第104話 呪われし対決作家

 2019年。まあ、去年なんですが、立て続けに『果たし状』をいただきました。

 てーかさ。『果たし状』だよ? 「俺と戦え!」っていう挑戦状だよ?

 「体育館の裏に呼び出されるのかな」とか(昭和感満載)、「タイマン勝負だったらまだいいけど、大勢に取り囲まれてリンチとか勘弁して」とか(そしてコンクリ詰めで東京湾へGO!)、ろくでもない事を考えるわけですよ。

 平和主義者の如月は絶対ケンカしませんから、戦ったら弱いんです。確実に負けます。果たし状とか怖いです。


 話を元に戻します。

 果たし状は「小説で対決しよう」というものでした(怪我はしなくて済みそうだ)。

 ところがその条件が『ラブコメで対決』なのです。私にラブコメで勝負を挑むとは! フッ、なめられたもんだぜ!


 ――え? ラブコメ作家がラブコメで負けたら


 そりゃもう死に物狂いです。私が負けたらお相手は「ラブコメ作家にラブコメで勝った!」と言えるわけで、私の方は「もうお前ラブコメ作家名乗れねーよ」です。

 逆に私が勝ったとしても「ラブコメ屋なんだから勝って当然だろ?」と言われるわけで……


 ちょっと待って、これって如月にはリスクしかなくね? って気づいたのは、書き始めてずいぶん経ってからでした。遅せーよ。


 結論言っちゃうと、『楽しかった』です。

 この時はお相手がアバウトなプロットと設定を作って、それに沿うように書くというお題でした。設定に「主人公が発達障害」という要素があったのも良かったのかもしれません、私自身が書きたいと思うものだったのでノリノリで書きました。そうしてできたのが『群青のアトリエ』でした。


***


 さて、その作品を公開し、最終話までアップして『完結』としたわけですが。それを読んだ読者さんが「自分も対決したい!」と名乗りを上げてくれました。やりましょうということで、その方が出した条件は『恋愛もの』という縛り。


 ――恋愛もの、得意なんだけど……。フッ、なめられたもんだぜ?

 なんだろう、この既視感。


 


 突如、凄まじいプレッシャーが襲ってきました。実はみんな裏で繋がってて、如月を殺しに来てる? 黒幕誰なの?

 絶対に負けられないと思えば思うほど、何を考えてもつまらなく感じてしまいます。『力みすぎ』という状態です。


 プロットも「作っては捨て、作っては捨て」、「書いては消し、書いては消し」。群がる敵を「ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」とか、美味しいパンを「ちぎっては食べ、ちぎっては食べ」なら幸せなんだけど、そんな余裕全然ない。

 何か常軌を逸した主人公にしなければ、と思って無理やりひねり出したのが幽霊。今こそ『じれじれ作家』の本領を発揮する時だ!


 ところが毎日のTwitterでの進捗を見ると、お相手はめちゃめちゃ進んでる。私はその半分も書いてない。ヤバい! なんとか締め切りには間に合わせたものの、お相手の余裕に血を吐いて倒れそうでした。


 そうしてできたのが『うさぎとおばけのマグカップ』だったのですが……。

 な、なんとお相手が途中棄権してしまったのです。なんでも、途中まで行って自分で納得がいかなくなったらしいのです。

 うん、そういう理由なら仕方ないよね。わかった。


***


 実はその『うさぎとおばけのマグカップ』を書いている最中に、もう一人の方から『果たし状』いただきました。


 おーい、私は対決作家じゃねーぞ(笑)


 その方は『社会問題』がテーマ。よし、社会問題なら受けて立つ!

 ……とは言ったものの、やはりプレッシャーに負けそうでなんにも浮かばない。浮かんでも辻褄が合わなくなったり、設定に無理があったり。


 ここで気づきました。如月、企画もの書けない人かも。もしもちゃんと作家になったとしても、編集部から「こんなものを書いてください」と言われて書けないじゃん。

 このままずっとシロート作家としてカクヨムに君臨し続けるしか如月に残された道はないのだ(君臨すらしてないけど)。


 因みにこの社会問題対決、「なーんも浮かばねえ」と言いつつ無理やりひねり出して、三万くらい書いて全部捨てて、ってのを三回くらい繰り返して唸っているうちに、お相手が忙しくなったらしくて企画自体が流れてしまいました。実はめちゃくちゃホッとしました。


***


 そうこうしているうちに、最初の対決相手さんがアカウントを消しちゃったのです!(現在は復活されております)


 ちょっと待ってー! 対決作品は? おーい!

 はい、なくなりました。手元で保存すらしていなかったようです。



 ここで気づきませんか?

 最初の対決作はアカウント抹消と共に消えてなくなりました。

 二番目の対決作は、ご本人が途中棄権したことによりなくなりました。

 三番目の対決作は、書きあがる前に企画が流れてしまいました。


 


 みんな、やめた方がいいぞ。如月と対決すると、作品が呪われるぞ。

 っつーのに、一番最初の対決相手さんがアカウント復活してすぐに再び対決を申し込んできました。マジかよ。知らねーぞ。

 というわけで、これ以上犠牲者が出ないうちに対決はこれを最後に打ち止めにしようと思います。それでも対決しようという方は、呪われることを覚悟してお申し込みください。



 ……またシロートが呪ってしまったようだな……って、呪ってねーし!




※追記

 これをアップして数日後、「対決を白紙に戻してくれ」と言われて一旦白紙になりました。が!

 またその後で「やっぱり続行してくれ」と言われ、続行することに。が!

 現在一カ月も経っていないのに、またもや白紙に戻せと言われてしまいました。

 

 めんどくせーよ!

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