第7話


 開始直後の敵陣営「第三帝国」の怒涛の攻めは「電撃戦」の名に恥じないものだった。

 波のように押し寄せる戦車軍団。滑走しながらの射撃は正確で、巨人たちを一歩も前には進ませないという希薄に満ちていた。

 横殴りの雨のような砲弾を盾で防ぎながら「タガメ」は敵戦車群の動きを先読みし、一足飛びでその進行地点に飛んだ。巨大な二足歩行機にはこの自在な跳躍の強みがある。ただ一飛で敵前に着地する。獲物の過激な動きに着いてこれないティーガー戦車の砲塔がゆっくりと回転するが、遅すぎた。

 巨人は川面の魚を銛で突くように、盾に装備された打突用装備で戦車の天面から串刺しにした。列をなして走行していた戦車群の二両目三両目は、続けざまにその盾と味方車両の残骸にクラッシュして大破した。

 契機が生まれた瞬間、砲撃に固められていた味方機たちはすぐさま四散し、それぞれに敵戦車たちとの戦いに入る。

 撃つ、殴る、蹴る、刺す、爆裂させる。人の器用さを極大解釈した蛮行を機械の巨人たちが実行する。プレイヤー同士が激突するバトルフィールドが熱を帯びる。

 「タガメ」たちから一番近い位置にある味方の地区、その地面が球形に膨らみはぜた。地響きと爆音の大きさから先日のバンカーバスターであることは明らかだ。

 味方陣地に大ダメージを与えた戦闘機群がこちらに向かってくる。再装填されたミサイルをこちらにも降らせるつもりだ。敵味方が入り乱れているが、爆撃機のプレイヤーにとっては巨人機をまとめて仕留める好機に見えたのだろう。

 しかし先日と同じようには殺られない。今は頼れる僚機がいるのだ。

 軽くメッセージを送り敵機襲来を伝えると、味方機の中でもっとも丸っこい巨人が前に出る。球形の体が割れ、内部から対空砲が何本も生えてくる。

 戦車群の第二波が殺到する。対空用兵器を開放し正確さを上げるために地面に固定された僚機を守るために、2機が盾を構え防衛に回る。対空攻撃の邪魔をさせないために「タガメ」も戦車たちの前に姿をさらし、注意を引きつける。

 高速で迫る爆撃機たちに照準を合わせ、僚機のプレイヤーは引き金を引く。無数の対空砲と対空機銃から砲弾と弾丸がばらまかれる。敵機の前方に爆発と破片の壁を作るのだ。そこに飛び込んだ爆撃機が無数の破片により穴だらけになり空中分解する。避けようとした機体にも容赦なく対空砲が火を吐き、二つに分断され爆発した。空中に次々と爆発が起こる。数秒前まで爆撃機の編隊だったものが空から消えた。

 飛来する敵機を全て破壊し味方を守った。一騎で一つの要塞クラスの兵器と呼ばれる大型人型兵器の凄さを見せつけた。

 思わず歓声を上げる仲間たち。特殊兵装をそれぞれにもつ僚機の頼もしさをいまさらながらに感じる「タガメ」。歓声を上げながらも目は敵車両を捉え確実に討ち取っていた。

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