第109話 キャラになり切る(1)
最近、他人様の作品を読んでいて気になることがあるんですよ。
「フツー、親だったらよほどの毒親でない限りそれは言わねえだろ?」とか、「心底尊敬してる相手になんでそういう軽率な事を言うの?」とか……
そのキャラ設定に合っていない行動をとるキャラがいるんです。
例えばメチャメチャ尊敬している相手が最近やる気をなくして自堕落な生活をしている、それを見た主人公が「昔の尊敬していたころのあなたに戻って欲しい」という気持ちを込めて煽るような発言をする、というならわかります。
そうじゃなくてフツーに精力的に活動していて、現在も主人公が全力で尊敬している、冗談を言える間柄でもない、なのに超絶煽ってくる。
訳わかんねー。
上記は一例でしかないのですが、そうなってしまう原因として『ロールプレイ不足』が挙げられるんじゃないかなと思うのです。
私は創作仲間に相談されるとき、まずは「ロールプレイしてみろ」ということをしつこく言います。自分が俳優になって、そのキャラの役を演じるつもりでやるんです。そのキャラの生まれてからこれまでの環境とか、現在の背景とか、別のキャラたちとの関係をベースにして、その性格から行動が決まって来る。
そうすることによって、行動やセリフの矛盾点が見えてくるんですね。
***
ごく最近読んだ作品の中で、二人の幼い姉妹が事故に遭うというシーンを書いている方がいらっしゃいました。
一人は亡くなり、もう一人はICUにいるのかな、そこに連絡を受けたお母さんが駆け付けるというシーンです。
家の近所で遊んでいるはずの姉妹の帰宅時刻が決まっている、ところがなかなか帰って来ない、おかしいな? ここまではOKです。
いくらなんでも遅いぞ、とお母さんが心配になってくる頃に救急車の音が近所で止まる。
ここで読者はもう何があったのかわかりますね。
ところがお母さんはその後ジャンジャンかかってくる電話にも出ない(不在着信30件)、メールも着信に気付いているのに見ない(50件)、家の呼び鈴を何度鳴らされても出ない。
『何かがあったことを信じたくないから見ないし聞かない』ということらしいのです。
この描写にまるまる1話使ってましたね、これはいくらなんでも長すぎるし、お母さんそこまで頑なにならなくても、自分の子供に何かあったかもしれないのなら連絡来る前に迎えに行くでしょう。すぐ近所なんだから。
それに、救急車が来て現場が混乱しているならなおの事、子供たちを迎えに行くんじゃないかなぁと考えたわけなんです。
普通のお母さんならね……。
でもまぁ、百歩譲って『信じたくないから見ない聞かないお母さん』ということで続きを読みます。そうでないと進めないんでね。
さて、次の話では病院のシーンです。
このお母さん、なんと病室に入らない! 霊安室にも入らない!
理由は「我が子の顔に傷がついているのが見たくない」「霊安室というところにいるであろう我が子を信じたくない」「それを見るのが怖い」という理由。
えええええええええ?
この後このお母さんは、霊安室にも入らず、もう一人のいるICUにも顔を出さず、家に帰って引きこもっちゃうんですよ。我が子の葬式にすら出ない。
それをこの作者さんは「お母さんは壊れてしまいました」と仰ってました。
恐らく、この作者さんはこのお母さんみたいな人なんだろうなと考えました。だからこのお母さんのキャラに寄り添って、『悲しみのあまり壊れたお母さん』を表現したかったんだなと。
でも待って。
それ、ロールプレイ不足じゃね?
あんたそのお母さんの役を引き受けた役者さんになったつもりでそこ動いてみたかい? 絶対やってねえ。絶対にやってねえよ!
さてここでシロート発言を読んでくださっている読者さんだけに特別企画、如月流ロールプレイの仕方を伝授しようと思います。
(いや、全然フツーです。ごめん、ちょっと特別企画って言ってみたかっただけ。多分みんなやってます)
でもやったことがないという人もいらっしゃると思うので、そのときの掘り下げ方とかキャラのなりきり方をお伝えしようと思います。
長くなっちゃったから、次の話でね!
……またシロート発言をしてしまったけれど続く!
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