第127話 そこで指摘するですかー
カクヨム作家さんで作家業をメインにしている人は少ないと思います。大抵仕事が終わった後や昼休み、休日などを使って執筆しているでしょう。主婦の方も家事の合間に書いたり、子供の世話が一段落したところで書いているのだと思います。
つまり、全員が執筆以外の分野で『何らかのプロ』なのです。
販売のプロ、子育てのプロ、介護のプロ……いろいろありますよね。
さて、物語を書くときにみんな自分の『プロ』の分野で書くかと言えばそういうわけじゃないですよね。異世界で魔王を倒しに行く話を書いている人がプロの勇者かと言えば、普段は薬剤師やってたり、バイヤーだったり、エンジニアだったりするわけです。そもそもプロの勇者はいません。いたらごめんね。
ですが、実際に存在する仕事の話を書くと、読者の中にはその道のプロが必ずいるわけです。
例えば、如月はよく音楽モノを書きますが、決してそっちのプロではありません。単に音楽が好きなだけの人です。
例えば、如月は美術モノも書きますが、決して絵描きさんではありません。単に美術が好きなだけで、詳しくすらありません。
例えば、如月は発達障害もの書いてますが、決してプロの相談員でもお医者さんでも発達障害の当事者でもありません。
例えば、如月は大学生の話だって書きますが、決して大学のことをよく知っているわけではありません。高卒ですから。
それと同じでみんな詳しくないものやプロではない分野の話を書いてます。そして読者にはその道のプロがいます。
プロから見ると「あ、それちょっと違うわ」ってのが多かれ少なかれ出て来ます。そうなった時にどうするか。その対応で、その作家さんの人間力が見られていることが多々あります。
***
わかりやすい例を一つ。
作家Aさんが音楽モノを書いていたとします。その作品の中で主人公の作曲家が『四度の重音で順次進行』をやっていたとしましょう。これは作曲理論では基本的にNG扱いです(如月は大好きです)。
さて、これを読んでいたBさんは音大の作曲科で今ちょうど学んでいるところです。
「あれれ? 四度の重音で順次進行は良くないって昨日先生言ってたばかりだし、教科書にも書いてある」と思ったBさんは、それをAさんに教えます。
知らなかったAさんはBさんに感謝します。教えてくれてありがとう。
だけどたくさんの曲を聴いていくつも作曲しているCさんは「基本はそうだけど、意図してそのように構成する曲もある」ということを知っています。
Cさんは「Bさんは基本を教えてくれているが、実践としてAさんの手法を用いることは多々ある」と教えます。
AさんとBさんは、やはりCさんに感謝します。教えてくれてありがとう。
さて、これが実際にカクヨムで行われる会話だとどうなっちゃうか。
カクヨム内でとなると、応援コメントか近況ノートになりますよね。
結論から言うと、Bさんが応援コメントでこれを書いた時点で「あ、Bさんの作品読まんでいいわ」ってなっちゃうことがあります。
これ、Bさんは親切のつもりで教えているのですが、Aさんにとっては死活問題です。
違うと言われればそこを直さなくてはならない。でも、そこを直してしまうと、後ろが全部ひっくり返ってしまう。この作品が全部書き直しになってしまうことがあるのです。
かと言って『誰もが見ている』応援コメントでそれを指摘されてしまったとなれば、スルーするわけにはいかない。
そうなるとAさんはBさんへの返信に困ってしまうわけです。
「完結してから直します」と返信したとしても、完結後に下げなければならない。
「今すぐ直します」としたら、その後のエピソードは一旦ストップになります。
「これはこれでいいんです」と返信すれば、御意見無用と受け取られてしまう。
どう転んでもAさんは困ることにしかならないのです。
『Aさんをそういう状態に追い込んでしまうことに気付けないBさん』が書く物語は面白いのか、人の気持ちに鈍感な人が書く主人公に共感できるのか、というところにつながってしまうのです。
だから「あ、Bさんの作品読まんでいいわ」ってなっちゃうのです。
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このBさんが、例えば人目につかないところでコッソリ教えてくれていたらどうでしょう。Aさんは困りません。
例えばTwitterのダイレクトメールのようなところなら1対1なのでAさんとBさん以外の人間は誰も見ないでしょう。
もし、Aさんが「音楽モノは初めてなので、間違っているところがあったらノートで指摘してください」としていて、専用の近況ノートが準備されていたら、Bさんはそこで書けばいいですね。そうすればそれを見たCさんが「Bさんは基本を教えてくれているが、実践としてAさんの手法を用いることは多々ある」と言って入ってくることもあり、結果Bさんも勉強になったりします。
そこにDさんが「自分は合唱ですが」、さらにEさんが「オケの指揮やってます」、さらにFさんが「ヤマハの講師です」なんて入って来ると凄いことになりますね。大勉強大会です。
この場合、困る人は一人もいません。
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こんなふうに『自分が詳しいからこそ』教えたくなってしまうこともあるとは思いますが、それがどういう形での指摘になるかによって自分の首を絞めてしまうこともあるところまで考えるのは大切かなと思います。
作家は作品だけを読まれているわけではなくて、そのコメントの内容や、コメントを置く場所まで見られているので。
と、問題発言ばかりしているシロートが自分を棚に上げているようだな……。
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