第3話 フローリアお母様はチート


 この間、一歳になった。レベルの方は17に上がった。

 ただ、指標になる人が少ない為、コレが高いのか低いのかが分からない。

 俺の周囲で一番レベルが高いフローリアお母様の場合はレベルが178あった。逆に一番低いのは乳母さんで34だ。

 うーん、乳母さんが普通だとしたら一歳で17は異常なんだよな……まあ、一歳で17が普通だったとしても分かる事はある。それは、フローリアお母様のレベルは確実に異常という事だ。

 なんせ次点が俺付きの護衛さん達で、そのレベルが92と83なんだから。倍くらい違うんですけどェ……

 <管理神の祝福>で見られるステータスが名前とレベルと種族だけなのも驚きだ。それ以外は全て『詳細不明』と出た。……マジか。

 当然、俺の持つ<管理神の祝福>のレベルは以前と比べて各段に上がっている。具体的に言うと34になっている。未だに上げ方がよく分からない加護の方と比べて素晴らしい成長っぷりだ。

 そろそろ<管理神の加護>で表示できるステータスよりも<管理神の祝福>で見られるステータスの方が多くなるかもしれない。まあ、だからといって<管理神の加護>のレベル上げをしなくなると言う訳では無いのだが。

 現在の自分を自己分析しているとフローリアお母様がやって来た。最近、フローリアお母様はよくこの別館へ足を向けてくれる様になった。今日は一人で来たらしい。

 護衛がいないからか今日は剣をぶら下げている。


「ふわぁ……」


 思わず見入ってしまった。それをフローリアお母様が苦笑してみている。


「ふふ、やはりそういった所は私に似ているのだな」

「あう~?」


 俺は親指を口に入れながら首を傾げる。


「まだ難しかったな」

「おかあはま~?」

「うぅ……やはり可愛い過ぎる!」


 あ、悶えた。やっぱりフローリアお母様が身近な人達の中で一番からかい甲斐があるよなー。


「むぎゅ」


 今日もまたフローリアお母様の大きなお胸に潰される。苦しい。


「ルナちゃーん。むぎゅー!」


 あ、相変わらずな様子を見て壁際の乳母さんが苦笑してる。まあ、一歳になってもこれじゃあな。何となく10歳くらいにならないとこの扱いが変わらない気がする。


「おかあさまーくるひー」


 お、珍しく「お母様」を舌足らずにならずに言えた。


「ふふ、ルナちゃんごめんねー……ってハッ!拙い、このままでは母親の威厳が!」


 思わず苦笑いしそうになったが子供がそこまで聡いというのは不味いだろう。

 ここは、よく分かってないフリをしておこう。


「あぶ~?」

「ふふ、今はまだ良いか。ルナちゃんお母様と遊びましょーねー」

「あいー!」


 フローリアお母様は俺の体を寝台から抱き上げ、床に下ろした。

 ……こうやってズルズルと親馬鹿が続くんだろうなぁ。何となくそう悟った。

 さてと、そろそろこの間出来る様になったアレをご覧に入れますか。

 俺はフローリアお母様の足元まで這って行き、右足に掴まった。


「ん?どうしたんだ?」

「んしょ、んしょ」

「お、おい!それは、まさか!?」


 そう、俺は右足を借りて立ち上がったのだ。

 顔はにぱぁっと笑顔だが、内心ではドヤ顔である。まあ、そんな顔を表に出すようなへまはしない。


「あいー!」

「立った……立ったぞ!おおー!やったなー!」


 フローリアお母様は俺を持ち上げて高い高いをする。うーん、華奢な身体なのに力強いよなー。流石レベル178。

 ちなみに今言っている力は握力の話ではなく、ずっと俺を持ち上げ続けられる腕力の方を言っている。何となしに下を向いてみた高い。

 ――って……あ。


「うおっ!」


 うう、漏らした。何故だろう、いつもの事なのにフローリアお母様の前だと凄く恥ずかしい。死にたい。


「びぇぇぇええええええ」


 その後、おしめの取り換えは乳母さんがしてくれました。ありがとうございました。



     ◆  ◇  ◆



 生まれてから一年と九ヶ月になった。

 そこにビックニュースが入って来た。勘の良い人なら気付いただろう。何とフローリアお母様が妊娠したのだ!やっと、美月に会える!

 ただ、そこで問題が出て来た。美月に俺の事をいつ話すかだ。初めはすぐにでも話すつもりだったのだが、それならば神様がわざわざ伝えなかった意味が分からない。


「うーん」


 唸っているとまた、フローリアお母様がやって来た。妊娠中なのによく来るよな……あれ?それで、流産とかないよね?ね?

 ヤバい、めちゃくちゃ心配になって来た。


「ふふ」


 何だろ、今日のフローリアお母様はご機嫌だな?いや、まあ、いつもご機嫌なんですけどね。ただ今日はいつにも増してという話だ。


「おかあさま~?」

「ああ、すまない。今日、ついに≪浄化≫の魔法を覚えたのだ。それが嬉しくてな」

「まほ~?」


 え、魔法ってそんな事出来たの?

 俺が<管理神の書斎>で覚えたのって思い通りに魔力で物を動かしたり、身体に纏って身体能力を強化したりするモノだけだったんですけど……


「ああ、そうか。ルナ、魔法と言うのはな……あー、まあ、こういうモノだ。≪|微風(ウィンド)≫」


 俺の体を涼やかな風が通り抜けていった。

 ……途中で説明を端折ったのは説明できなかったからじゃないですよね。きっと、面倒くさかっただけなんですよね。お願いします、そうであって下さい!

 じゃないとフローリアお母様に鍛えて貰うという考えが!


「おー!」

「ふふ、どうだお母様は凄いだろう」

「? あいー!」


 一応、よく分かっていないフリをしておいた。乳母さんも見てるからね。

 結局その後、魔法について詳しい事をフローリアお母様が語る事は無かった。無念である。



     ◆  ◇  ◆



 二歳になった。

 最近、フローリアお母様は来ていない。妊娠しているのだから当然だろう。寧ろ来られてもこちらが困る。

 あとは先日、ついに<管理神の加護>のレベルが10を超えた。つまり≪世界記録アカシックレコード≫が使える様になったのだ。

 そして今、俺は≪世界記録アカシックレコード≫の便利さを噛み締めていた。

 まず≪世界記録アカシックレコード≫だが、これはインターネット検索を思い浮かべて貰えれば分かると思う。Go○gleの異世界バージョンである。

 権限レベル1は一般的に知られている知識の検索権だ。コレのお蔭で出来る事はだいぶ増えた。コレに関しては感謝してますよ神様。


 あとは、ステータスの表示も増えた。今のステータスはこんな感じだ。



≪ステータス≫

名前:ルナルティア・ノートネス

レベル:26

性別:女

種族:|人間(ヒューマン)

クラス:|役者(アクトレス) レベル62

    |芸者(テクニシャン) レベル1

    |脚本家(シナリオメーカー) レベル106

HP(生命力):53/53(+23)

MP(魔力):35679/35679

ST(体力):53/53(+23)

ATK(攻撃力):99(+66)

INT(知力):14792(+7396)

DEF(防御力):54(+27)

MIND(抵抗力):94957(+30000)


先天スキル

・魔力操作 レベル368

・魔力感知 レベル194

・精神制御 レベル512(+112)

・並列思考 レベル314(+329)

・催眠術 レベル226(+112)

・詐欺術 レベル429(+268)

・神術語 レベル243(+156)

・料理 レベル142(+51)

・裁縫 レベル138(+51)

・無魔法 レベル492

・水魔法 レベル0

・闇魔法 レベル0

・光魔法 レベル0



 相変わらずな突っ込みどころの多さである。

 大量の先天スキルは<管理神の書斎>での手伝いが影響しているのだろう。≪魔力操作≫は≪無魔法≫を使いこなす為に、その≪無魔法≫は大量の書類処理の為だ。そして、≪並列思考≫と≪魔力感知≫は魔法を使っている間に自然に身に付いたものだ。

 ≪精神制御≫と≪催眠術≫は自己暗示に使い続けていたからだろう。|<管理神の書斎>(あそこ)で五年間やっていくにはそれくらいやる必要があったのだ。という事は無駄に高いMPやMINDはあそこで過ごしていた時に無茶をしまくってたから身に付いたのかな?

 ≪料理≫と≪裁縫≫は前世での趣味だ。まあ、演劇部なら誰でもやってるよね。

 ≪神術語≫はあいつの言ってることがどうしても気になった為に頑張って覚えた。まだ使いこなせていないからかレベルは高くない。覚えたのは4年目に入った頃だと思うからそれも仕方ない。あそこ時間の感覚なくなるから多分だけど。

 残る≪詐欺術≫はあいつとの駆け引きの時に覚えたものが、こちらに来てから赤ちゃんの演技をしている事で上がったのだと思う。複雑な気分だ。おかしな奴と思われたくなくて演技しているのだが、騙していると言われればその通りなのかもしれない。

 ……まあ、人生誰しも自分を偽って生きてるんだ。俺だけが他人を騙しているんじゃない。そう割り切っておくしかないだろう。


「はぁ……」


 ダメだな。少し陰気な気分になった。

 今日このまま起きていても演技が失敗しそうで怖いな。

 そんな理由がある為に今日はもう寝る事にした。おやすみなさい。良い夢(美月との思い出)が見れたらいいな。

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