しさが辛い。
「お姉さまは今日、如何なさるのですか?」
「そうね……街にでも出てみようかしら?」
「街に……ですか?」
「ええ」
「私も連れて行ってください!!」
あ、美月、じゃないミラの目的を考えれば外に出たがるのは当然か。
「うーん。ちょっと考えさせて貰える?」
「ダメですか?」
ミラは上目遣いで聞いてくる。くっ、可愛い。
だが、しかし。今回は駄目だ。何があるか分からないところにミラは連れていけない。
「ごめんなさいね……」
あ、しょんぼりした。
な、何かフォローを!
「つ、次に街へ行くときは連れて行ってあげるから――」
「本当ですか!?」
「え、ええ」
ヤバい。俺一人ならともかくミラを連れて行くとなると流石に親父を説得するのが辛くなるぞ……
……よし、その時になったら考えよう。
俺はどうしようもない状況に先送りという最終手段を取ったのだった。
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