第111話 説明し過ぎ
突然ですが皆さん、説明し過ぎって気になりませんか?
最近のラノベが無駄に親切すぎて、読者に深く考えさせないんですよね。
って書くと語弊があるか。読者が脳内で想像する手間を省いちゃうとでも言いますか。
「○○はこう思った。何故ならあーでこーでそうだからだ。」みたいなやつ。
これ、「何故なら」から先は前後の文章から自動的にわかるように書いてると楽しいんですけども、ラノベの場合は前後の文章から十分に読み取れているのに、敢えて「何故なら」と書いちゃってるんですね。
だからしつこい。くどい。うるさい。
でもまあ、現在出版されているものにもそういうのが多いので需要としてあるにはあるわけですね。
とはいえ、如月はそういうのが嫌いです。スマートなのが好きなんです。
(例)芳美は穏やかで悲しそうに笑いながら、顔を彼に向けた。
(改)芳美は悲しげに微笑んだ。
(例)芳美は怒り狂って大声でわめいたり泣き叫んだりしながら街に繰り出し、その辺の店や民家や小屋などをめくらめっぽう壊して回った。
(改)芳美は怒りに我を忘れ、手あたり次第に街を破壊していった。
あーでこーで、と情報過多なんですね。あれも表現したい、これも伝えたい、どんどん並べてしまうから、却って伝えたいところがブレてしまうんですね。
細かいことは他の文章やセリフの中に分散させて書けばいいわけで、一遍にあれもこれも伝えようとすると読者には何が何だか分からなくなる。
他には『伝えたいことがたくさんあるけど、全部同列なので一番伝えたいことがわからない』というケース。
「好きなケーキ作ってあげるから教えて」
「えっと好きなケーキはね、モンブランとイチゴのショートとレアチーズとオペラとティラミスと紅茶のシフォンとフルーツムースとタルトタタンと――」
「結局どれを作って欲しいんだよ」
「え? レアチーズ」
確かに途中でレアチーズって言ってるんです。でも他にたくさん言い過ぎて、どれが作って欲しいのかがわからない。これと同じ現象ですね。
「結局誰が好きなのよ」
「美菜と友梨佳と早苗と芳美と萌香と佳奈美と――」
「あたしだけじゃないの? 隆生のバカ! 大嫌い!」
「待て待て、芳美が一番好きだよ! 誰が好きかって聞かれたから好きな人を全員――」
こういうことになりかねませんね。
どちらの例も(?)決して間違ってはいないのです、余計な情報が多いのです。
上手な人はここで全部語ってもきっちり伝えられるんですよね。
「結局誰が好きなのよ」
「そんなの芳美に決まってんじゃん。もちろん美菜と友梨佳と早苗と萌香と佳奈美も好きだけど、芳美の足元にも及ばないからね。何度でも言うよ、芳美、愛してる」
「やだ、隆生ってば正直すぎる♡」
小説でもなんでもそうですが、伝えることに自信が持てないという人は『一つに絞って』全力で伝えましょう。その方が絶対伝わります!
……また隆生にボコボコにされそうなシロート発言をしてしまったようだな。
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