第10話


 真正面から飛来した徹甲弾は正面の巨人の構えた二つの盾の間に命中した。

 絶対防御を気取って構えていた盾と盾の間に徹甲弾はその先端をねじり込ませた。

 巨人たちの形作る砲弾の速度と、それを阻止するために放たれた砲弾の速度は真正面から激突し、お互いの速度を重ね合い巨大な破壊力へと変化させた。

 盾の間をすり抜けた弾頭は威力をほとんど落とさず、先頭の巨人の腹部に命中し、そのスピードの破壊力に爆発の破壊力を足した。

 中心から爆ぜた巨人の体は上下二つに別れて、巨人砲弾の上と下に転がって消えていった。

 突然先頭が消え去り、驚愕するプレイヤーたち。事態を理解する前に、さらなる砲弾が前面から押し寄せた。二段目に備えていた2騎が前方に盾を掲げ、被害を抑えようとしたが遅く、前方2騎もそれぞれに手足を一本づつ失う。

 それでも2騎は盾を前方で合わせ、新たな砲弾のシェルを作り出した。

 敵の最終防衛ラインに突入したようだ。完璧に進行方向から砲撃されている。それでも押して進むしかない。先頭となった2騎の巨人は盾のみならず体も使って後衛達を砲撃から守る。被害を出そうとも前に加速し続けなければならない。後衛もそれをわかっているので半死の状態になった仲間の機体を盾に押し進む。回避不能の砲弾を浴びながら前進する巨人たち。

 2騎の仲間の機体が人の形をとどめなくなった時、ついに最終防衛線を超えた。砲撃するための戦車も野砲もない空白の領域に飛び込む。

 すでに応答のない2騎の残骸を捨て、「タガメ」と残った巨人の3騎は、軽くなった機体で最後の加速をする。

 敵領土最深部であるためか、このあたりに砲撃は届いていないようで、建物が無傷で残っている。

 何本もの線路が走る巨大な操車場のようだ。無人の操車場を線路に沿って中央へ向かう。

 線路のはるか向こうに、敵司令塔が見えた。

 その形は味方司令塔と全く同じである。ここまで来たが未だにゲームが終わっていないということはまだ味方司令部は落ちていないということだ。

 まだ勝利に間に合う。

 そう言おうと「タガメ」は隣の戦友の方を向いた瞬間。

 隣にいた戦友の巨人がまるで透明な壁に激突したかのように顔面から真っ平らになり一枚板になった瞬間に爆発し消し飛んだ。

 その爆風に弾かれて、残った2騎は地面に激突し、500メートルに渡って転がり続けた。

 VRに衝撃はない。痛みもない。しかし視界は回転し続け、僚機をショッキングな形で失った事で、「タガメ」の精神は平常を失い視界は明滅した。

 最後に残った僚機に声をかける。お互いまだ生きてるし、作戦は実行されねばならない。

 一体何が起こったのか。進行方向を確認すると、巨大な建物が現れていた。シルエットは山のようだ…

 それは山でもない、建物でもない。それは線路の上を進んでいる。線路の上を行く巨大な何か。その何かの背にある巨大な砲口がこちらを見る。

 「グスタフ・・・列車砲…」

 全長42メートルの超巨大砲列車。先ほどその一撃が、おそらくかすっただけで僚機の巨人を空中で圧殺したのだろう。

 全自動化された巨大列車砲が再装填を行い、命ある機械のように獲物を狙う。

 敵軍・第三帝国の最後の守護神、巨大列車砲が「タガメ」たちの行く道を阻んだ。

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