……またシロート発言をしてしまったようだな。

第110話 キャラになり切る（２）

　はい、続きです。109話を読んでない方、サッパリ意味わからんと思うので、今すぐ戻って読んできてください。

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　まずお母さんと子供という関係です。

　よく「お腹を痛めて産んだ我が子」なんて言いますけどね、お腹を痛めて産んだかどうかなんて二の次ですね。

　『子育ては自分育て』なんて言葉がありますが、子供が１年２年と『人間として』成長するのと同じように、お母さんもお父さんも１年２年と『親』になって行くのです。産んだ直後に「はい、親になったー！」ってわけじゃない。これは実際子育てした方なら皆さん実感があると思います。

　109話の親子ですが、姉妹は幼い。まだ小さな子供です。このお母さんも『お母さん歴数年』のシロートですね。

　ですが、この『シロートお母さん』がシロートなりに必死にここまで育てて来たんです。

　はい、ここから母のロールプレイです。

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　生まれて１週間で私の指を握ってくれた。可愛くて死にそう。

　なかなか母乳が出なくてこの子が泣きわめくのが可哀想。お母さんも泣きたい。

　友人が粉ミルクを勧めてくれた。無理に母乳にこだわることもないみたい。

　粉ミルクにしたら便秘になっちゃった。ウンチが出なくて苦しそう。

　便秘になったらお顔にブツブツが……どうしよう。

　この子、アトピーかもしれない。何かアレルギーがあるのかしら。

　あせもになっちゃった。痒そう。どんなお薬が効くの？

　あれから１年。初めての誕生日。

　つかまり立ちも上手になって来たね。

　その分、家の中の危ないものに手を出すから要注意。

　お姉ちゃんが泣くと、妹ちゃんも泣き出す。

　ちょっと待って、お母さん一人しかいないのよ。

　公園デビュー。私、人見知りが酷いからママ友できるか心配。

　子供たちは楽しそうに遊んでるから、保育園に入れても大丈夫かしら。

　今日は二人そろって熱を出した。私は心配なのに、本人たちは遊んでる。もう！

　お姉ちゃんが癇癪起こして手が付けられない。妹ちゃんもつられて泣いてる。泣きたいのは私の方だ。

　３歳の誕生日、写真屋さんでドレスを着せてもらった。

　私に似てとても可愛い、なんちゃって。これは将来悪い虫がつかないか心配ね。

　頭はパパに似て賢くなるかしら。二人とも末は博士か大臣か。女優とか？

　保育園に通うようになった。

　最初は毎朝泣いていて私も辛かったけど、お迎えの時の嬉しそうな顔が可愛くて。

　よくお友達から風邪をうつされたり、派手に遊びまわって怪我したりしたね。

　あなたたちは女の子だから、顔だけは怪我しないでちょうだいね。

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　と、こういうロールプレイをします。実際はこの50倍くらいやります。一つ一つのエピソードも濃いですね。

　保育園の男の子に意地悪されたとか、実はその男の子はうちの子の事が好きだったからちょっかい出したんだとか、その子のお母さんが謝りに来たとか、それ以来一番仲良しのママ友になったとか。

　「経験者かよ！」って自分でツッコミ入れたくなるほど徹底的にやります。

　どっぷりお母さんになったところで、例のシーンに戻ります。

　この時、まず霊安室にいる子の気持ちになってみます。

　つっても死んでます。死んでるけど、死体の気持ちになります。

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　怖いよ。お母さん、どこなの？

　薄暗いし、一人ぼっち。誰もいない。ねえ、お母さん、どこにいるの？

　痛いよ、顔も、手も、足も、お腹も、背中も、全部全部痛いよ。

　お母さん、助けて、早く来て、ぎゅってして！

　寂しいよ、悲しいよ、痛いよ、苦しいよ！

　怖いよ怖いよ怖いよ！！！

　お母さんお母さんお母さんお母さんお母さん！

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　薄暗い霊安室で、たった一人で、誰も来なくて、寒くて、痛くて、寂しくて、悲しくて、この気持ちを全部いっぺんに癒してくれるのはお母さんのハグだけなのに。

　ただお母さんにギュってして貰うだけでホッとできるのに。

　それなのに、お母さんは来ない。

　この子供の気持ちを汲み取れるのは、お母さんだけなんです。お母さんだけなんですよ！　他の人じゃここまで汲み取れないんです。

　子供の気持ちに寄り添った時、お母さんはなりふり構わず、霊安室だろうがICUだろうが、子供のそばに行って抱きしめてやりたいと思うのではないですか？

　だって、母乳出なくて毎日泣いたんですよ。人見知りなのに、この子のために公園デビューしてママ友作ったんですよ。お裁縫苦手なのに必死に絵本バッグ縫ったんですよ。忙しい旦那の分もワンオペ育児で必死に頑張ったんですよ！

　だけど、このお母さんは部屋に入らなかった。入らないのはいろいろあるでしょう。彼女には霊安室に入れない重大な理由があったのです。

　その入らない理由が『怖かったから』！

　どういうこと？

　(　ﾟдﾟ)ﾎﾟｶｰﾝ

　そしてそのまま、もう一人の重傷ながら生き延びた子の見舞いにすら一度も行かずに引きこもっていた！

　どういうこと？

　(　ﾟдﾟ)ﾎﾟｶｰﾝ

　意識が無くてもお母さんの声かけで回復するかもしれないのに、なんで行かないの？

　もっと言えば、このお母さん、亡くなった子の葬式すらボイコットしてる。

　このお母さんは、『子供の気持ち』よりも『自分の気持ち』を優先したの？

　(　ﾟдﾟ)ﾎﾟｶｰﾝ

＊＊＊

　そこで如月は考えました。もしかしてこの人、後妻さんなのかも。二人はお父さんと前妻さんの間にできた子で、再婚した今のお母さんの子ではない。だから自分を優先できるに違いない。それを知っているから、旦那さんも無理にお母さんを子供の病室に行かせず、葬式もボイコットさせておいた……うーん、それも非常識だけど。

　あれ？　だとすると、この人が『壊れる』というのがわからない。『悲しみのあまり壊れたお母さん』を表現したって言ってたよね？　壊れるほどに子供を愛しているなら、子供の望むことをするだろうし。あれれ？

　と、こんなふうにロールプレイ不足があるといろいろ辻褄が合わなくなってくる。結果として読者が悩むことになるのです。

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　読者がどういう話を「続き早よ！」と思うのか。

・共感しまくり「わかるー！」

・意表を突く驚きの展開「マジか！」

・早く謎を解決したい「なんでー？」

　他にもあると思うんですが、まず登場人物に全く共感できるポイントが無い小説は早々にブラバされちゃうような気がします。

　でも逆にこれいちばん簡単です。ちゃんとロールプレイさえしていれば共感は得られるので、すぐにブラバされちゃうという方はまずここから試してみてはいかがでしょうか！

　……今日は絶賛クロート発言をしてしまったようだな☆ｷﾗｯ

※ご本人の許可を得て書いています。オススメの方法があればコメントへ！