第67話 執筆が進まねー

 いえね、進まない理由はわかってるんですよ。ええ、わかってるんです。


 如月は音楽モノ書くの大好きです。そりゃもう、音楽モノ書いてる時は最高に幸せです。天才モノ書いてる時も幸せなので、音楽+天才属性で書いてる時は幸せ過ぎて、ずっと書いていたいと思ったりします。

 そのせいか、そんなのばっかりになっちゃってますね。いかんいかん。


『空が茜色に染まるころ』はジャズプレイヤー(高校1年生)、

『nose kiss』はギタリストとベーシストとドラマー(高校2年生)、

『GIFT』では作曲・編曲・指揮(中学1年生)、

『よんよんまる』はピアニスト(26歳)、

 ベクトルは少しずつ異なりますが、いずれも天才が出てきます。


 で、困っちゃうのが、音楽モノは執筆が進まない事なんです。


***


 お話書くときって、下調べ結構するじゃないですか。ググったり、その場所へ行ってみたり、人から話を聞いたり、地図と延々にらめっこしたり。


 音楽モノを扱う時は、その曲を徹底的に聴いて聴いて聴きまくるんです。もうそれだけでめっちゃ時間とられる。

 聴くだけでも時間とられるんだけどね、如月はリアリティが欲しくて、自分でやっちゃうんですよね。勿論天才じゃないんで、「これができたらいいなぁ」を盛り込むわけですが。


 『GIFT』なんか作曲のくだりが出てくるんですね、で、書くわけだ。曲を。

 当然全部なんか書けません(それができたら作曲家になっている)から、冒頭はピッコロでスタート、フルートに手渡して弦楽器が入って来る、テキトーなところで盛り上げたら曲の雰囲気をガラッと変えて中間部、舞曲展開にしよう、打楽器はトライアングルとタンバリンだ、なんてね。ああ楽しい。

 アバウトに曲の枠組みを作ったら、あとは一気に書き込む。

 作内では管弦楽曲を吹奏楽にアレンジしたという設定になってますから、設計段階でも管弦楽で書いてから吹奏楽に編曲し直します。この辺が如月の如月たる所以でして、「そんなの読んだってわかんねーよ」な部分であっても自己満足のためにそれをやります。変態とは自己満足に忠実な生き物なのです!



 さて、もっと恐ろしいのが『よんよんまる』でして。なんでこんな設定にしちまったんだ……プロのピアニストって、書くの無理じゃね?

 やっぱり聴くところからスタートです。曲選びにも時間がかかります。マニアックすぎると誰も知らない。かと言ってみんなが知ってるような曲ばかりではプロっぽくない。ビミョーなラインを狙って選曲します。


 曲が決まったら延々と聴く。それはもう(ここ大切)ひたすら聴く。ここはと思った箇所をチェックしておいて、


 弾けるかー!


 そう、私が書いているのはプロのピアニスト。「お風呂が沸きました」でおなじみオースティンの『人形の夢と目覚め』みたいなのを弾いてるんじゃないんです。

 しかもね、ラフマニノフなんてね、アホみたいに手がデカいんですよ。成人男性ならC(ド)から1オクターヴ上のD(レ)までの約九度が限界です。手がデカいことで有名なリストはE(ミ)まで余裕で届きます。ラフマニノフに至ってはG(ソ)まで余裕で届くんだよ? そんなヤツが作曲したようなのを、ド素人の如月が弾けるわけないじゃん!

 ってことで選曲、譜面合わせ、実際の練習を経て、やっと執筆。そこまでやって、書くのは十数行。進む訳が無いよね。

 でもね、ほら、変態は欲望に正直だから。自己満足に忠実だから。いいのよ。



 ……またシロートが変態発言をしてしまったようだな。否定はしないぜ。

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