第4話 属性魔法


 次の日、俺はステータスに新たに追加されていた『先天スキル』の表記を見て、属性魔法を覚える事にした。当然、覚えるのは水、闇、光の三属性だ。

 そんな訳で俺は早速<|世界記録(アカシックレコード)>で検索を掛けてみた。

 そして分かった結果がこちらだ。



<水魔法>

・水を思いのままに操る魔法。

攻撃:C

防御:B

支援:E

回復:B

属性特徴:静寂・沈静

・水の魔法と詠唱一覧

>水球よ我が意に沿って敵を撃て≪ウォーターボール≫

>水壁よ我が意のままに隔絶せよ≪ウォーターウォール≫

>水弾よ我が意に従い敵を撃て≪ウォーターバレット≫

……以下略


<闇魔法>

・闇を思いのままに操る魔法。

攻撃:E

防御:D

支援:A

回復:D

属性特徴:吸収・隠蔽

・闇の魔法と詠唱一覧

>闇球よ我が意に沿って敵を撃て≪ダークボール≫

>闇壁よ我が意のままに隔絶せよ≪ダークウォール≫

>闇弾よ我が意に従い敵を撃て≪ダークバレット≫

……以下略


<光魔法>

・光を思いのままに操る魔法。

攻撃:E

防御:B

支援:B

回復:A

属性特徴:調和、遮断

・光の魔法と詠唱一覧

>光球よ我が意に沿って敵を撃て≪ライトボール≫

>光壁よ我が意のままに隔絶せよ≪ライトウォール≫

>光弾よ我が意に従い敵を撃て≪ライトバレット≫

……以下略



 ……何だろう、この漂うコピペ臭は……ま、まあ、肝心のところは分かったので良しとするか。

 ちなみに肝心な所とは属性特徴だ。持っている三属性全ての攻撃評価が低いところでは無い。攻撃力が低いのは殆ど気にしていない。……嘘です。本当は支援特化かよって内心で突っ込みいれてました。

 一度でいいからド派手な火魔法とか使ってみたかった……

 いや、こんな考えじゃ駄目だな。この三つの魔法属性にも良いところはある筈。特に≪闇魔法≫。総合的に見て評価が低いという事は他に何かがある筈!あるよね?

 まあ、あると思っていよう。じゃないとやっていられない。


「さて、何から始めるか……」


 ちなみに部屋の中には誰もいない。一番近くにいるのは部屋前の護衛さん達だ。

 今日の護衛さん達はレベル40、48、52の新米さん達らしく、誰もスキルに魔力感知を持っていなかった。つまり問題さえ起こさなければ好きなだけ魔法の練習が出来る日なのだ。


「まあ、とりあえず。光壁よ我が意のままに隔絶せよ≪ライトウォール≫」


 身体からほんの少しだけ魔力が抜ける。

 ちゃんと発動した様で目の前に1mくらいの光でできた障壁が出来た。ペタペタ触ってみる。うん、確かに存在してる。コンコンとノックしてみる。意外に堅い。

 いや、≪光魔法≫は防御評価Bだったからそれで普通なのか?

 まあいいか。さて、次は≪闇魔法≫を試してみるか。


「闇球よ我が意に沿って敵を撃て≪ダークボール≫」


 30㎝くらいの闇の球が手元に出現した。えぇっと。ああ、飛ぶところまでイメージしないといけないのか。


「あの壁目掛けて飛べ」


 指を指したのは扉から離れた位置にある壁だ。その場所の理由は、何かしら起こって護衛に見つかったら意味がないのだから。

 俺の指示通り闇球は飛ぶ。ただし、速度が物凄く遅い。ふよふよ~という感じだ。

 そして、闇球が壁にぶつかった。


――ふぁさぁ


 文字通り空気中に溶けて消えた。


 ……。


「え、終わり!?」


――ガチャリ


「お嬢様、何かありましたか?」

「あ、うーうん。なんでもないよ?」

「そう、ですか。失礼しました」

「うん?」


 よく分からないと首を傾げてアピールした。確認に来た護衛さんは何かひっかかる所があった様だが、素直に職務へと戻ってくれた。よかった……気を付けよう。


 さて、次は≪水魔法≫……何だけど、どうするか。


「うーん」


 とりあえず少量の水だけ出して色々試してみる事にした。まあ、俺には最終手段でおねしょに見せかけるという裏技がある。乳母さんには悪いが今は力をつける事が先決なのだ。


「では、早速と。水球よ我が意に沿って敵を撃て≪ウォーターボール≫」


 手元に5㎝台の水の球が出現した。


「さて、これを闇の球や光の壁の時の様に消し去ろうと思ったら……蒸発しろ」


 少しずつ水が熱を持っていくのが分かった。うわ、熱っ。

 俺は思わず手元から水球との距離を1mくらい離した。それくらい熱かったのだ。


「ふー、ふー。うぅ、ちょっと火傷した」


 困ったな……コレは見られたら色々と勘繰られる可能性がある。


 ……。


 ああ、回復魔法で直せばいいのか。


「我は水の癒しを求める≪アクアヒール≫」


 どうやらしっかりと魔法は発動した様で火傷して熱を持っていた部分から腫れと痛みが引いていった。良かった。今度から魔法の実験の時は気を付けないとな。


「あ、そう言えば水球」


 本題を思い出してそちらを見てみると、水球の成れの果てとでも言うべきモノが一滴だけ残っていた。まあ、それもすぐに蒸気となって消えた。


「うーん、物理攻撃に使えそうなものが光魔法しかない……」


 何とかして他の二属性が物理攻撃に使えないか考えてみる。


 ……。


 ああ、水は凍らせて鋭くすればいいのか。闇は……まあ、鎖っぽくして固めてみるか。

 そんな訳で、早速試してみる事にした。

 ただ、気を付けなければいけない事がある。今、思いついた様な魔法は存在しないので無詠唱か創作詠唱で発動するしかないのだ。

 正直、かなりの集中力がいるだろう。それこそ、誰かが入って来ても気づかないくらいの集中力が要求されると思われる。

 よし、部屋の鍵閉めとくか。


 俺は≪無魔法≫で音が鳴らない様に気をつけつつ部屋の鍵を閉めた。うん、シンプル・イズ・ザ・ベストとでも言うべきかな?なんだかんだ言って物理的に作用させ易い≪無魔法≫が一番使い勝手が良い。


「さて、やりますか」


 俺は意識を切り替える。なんせ初めて使う魔法だ。子供の演技で|意識まで(・・・・)幼児化している状態では使えるモノも使えないだろう。


「ふぅ……」


 俺は息を吐き、呼吸を整える。その状態で胡坐を組んだ。そして目を閉じる。魔法を使う前に瞑想を行っているのだ。

 ≪精神制御≫と≪催眠術≫を使えばすぐにでもその状態に入れるのだが、その二つ――特に≪催眠術≫――はなんだか身体に悪そうなので無理をしなければいけない時以外は使わない事に決めている。


「よし」


 まずは魂から魔力を引き出す。それを外に放出する過程の途中に肉体を通して魔力を変質させる。変質させる属性は水。

 俺は無造作に放出している魔力を手元に全て集める。少し魔力の量が多いな。凝縮を意識して無理矢理詰め込んだ。

 俺はそこから手元の水の活動を分子レベルで低下させる。原理を意識した上で冷却を行っているのだ。

 ……うーん、駄目だな。上手く安定しない。

 その為、俺は仕方なく補助を加えた。


「『凍れ≪Spermatophyta≫』」


 神術語による概念的な凍結だ。


 ……。


 一瞬で安定しなかった魔法が完成した。何と言うか……もう今のはもう別物な気がする。いわば過程を飛ばして結果だけ得たような気分だ。

 目を開けてみると手元にしっかりとした氷の短剣が存在していた。


「あ」


 ここで俺は自分のミスに気が付いた。長時間の間、素肌で氷を握ればどうなるか。答えは明白である。

 俺の皮膚は氷の短剣に引っ付いてしまっていた。ヤバい、滅茶苦茶痛い。


「っ……『消滅しろ≪Disappearance≫』!」


 俺はすぐさま≪神術語≫で剣を消した。

 これで一安し――


――うづっ!?

 今度は頭部を謎の痛みが襲った。

 ≪精神制御≫で意識を保ちつつ原因を探る。こ、れ、は……大量の魔力の使い過ぎで体に負担がかかったのか?いや、何かが違、っう……

 俺は痛みを堪えつつ手に≪光魔法≫の≪ヒール≫をかけた。低温火傷の跡が残ったら困るからだ。

 ≪ヒール≫の魔法を使った事でさらに体へと負担が掛かる。痛みが身体中を駆け抜けた。


「ぐっ、最後に鍵を……」


 最後の力を振り絞り、俺は≪無魔法≫で部屋の鍵を外す。正直、音にまで気を回している余裕は無かったが、如何やら護衛達には気づかれなかった様だ。よかった……


――うぁ……


 最後の力を使い果たし俺は静かに気絶した。



     ◆  ◇  ◆



――ポーン。ポーン。


 脳内にメール音が響く。煩い。今は頭が痛いんだよ。


――ポーン。ポーン。


「うるさいなぁ……」


 俺は眠気を飛ばす為に頭を振るう。あれ、身体が小さいな。いや、大きい?


 ……。


 ……ああ、そう言えば転生したんだったな。


――ポーン、ポーン。


 たく、煩いな誰からだよ。



≪メール≫

題名:僕からだよ!!(怒)

本文:僕、メールに問題起こすなって書いたよね?ねぇ?書いたよねえええ!!

 何を早速やらかしてくれてるの!?君の所為で一時期、仕事が5%程増えたんだけど!?さらに言うと一年分の管理神の仕事が増えそうなんですけど!?

 神術語で消失命令は無茶過ぎるだろ!下手すりゃ世界の半消滅すらあり得たぞ!?

 とりあえず、――



 え、そんなヤバい事になってたの?あー、うん。そりゃキレられるわ。えっと、何かごめんなさい。あの人がここまで取り乱すのって珍しいなぁ……。うん、何となくやらかしたのだけは分かった。

 ……。

 よし、反省終了。続き読むか。



――神術語で『消』の文字は危険を伴うから今後絶対に使わない様に。

 まあ、こう言えば君が二度と使わないのは分かっている。……もし、事故を起こせば君の大事な美月ちゃんごと世界が消滅するぞ。

 あと、――



 ――っ!はい、もう絶対に使わないです。今回の事は誠に申し訳ございませんでした。



――君自身の事だが非常に危険な状態だったぞ。何たってこの三年間、ほぼずっと仮死状態で眠り続けていたんだからな。――



 ……。


 ……。


 ……は?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

後書き;少々、無理のある展開ですが心広く見守って頂けるとありがたいです。

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