第7話

 楽しみだった美雨の誕生日……当日。

 彼女を喜ばせようと用意したプレゼント……こんなもので、しばらく会えなかったことへの埋め合わせになるのか……少し不安だった。

 膨れ上がりそうな不安を、ねじ伏せる。

 不安に思うことは、美雨を信じないということだ。そんなのは不誠実だ。

 美雨は、きっとわかってくれる。受け入れてくれる。

 今日、はっきりと伝えるんだ。改めて、大好きだって。

 美雨のことが大好きなんだ。ずっと一緒にいたいって。

 …………なんだかプロポーズみたいだな。

 難しく考えるのはやめよう。

 つい感情を抑えがちだから、今日くらいは素直になろう。

 今日の為に、美雨の最高の誕生日のする為に……今まで頑張ってきたんだから。

 美雨は、いつも時間通りにやってくる。

 出掛けようと言った俺の提案は、無かったことになった。

 いつもの通り、俺の家が待ち合わせ場所だった。


「遼君! ……久しぶりだね」

「久しぶり、美雨。今日はおめ」

「もうバイトないの?」

「えっと、そう……しばらく休みかな」

「そうなんだ」

「誕生日、おめでとう」

「ありがとう」


 美雨は、真っ白なブラウスに漆黒のフレアスカートを着ていた。

 いつもと違った、モノクロなコーディネートだった。


「なんか……イイね」

「えっ?」

「いや、あの……かわ、いいね」

「あ、うん……そっか。ありがとう。遼君」


 恥ずかしくなった俺は後ろ手に隠していたプレゼントを差し出す。

 彼女が欲しいなと口走っていた、ネックレス。

 包装紙で、中身を悟ったのか美雨はフフッと笑みを零した。


「…………ありがとう」


 そして、そのまま俯く。とても深く感動してくれたように見えた。

 今までの努力が報われた。

 俺は内心で何度もガッツポーズをとっていた。


「遼君は優しいね」

「いやあ……どういたしまして」

「これ買うために、バイト頑張ってくれたんだ」

「大したことじゃないよ。全然、平気だし」

「私のことを……本当に想ってくれているんだ」

「まあ当然だよね。彼女なんだから」

「――――ありがとう。本当にありがとう……遼君」


 美雨は、満面の笑みを浮かべてくれた。

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