第3話 お手軽な我が家の自家製ピザ

 その日のあったか荘の夕飯作りの担当は、そこに住む立花竜であった。

 今日は確か、スーパーで油揚げが安く手に入ったと香織が言っていた。好きに使ってくれ、とも言っていたことだし、それをおかずにしようか。


「お味噌汁の具材にしようか……」


 そこまで考えて、ふと思い返す。

 待てよ? そういえばこの間、何かのテレビ番組で変わった油揚げの使い方を紹介していたな。それにしてみよう。


 まずは油揚げの油切りをする。お湯を沸かしてもいいのだが、今日は電子レンジで簡単に済まそう。適当な大きさに切ったラップの上にクッキングペーパーを置いて、その上に油揚げを乗せる。油揚げは置いたクッキングペーパーで包み、さらに包まれたそれをラップで包む。それを500Wの電子レンジで30秒ほど加熱する。風船のようにぷくーっと膨らむ油揚げ。しかしあんまり加熱し過ぎると、油揚げが爆発してしまうから時間調節は慎重に。


「前にエルが爆発させていましたね」


 そんな思い出にクスクスと思い出し笑いをする。


 チン、と電子レンジに呼ばれたので加熱した油揚げを取り出す。少し熱を冷ましている間に、他の具材の準備をする。確か野菜室にピーマンがあったな。あとはウインナーなんかもあったはず。ピーマンは輪切り、ウインナーは加熱しないで斜め切りにする。冷ました油揚げは、取り出したままの状態で手で押しつぶした。余分な油がキッチンペーパーに染み出ている。


 油揚げは切らずに、そのまま1枚丸ごとを使おう。ケチャップを少しフチを残すように、全体的に塗る。その上にウインナー、輪切りにしたピーマン、更にピザ用にチーズをパラパラとふりかけた。

 もう1枚あるが、それはお酒にも合うようにしようか。


 味噌と砂糖、みりん、酒を合わせたものを混ぜ合わせて味噌ダレを作る。ここにすりごまを入れれば万能ソースにもなるが、今日は入れないでおく。これをケチャップと同じように塗って、その上にはみじん切りにしておいた白ネギを散らす。

 これだけだと、多少味気ないな。野菜室を見ると茄子がある。拝借した。

 皮が付いたままピーマンと同じように輪切りにして、格子状に切れ目を入れる。それを先程の味噌ソースを塗った方の油揚げに乗せて、白ごまを適量ふりかける。最後にピザ用チーズを少なめに振って、準備完了。あとはこれをオーブントースターで焼き色がつくまで、大体8分〜10分程焼く。焼けてくると炒られたゴマの香ばしい香りや、とろけたチーズのまったりとした香りがトースターから漂ってくる。


「たまには私もお酒を飲みたくなりますね」


 チーン、高い音でトースターが焼けたよと鳴く。見てみれば、油揚げの外側がこんがりと色付いていて、チーズはもっと焼いてもいいよ、と言わんばかりにグツグツと波打っている。きっと端の方は、見た目を裏切ることなくカリカリに仕上がっていることだろう。これ以上焼いてしまうと、むしろ黒くなってしまう。一番美味しそうなこのタイミングで取り出した。

 最後にケチャップを塗った油揚げに、オリーブオイルをティースプーン一杯ほどの量だけ周りに垂らす。

 本物のピザには劣るかもしれないが、糖質も抑えられるし低コストでお手軽だ。味噌汁やご飯の準備をしようとして、部屋にあったか荘の住民が入ってきた。


「ああ、おかえりなさい。ちょうどご飯が出来ましたので、準備を手伝ってくれますか?」


 今日のおかずも、美味しく出来ていますよ。

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