第7話振り返れば奴がいる
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山神山荘は恐ろしい程静まり返っていた。
三浦は寝息を立てていた。事件の疲れもあったのか食事の後、みな眠いと言って各自部屋へ戻ったのだ。
刑事2人と何やら準備していた女の子とネギ坊主以外は‥‥。
静けさと暗闇の中、三浦の部屋の扉がゆっくり開いた。三浦が眠るベッドへその人物は足音を立てず近寄るとひとつ深呼吸をした。手には先を鋭く磨いた短い杖を持っている。それを両手で強く握ると頭の上に振りかざした。
その時!
「なるほどね~。その女性を殺したら、あなたの復讐は終わりなのですか?」
その人物の後ろには、壁に寄り掛かり腕を組んだ清野が立っていた。その人物は慌てて振返った。
「初めまして。私、探偵の清野耕助と申します。今回の事件を調べてましてね、わざわざこんな所まで来てしまいました」
その姿勢のまま清野はニヤ付いていた。暗闇にうっすら見える清野に、その人物は焦りを隠せなかった。
「大体のことはさっき聞いて来たんですよ~。一緒にいたでしょ、小さいのがふたり。あれね、私の助手なんですよ。
ねっ!ルミコ君、コロ助君‥‥」
「クロスボンバー!!」
清野が言うのと同時に、ルミコとコロ助は先程佐藤に仕掛けた技をその人物にくらわせ取り押さえた。
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今の騒ぎで一同が部屋に集まって来ていた。
この事件の犯人は?
ルミコとコロ助が取り押さえた人物とは?
そして真相とは?
◎未だにどこに行ったのかわからない
【悪魔指揮魔術団団長 小田徹】
◎コロ助の「でぇーいじょーぶだぁー」が気に入り密かに練習していた
【副団長 ジャクソン井上】
◎副団長の行動が理解できないで悩んでいる
【団員 林麻理子】
◎今度の映画はルミコとコロ助のアドバイスから【ブタの毛姫】にしようかと思っている
【豆澤アキラ】
◎脇役ながら活躍した悪魔指揮魔術団の追っかけ
【川下龍二】
◎川下に嫌々着れて来られた
【三浦美香】
◎フリーライター
【安帆眞子】
◎明日の朝食は【道場の姿焼き】にしようかなと考えている
【道場七三郎】
◎探偵だし途中から山神山荘に来たので犯人ではない
【清野耕助】
◎右手を上げて人差し指を出しながら「イチバーン!」と叫んでいる
【納谷ルミコ】
◎来週会社で開く新人歓迎会の幹事を任された
【コロ助】
◎飛べないブタはタダの
【ブタ】
◎捜査一課きってのお荷物
【花上四太郎】
◎最近ルミコにブタの扱い方を教わった
【早月メイ】
◎ギネスブックにも載った長寿ラジオ番組怒っていいともの司会者
【ハモリ】
◎清野が貯金箱に入れたメダルをゲーセンで使ったら一万枚に増えた情報屋
【砂かけじじい】
◎愛しいあの子が買い物に来たが瞳に涙を浮かべているのに気が付いた
【コンビニ店員 牧村君】
◎ハモリにかなり怒られヘコんで清野に電話したが着信拒否されている
【怪盗ヒゲゴリラこと山田健二】
◎「京都におこしやす~」が中々言えず練習している鹿児島県出身
【桃やっこ】
◎この10円で何か世の為に出来ることがあるはずだと考えているホームレス中年
【沢田卓郎】
◎喫茶店の隅で占いを始めた
【占い師アブドゥル】
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「あなたが犯人だったんですね‥‥」
清野はニヤ付きながら壁に寄り掛かっている。
「一体何事ですか!」
道場が慌てた顔で部屋へ入って来た。
「探偵、いつまで待たせるんだ!」
シャワーを浴びた佐藤と花上が痺れを切らせて部屋へ入って来る。
「なんだ!どうしたんですか?」
同時に井上と林が続いて中に入る。
「何?どうしたの?」
三浦が騒動で目を覚ました。
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「ねっ、川下さん‥‥」
「あっ、あんたら何なんだ!彼女の身を守ろうと部屋へ来て見れば!お前ら離せ!」
川下がルミコとコロ助を振り払い、立ち上がって清野を睨み付けた。清野はニヤ付きながら平然としている。
「今回の事件、奇妙なことが多かったんです」
「お前、何を言ってるんだ!」
「混乱した中でも的確に判断し、リーダーシップを発揮した」
「だから、それが何なんだよ!」
「暗闇に一筋の光が差し込むと、人はそちらに行きたがる。たとえ間違ったことになろうともね」
「どういうことなんだ探偵!」
佐藤がシャシャり出て来る。
「つまり、探偵役に徹すれば自由に事件をコントロールできるってことですよ」
「えっ?」
佐藤は全然わかってないらしく、花上に聞くがこちらもわかっていない様子だった。
「なぜ、田中さんが殺された時、なぜ一ヶ所に集まろうと言ったんですか?」
「なぜ?って次に誰が殺されるかわからないからじゃないか!」
「皆さんに見られたくない物があったんじゃないですか?」
「ふっ、何をだよ!」
「神田さんの遺体です‥‥」
一同は驚きの表情を見せた。
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「何言ってんだ!あいつは犯人だろ!」
「いいえ。自殺した様に見えますが、偽装した所が何点かありました」
「それと俺が犯人だって証拠があるのかよ!」
「あなた田中さんが殺された後、現場でナイフが発射された装置を確認したんですよね?どこにありました?」
「テーブルの下だよ」
「おかしいですね~、確かにそれらしき装置はありましたけど混乱でテーブルがほとんどひっくり返えっていたんです。そうじゃないのもありましたが、動かされて到底田中さんには当たらない‥‥」
「田中さんが刺された後、ひっくり返されたんだろ!」
川下は苛立った様子で清野を睨み付けた。
「それは有り得ません。発射されたのは、コロ助君が事態を収集しようとした後ですから‥‥。」
「それだけで俺が犯人なのか?笑わせるな!じゃあ、佐原さんや峰さんの2人を見つけた時、俺は三両目にいたんだぞ!」
清野はさらにニヤ付きながら平然としている。
「そう、いくつもの犯行を行うにはもう一人共犯がいるんですよ!」
清野は下に置いていた銀のマスクを持ち、それをある人物に円を描く様に投げた。
「あなたが銀のマスクです‥‥」
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「銀のマスクはあなたです、林麻理子さん」
一同が一斉に林を見た。林は青ざめた表情で震えながら
「どっ‥‥、どうして私が‥‥?」
「ご主人様ホントにこの姉さんナリか?」
「そうさ。今迄銀のマスクを演じていたのが林さんあなたです。これを見て下さい」
清野が一枚の紙切れを取り出た。
【井上は乗客役に徹してくれ、リアリティが大事だから、衣装部屋には行かないこと。これを見たらすぐ処分してくれ 小田】
「井上さんこれは誰から受け取りましたか?」
「林君から受け取って‥‥」
「そんな‥‥、メモを渡しただけで犯人だなんて‥‥」
「この事件は、劇団員がみな乗客役になっていることが大事なんです」
「探偵、なんでそうなるんだ!」
清野は呆れた顔で答える
「乗客役は井上さん、峰さん、田中さん、林さんあなたは何の役だったんですか?
「わっ‥‥、私も乗客役です‥‥」
「でしょうね、みんな進行状況がわからないが自分の役回りはわかっていた。田中さんは一番最初にいなくなる予定なのに衣装部屋の鍵は持っていない。しかし、佐原さんだけが鍵を持っていたんです。佐原さんに銀のマスクは小田さんだと思わせておいて行動する」
「でも、峰さんが最初に殺されたじゃないですか」
花上がシャシャり出て来る。清野は構わず話を続けた
「食事を終えた男が豆澤さんに話掛けたそうですね?」
そう言うと清野は豆澤に視線を送る。
「そうじゃ、あの男
《劇団の最高の舞台をお見せ致します》
と言っとった!」
「あれは、峰さんではなく林さんなんですよ」
「なんじゃと!」
「元々この劇団は素顔を出さないことで有名です、だから田中さん以外他の乗客にはわからない。劇団の衣装部屋にありましたから」
「じゃあ、あの首が折れ曲がった死体は何なんですか!」
花上が叫ぶ中、川下は怒りの表情で清野を睨み付け林は怯えた表情のまま動かなかった。
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「ここに来る前に河川敷であった焼死体の事件を調べてました。その死体は丸焦げで肉の塊の様でした。しかしよく見ると首が曲がった感じで取れていました。」
清野は壁に寄り掛かるのを止、め歩きながら時計を見た。
「もうそろそろだな‥‥」
「清野さん!河川敷の死体の身元わかりました!」
メイがあわてて部屋へ入って来た。
「小田さんだったんだろ?」
清野は平然と答えるが一同は驚きの表情を隠せないでいた。
「どうしてわかったんですか!」
「近くに免許とか髪の毛が付いた服とか落ちてたでしょ?」
「はい!それを鑑識に調べてもらったらDNAが一致しました」
「やっぱりね。多分あの死体は峰さんだよ」
「えっ!え~!!どういうことですか?」
メイは訳がわからず驚くしかなかった。
そしてコロ助は清野から何かを聞くと部屋を出て行った。
「峰さんの死体と小田さんの死体を首だけ交換したんだ。小田さんの首なし死体はあらかじめ無人駅に置いといてね。焼死体の身元が明らかになれば、無人駅の死体は身元不明の死体になる。しかし予定が変り死体を出さなくてはいけなくなった」
「探偵、例の田中さんが衣装部屋に行ってしまうからか?」
「ブタえもん、中々鋭いですね。だから峰さんの首を使ったんです。首が変に折れ曲がった様に見えたのは。簡単に首と人形を繋ぎ合わせたからだと思います。しかし、佐原さんが近寄り死体を触ってしまった。人形だと気付かれぬ内に衣装部屋へ佐原さんを連れて行き撲殺したんです。その後佐原さんの首を無人駅の死体に置いたんです」
「清野さん、峰さんの首はどこにあるんですか?」
「川下さん、あなた降りる時の荷物、一泊にしては多かったのではないですか?」
「そんなの個人の自由だろ‥‥」
「そうでしょうか?乗車した駅と終点の防犯カメラで確認させて貰いました。明らかに荷物の色形が違うんですよ」
清野は口元をさらに歪めてニヤ付いていた。
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「ご主人様なかったナリよ~」
コロ助がニヤ付きながら部屋にやって来た。
「ほら見ろ!探偵さん、俺のバックに首なんてある訳ないだろ!」
清野は川下をジッと見つめ
「川下さん、よくバックに首が入れてあるってわかりましたね?」
「はあ?あんた何言ってるんだ?」
「私は荷物が違うんですよって言ったんですけどね」
「今の会話からじゃ誰だってそう思うだろ!それにネギ坊主が見て来た言ったのが、証拠だろ!」
「コロ助君、探し物はこれかい?」
清野はポケットからコロ助用ベアクローを出して渡した。
「いや~、焦ったナリ~。列車の中探し回ったナリよ~」
「と言うことです川下さん‥‥、さっき調べたら、あなたの部屋にバックはありませんでした。まさかここにあるとはね‥‥」
清野は三浦のベッドの横にあるバックを指差した。ルミコは佐藤をジッと見て首をバックの方向に振った。
「俺が開けるのか!」
佐藤が渋々取ろうとした、その時川下が素早くバックを奪った。
「止めろ!!」
清野は役にたたない佐藤を押し退け、川下の前に立ち
「元々、あなた達の狙いは死体を交ぜて身元を断定させる。遺体が本物なのかわからないままにしたかった。名東線の列車事故の様にね‥‥」
一同は驚きで清野の話を聞くしかなかった。
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