第125話 会話の順序とテンポ
先輩:「あら、今日も自転車出勤? おはよう」
後輩:「ええ、ちょっと太って来たんで。おはようございます。結構きついですよ」
こういう構図の会話をよく見かけます。
もう、こういうのが出てきたらいきなり読む気が失せます。普通の会話じゃないじゃん。
構造を分解してみましょう。
先輩:A「あら、今日も自転車出勤?」B「おはよう」
後輩:A「ええ、ちょっと太って来たんで」B「おはようございます」A「結構きついですよ」
ここで、A『自転車通勤の話』、B『おはようの挨拶』、これを二人ともいっぺんに話してる。構造をシンプルにするとこうなる。
先輩:AB
後輩:ABA
という構図。
後輩が先輩の言葉に順番通りに反応した結果、こうなってしまったのです。
だけど、実際の会話でこれやりますかねぇ。後輩君、挨拶にはまず挨拶で返しますよね?
「あら、今日も自転車出勤? おはよう」
「おはようございます。ちょっと太って来たんでしばらく自転車通勤しようかと思ってます。結構きついですよ」
これなら後輩君の返しは普通の人になりますよね。
パターンはこうです。
先輩:AB
後輩:BAA
さて、では先輩はというと……あれれ、普通は挨拶が先じゃない?
という事で、先輩も直します。
「おはよう。あら、今日も自転車出勤?」
「おはようございます。ちょっと太って来たんでしばらく自転車通勤しようかと思ってます。結構きついですよ」
パターンとしてはこうなりました。
先輩:BA
後輩:BAA
はい、大人はこれで許容範囲です。許容範囲と書いたのは読んで字の如く許される範囲だからです。普通はこうでしょうね。
「おはよう」
「おはようございます」
「あら、今日も自転車出勤?」
「ちょっと太って来たんでしばらく自転車通勤しようかと思ってます。結構きついですよ」
先輩:B
後輩:B
先輩:A
後輩:AA
つまり、BにはBで、AにはAで返す、そうでないと話が混乱するんです。挨拶くらいならいいですが、二つの話題を一度に話す人はいませんから。
とはいえ、大人ならこれくらいは文字通り許容範囲です。通じるので。
***
でも小中学生だとこれでもダウトです。彼らはとにかくテンポが速い。いっぺんに全部語ろうとしません。さっきの先輩と後輩のパターンで書いてみましょう。
「おはよっ。あれ? 今日ってピアニカいるんだっけ? やっべ忘れたかも」
「おはよ! 音楽あるじゃん!」
なんてなのんびりした会話になりません。
「おはよっ」
「おはよ!」
「あれ? 今日ピアニカいるんだっけ?」
「音楽あるじゃん!」
「やっべ、忘れた!」
こういうテンポです。とにかく会話の一つ一つが短いのが子供です。凄い速さで目まぐるしく生きてます。
***
さあ、大変なのが大人と子供の会話です。
「おっ? 早朝ランニングして来たのか。おはよう」
「うん。おはようお父さん。○×公園まで行ってきた!」
これもお父さんAB、子供ABAのパターンですが、それ以前に……
ないないない(ヾノ・∀・`)ナイナイ
お父さんがこんなに喋るまで子供黙ってない。
「おっ? おは――」
「あ、お父さんおはよ! ○×公園もうチューリップ咲いてたよ! 暑っつー、お母さんお茶ちょうだーい!」
「早いなぁ」
「へへっ、今年こそスタメン欲しいからな」
こういうテンポですよねぇ……(;'∀') まあ、子供にもよるだろうけど。
その年齢に合った『会話のテンポ』ってもんがありますよね。そのキャラの特性というか性格によってもちろん左右される部分もあります。これがぜーんぶ同じだと、キャラの見分けがつかなくなりますし、年齢的にダウトになったりします。
大人びた子供を書くのにわざとゆっくりと落ち着かせたり、落ち着きのない大人を書くのにわざと子供のテンポを流用したりするのも一つのやり方だと思います。上手く使うと効果的に演出できるんじゃないかなーなんて思います。
久しぶり過ぎてシロート発言の書き方を忘れてしまったようだな……
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