第4話黒い巨塔

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「とにかく、みんな一ヵ所に集まろう!」

川下が口火を切った。一同はそれに従がって、事態を知らない者には声を掛け娯楽スペースの一両目に集まることにした。


「田中まで殺されたナリね」

「さっき調べて見たけど、テーブルの下から発射されたナイフの様だね」

川下がコロ助の質問に答えた。


「花上、こういう時はまったく約に立たないナリね。何の為の警察手帳ナリ」

「えっ、この人警察の方なのかい?」

「ええ、まあ」

花上は申し訳なさそうに警察手帳を出して見せた。一同驚きと安堵が入り交じった表情を見せた。


「じゃあ、早く犯人見つけてよ」

三浦がややヒステリック気味に叫ぶ。


「こいつまったく約に立たないナリよ~」

「美香、落ち着けよ。みんな混乱してるんだ」

「あんた!よく冷静でいられるわね。」

「状況を把握して置かないと、今度は俺達が殺られる」

「あんた探偵ナリか?」

「いや、ちょっとミステリーに凝っていてね。」

「花上とは大違いナリね」

「うほん、皆さん集まりましたか?」

花上がひとつ咳払いをした。


「いや、団長の小田さんが来ていません。それに話しに聞いた男の死体もないんです」

団員の林麻理子(はやしまりこ)が答えた。

「ん~、謎は謎だ!」

「やっぱり使えない奴ナリね~」

「サッカー馬鹿‥‥」

「じゃあ、とりあえず自己紹介だけでもしないか?」

話が進まないと思い川下が仕方なく一同に問い掛けた。


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「僕は川下と言います。悪魔指揮魔術団のおっかけやってます。それで今回参加してるんです。そしてこちらが三浦美香。私の恋人です。」


紹介された三浦は疲れきってふてくされている。


「では次は刑事さんのお連れの方どうぞ」


「弁護士の納谷ルミコです。」


「コロ助と言います。グラビアアイドルやってます。」


「あの~、本当の事言おうよ‥‥」

呆れた様子で花上は答えた。


「ふん!なんでこんな人達に素性を明らかにさせなきゃいけないわけ?大体にして劇団員が絡んでるんだから誰が劇団員なのかはっきりするのが先よ!」


「フォフォフォフォ、お嬢ちゃんの言う通りじゃな。まっ、ついでにワシは豆澤アキラ。映画監督をやっておる。劇団員ではないがな」


「あっ!では‥‥、私は劇団の副団長やってますジャクソン井上です。そしてこの子が林麻里子君。劇団員は私たちの他に団長の小田、殺された田中、峰、それとマネージメントの佐原さんの6名です。」

林は軽く頭を下げた。


「あら、峰さんっていたかしら?あっ、私はフリーライターやってる安帆と言います」


「初めに死体として発見されたのが峰君だと思うんだが‥‥」


「峰さんって、初めに見た首が折れまがった死体ですか?その後から見当たらない‥‥」


「そうです。それとあの銀のマスクが団長の小田だと思うのです。今はどこに行ったのでしょう?」


「団長があやしいなぁ?やはり団長探すのが先ですかね?」


「刑事さん、こうは考えられんかね?」

豆澤が声をかけた。


「たとえば今まで起きた事件は全て演技だと‥‥」


「え?でもみんなたしかに死んでたと思いますよ豆澤監督?」


「一流の俳優達の演技をあなどってはいかんぞ。ワシも映画取ってるからわかるがな。崖の上ポロリの役者もプロじゃったなぁ。名前はなんじゃったっけ、ロバルトアンダーソンだったかな?実にいい俳優じゃった」


想い更けるように豆澤は言った。そして豆澤映画がなんと全て実写という事が明らかになりコロ助とルミコだけは興味がそちらに向いていたが、無論他の者達にとってはどうでもよい事であった。


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「たしかに!全て死んでる、いや死んだと思われる人達は皆、劇団員とはっきりした訳ですし、その線もありえますね。」


川下が閃いた様に答える。


「だったらねえ、井上さんだっけ?心臓に悪いからもうこんな茶番止めにしてくんない?」


三浦が怒りながらそう言った。


「いや~実は私、今回の内容聞かされて無くてわからないんです。まっ、それならとりあえず田中君の所に行って見ますか?」

と言って田中の死体を移した奥の車両に全員で移動した。


しかし、案の定そこに田中の死体は無かった。一同は皆、豆澤が言った演技説を確信しつつあったのだが、残されたおびただしい血痕と胸の奥のつかえは残ったままだった。

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