第6話探偵さんの時間ですよ~

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長いトンネルを抜けると、既に夜になっていた。列車は徐々にスピードを落し、暗闇の中でゆいつ照明を照らしている駅に入っていった。


「皆様お疲れ様でした。終点山神山荘です。これより山荘に移動して頂きます。」

車内アナウンスが流れ格車両の扉が開いた。


「とりあえず、皆さん降りましょう」

川下が疲れた様子の三浦を連れ一同が集まっていた車両へ戻って来ていた。


駅に隣接する山神山荘は人里離れた場所に建っていた。人があまり来ない様子で駅は静まり返っていた。だが、1人の男が立っていた。


「皆さんお疲れ様でした。今回警察役を頼まれました、警視庁捜査一課の佐藤警部補です!本物ですよ~」

ハンバーガーの似合うおっちゃん佐藤警部補は、そう言うと警察手帳を出して照れくさそうに笑った。


「警部補~!」

花上が嬉しそうに佐藤へ手を降った。


「おっ、お前!北海道に言ったんじゃないのか?」

「いや~、色々ありまして。あっ、一緒にルミコちゃんとコロ助君がいますよ~!」

「なに!タライ女とネギ坊主がいるのか!」

佐藤が驚き、辺りを見渡した。

目の前にグッと握った右腕を高々と上げ、右肘にサポーターを付けたルミコが立っていた。


「ヘイ!コロ助!ブタ狩りの時間だ!」

「ハッ!」

そう言うとコロ助は素早く佐藤の後ろに回り込み、右腕を掲げた。


「そう簡単に何度も殺られる俺じゃないぞ!桜の大門の名にかけて!」

佐藤が言い終わらない内にコロ助は背後に走り寄って来ていた。コロ助は佐藤の首筋をラリアートのように捕らえ、肘に固定しそのまま佐藤を引きずり前に走り続けた。目の前には右腕をコロ助と平行にして、不気味にほくそ笑みながら走って来るルミコが見える。


「ぐわ、離せ!」

「くらえ!クロスボンバー!!」

ルミコとコロ助がお互いの右肘を、佐藤の首へラリアートした。


「ぐへ‥‥」

その勢いと風圧で佐藤の綺麗に整えてあるヒゲが抜けていく。佐藤はその場に崩れ落ちた。


「今頃出てくるな、ブタえもんが!」

「EXILE探偵事務所は、パーフェクトナリ!」

2人は一同が唖然とする中、今迄の不満を解消した満足顔で山神山荘へ入っていった。

倒れている佐藤を振返ることなく。


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「お待ちしておりましたよ皆さん。さあ、こちらへ!」

山神山荘の玄関に一人の男が立っており一同を出迎えていた。


「鉄人!お久し振りです。井上です」

「おっ、井上さん。久しぶりですねぇ。あれっ、そういえば小田君は見えませんが‥‥?」

鉄人と呼ばれるこの男は道場七三郎(みちばななさぶろう)この山神山荘の主であった。道場は数年前脱サラをした後、この山神山荘の経営を始めたようだ。団長の小田とは以前から親交があり、悪魔指揮魔術団のミステリーツアーの際には常にこの山荘を利用していたのである。


「小田さんいなくなったんです。」

「あちゃ~、またかよ!あ~、きっとその変でパチンコでも打ってるんじゃないかい?」

どうやら団長の小田はミステリーツアーの度ちょくちょくいなくなる様で、しかも大のギャンブル好きのようでもあった。



その後一同はそれぞれの部屋に案内され、夕食までの時間を自由に過ごした。


しかし、その頃花上と佐藤は列車に戻り、車内で起きた一連の事件について状況を整理していた。


「まさか本当の殺人が起こってたなんて‥‥」


「はい。それより警部補はなんでここに?」


「いや~、ここの劇団から依頼があったようでな。非番の刑事達に声がかかったんだ。事件の解決役はリアリティのある本物の刑事が良いらしいって事で。まっ、それでワシがかって出たんだ。」


「‥‥。いつもの警部補なら若手に任せそうですけどね?」



少しの沈黙の後‥‥



「いや‥‥、主役だって言われたからつい‥‥」


その時だ!


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「全く‥‥、ブタもおだてりゃ何とやらって奴だな!」


「ブタは所詮ブタ。ここで息の根を止めてやる!」


次の瞬間、ホームの端には歌舞伎のクマドリを顔に書いたルミコと、頭部に角を備え付けたコロ助が背中合わせになり、その状態でルミコがコロ助を背負った。そして佐藤に向け猛突進して来る。コロ助の角は確実に佐藤の心臓を目掛け襲いかかってきていた!


「死ね!!ロングホーントレイン!!」


「ぎゃー!」


突進の勢いで煙が立ち込める!


しかし‥‥、間一髪その角は佐藤には届かなかった。


「チッ!折れている方のロングホーンだったか!」


「命拾いしたな!ブタスペシャル!」

そう言うと仰天する佐藤と花上をよそにルミコとコロ助は悠然とした足取りでその場を離れて行った。?


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ルミコとコロ助は暗闇の中に誰かを見つけて手を振った。


「いや~、相変わらずやってますね」

そう言いながら歩いて来たのは、自称探偵の清野であった。その横には息を切らせたメイも歩いている。


「探偵!お前来てたのか?」

「ええ、この時間に山荘まで昇って来るは大変でしたよ。車じゃ昇って来れないしね」

「早月君もどうしたんだ?」

「警部補こそこんな所で何してるんですか?何度連絡しても携帯電話繋がらなかったんですよ!」


「メイ君それはね‥‥」

「花上!お前は黙ってろ!」

「まあ、いいじゃないですか」

清野は2人の会話を聞きながら笑った。


「ところで警部補、現場はこの列車ですね?」

「おう、そうだ。私も今調べたが何もわからんのだ」

「そうですか。ルミコ君とコロ助君、一緒に付いて来てその時の状況を教えてくれ。ブタリンゴの相手はいつでもできるだろ?」

「おー!」

2人は右手を上げて勢いよく叫んでから清野の後に付いて行った。


「花上から列車内のことは聞いたが、早月君何かわかったことはあったのかね?」

メイはことの経緯を話した。


「河川敷の遺体と今回の列車の事件は関連性があるのか‥‥」

「私には清野さんの意図が全然わからないんです」

「ん~」

佐藤は腕を組み眉間にしわを寄せて考えたが何も浮かんではこなかった。


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「まだ、終わっていないのかもしれませんね?」

清野は事件の起こった車両を調べ終えると、開口一番そう語った。


「どういう事だ探偵?」

佐藤が不思議そうに問う。


「え~とですね‥‥、説明は後にしましょう。皆さんとにかく急いで山神山荘へ!」

清野の呼び掛けにより一同は急ぎ足で山荘に戻るのであった。


ガゴーン!


プスッ!


ザザー!


ドスッ!


そして一同は山荘に到着した。

山荘はただならぬ空気に包みこまれているように、一同は感じた。全員に緊張が走る。


焦った様子の清野探偵。その様子に触発され、固い表情のメイ。何が何だかわからなく、パニック気味の花上。ほくそ笑むルミコとニヒルな表情のコロ助。


そして‥‥


粉塗れで土塗れ、頭にタンこぶを作り、お尻に吹き矢の刺さった状態の佐藤がいた‥‥。

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