第11話


 なにか大事なことをしようとしている自分を、なにか巨大なものが阻んでいる。

 VRのゲームをしているという感覚は消え、身を焦がすような焦燥感と、怒りを原料とした闘争心が体の中に充満する。

 逆転勝利へ向けて敵陣地中央への捨て身の突撃は、最後のラスボス「巨大列車砲・グスタフ」に阻まれる。

 わずか2騎までに減らされたとはいえ、人型大型戦闘兵器はいまだ、戦況をひっくり返すポテンシャルを持っている。

 「タガメ」の乗る巨人と唯一残った戦友の巨人。戦力は十分だ。

 「列車砲なんて骨董品はぁ!」

 叫んで飛び出す2騎の巨人。 

 巨体で巨大な破壊力の列車砲。その砲塔は自由度が皆無の設計であり、高速移動可能は巨人に対してはまったく無意味な兵器だ。先ほどのように不意打ちでもない限り絶対に当たらない。それがゆえに悔しかった。あんなものに味方を討たれるなんて。

 だからただ通り過ぎようとはしなかった。「タガメ」の戦友も一撃のもとに破壊して、最終目的地に向かうつもりだった。

 高速で迫る最中、巨大な列車砲の自動化された機械がワキワキと動く。

 巨大な砲身が傾き天を向く。巨体を支える車体が分裂し大きく開く。背面が開き伸びてくる巨大なにか。

 その動きに不安を覚えわずかに加速を鈍らせる「タガメ」。僚機に対しても警告を発するが、戦友は止まらない。

 近接して心臓部への一撃をもって巨体を大破させようとする僚機。巨大な列車砲の横っ腹に一撃を食らわせようとした時。

 列車砲から伸びた巨大なアームが巨人を掴んだ。大型兵器である巨人を完全に握る巨大な手。超巨大。

 列車砲がその身を起こす。人型だ。

 「変形しやがった…」

 超巨大人型兵器グスタフ。立ち上がったそれは、「タガメ」達の巨人の3倍もの高さがあった。

 機体のシルエットからしても巨大すぎる腕をもつグスタフは握り込んだ僚機を高くかかげ、飽きたおもちゃのように地面に投げ叩きつけた。

 それだけで四肢が四方に飛び出し、パーツが悲しいほどに飛び回り消えてしまった。


 敵軍「第三帝国」はナチス的なる物の幻影で作られている。それは旧ドイツ的な物と、戦後に作られた超ナチス的発想の混合物である。このグスタフは紛れもなく後者の産物。

 ナチス残党による南米基地、ナチスのUFO、ナチスの月面基地、ナチスの狼人間。そういった後付けの世界観から生まれた化物。


 そのナチス最後の悪夢が「タガメ」を睨みつける。ここより先は通さぬと巨大な腕を広げる。

 「通らせてもらう!」

 最後の巨人は、さらなる巨人に挑む。

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